論文紹介:Electroacupuncture Relieves Visceral Hypersensitivity by Inactivating Protease-Activated Receptor 2 in a Rat Model of Postinfectious Irritable Bowel Syndrome 「感染後過敏性腸症候群ラットモデルにおいてプロテアーゼ活性化受容体2を不活性化することで内臓過敏症を緩和する電気鍼療法」

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引用論文

Xu, W., Yuan, M., Wu, X., Geng, H., Chen, L., Zhou, J., Song, Y., Pei, L., & Sun, J. (2018). Electroacupuncture Relieves Visceral Hypersensitivity by Inactivating Protease-Activated Receptor 2 in a Rat Model of Postinfectious Irritable Bowel Syndrome. Evidence-Based Complementary and Alternative Medicine, 2018, 7048584. https://doi.org/10.1155/2018/7048584

Electroacupuncture Relieves Visceral Hypersensitivity by Inactivating Protease-Activated Receptor 2 in a Rat Model of Postinfectious Irritable Bowel Syndrome
「感染後過敏性腸症候群ラットモデルにおいてプロテアーゼ活性化受容体2を不活性化することで内臓過敏症を緩和する電気鍼療法」

研究背景

過敏性腸症候群(IBS)は、腹痛や排便習慣の変化を主症状とし、世界的に約5~10%の有病率を示します。その中でも、食中毒や細菌性・ウイルス性腸炎などの急性感染後に発症する「感染後過敏性腸症候群(PI-IBS)」は、急性感染者の約3~36%が経験するとされ、慢性的な腹痛や下痢・便秘の再発を来たすことで日常生活の質を著しく低下させます。PI-IBSの主要病態メカニズムとして注目されるのが「内臓過敏症(visceral hypersensitivity; VH)」であり、大腸への機械的刺激に対して閾値が低下し、小さな刺激でも激しい不快感や痛みが生じる状態です。近年、VHにおける免疫‐神経相互作用として、腸粘膜マスト細胞由来のトリプターゼ(TPSP; tryptase)がプロテアーゼ活性化受容体 2(PAR2)を活性化し、その下流で神経ペプチドであるサブスタンスP(SP)やカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)が放出され、痛覚シグナルが増幅されることが示唆されています。一方、電気鍼(electroacupuncture; EA)は臨床・実験的にIBS症状やVHを緩和する効果が報告されていますが、特にPAR2経路への直接的な影響やその分子機序は明らかでない点が多く残されています。本研究では、PI-IBSラットモデルにおいてEAがVHを緩和する際にPAR2およびTPSP/SP/CGRPシグナル軸をどのように調節するかを解析し、その分子メカニズムの解明を目指しました 。

目的

本研究の主目的は、PI-IBSラットモデルにEAを適用した際の以下の検討です:

  1. VHの機能的指標である腹部引き込み反射反応(AWR)閾値に対するEAの効果

  2. 腸組織におけるPAR2/TPSP/SP/CGRPの発現変動

  3. PAR2アゴニスト(PAR2-AP)投与によるEA効果の変化から見た、EAの作用部位の特定

実験モデルおよび群分け

雄性Sprague-Dawleyラット(体重180–220 g, 12–14週齢, n=36)を以下の5群に無作為に分割しました:

  • C群(コントロール, n=9)…生理食塩水投与, 虚処理

  • M群(モデル, n=9)…TNBS投与によるPI-IBSモデル

  • M+EA群(n=6)…M群にEA施術

  • M+AP群(n=6)…M群にPAR2-AP投与

  • M+EA+AP群(n=6)…M群にPAR2-AP投与+EA施術 。

PI-IBSモデルの作製

ラットを24時間絶食後、TNBS(塩化トリニトロベンゼンスルホン酸)5 mgを50%エタノール0.8 mLに懸濁し、直腸孔から8 cm挿入して投与。1分間仰臥位保持後に回復させ、投与4週間後にAWR試験で痛覚閾値<30 mmHgを示した個体をPI-IBSモデルと定義しました 。

EA施術条件

  • 刺鍼部位:ST25(天枢)およびST37(上巨虚)左右各1穴

  • 鍼:ステンレス製、径0.3 mm、刺入深さ3 mm

  • 通電条件:密疎波形(2 Hz/15 Hz交互), 3 秒/交互, 1 mA程度

  • 施術時間:15 分/日, 週5日×2週

  • 使用機器:Han EA装置(LH402A) 。

腹部引き込み反射(AWR)試験

直腸に長さ6 cmのラテックスバルーンを挿入し、0.01 mLステップで空気を注入しながら、①腹壁挙上②体のアーチングを誘発する最小充填圧を痛覚閾値として測定。各群3回反復測定後、5分間のインターバルで回復を確認しました 。

PAR2アゴニスト投与

PAR2-AP(SLIGRL-NH₂, 100 µL/rat, 溶媒:10%EtOH/10%Tween 80/80%生理食塩水)をモデル確立4週後から3日おきに4回、同部位に投与し、PAR2依存性を検証。対照群には生理食塩水を同量投与しました 。

組織採取および分子解析

EA終了後、ウレタン麻酔下で犠牲にし、肛門上約12 cm位置の結腸組織を摘出。以下の解析を実施しました:

  • 免疫蛍光染色:抗-PAR2(Abcam ab180953)、抗-TPSP(Abcam ab2308)、抗-SP(Invitrogen)、抗-CGRP(Abcam ab47027)を1:500希釈、FITC標識二次抗体で可視化

  • Western blot:PVDF膜転写後、一次抗体は免疫蛍光と同一、GAPDHで正規化

  • RT-PCR:SYBR Green法でPAR2, TPSP, SP, CGRP mRNA量を定量

主要結果

  1. AWR閾値の改善

    • M群に比べ、M+EA群は①腹壁挙上閾値が0.578±0.115→0.900±0.201 mL(P<0.01)、②体アーチング閾値が0.748±0.118→1.100±0.316 mL(P<0.01)に有意上昇。

    • M+AP+EA群ではAP単独投与の抑制を多少打ち消す傾向を示すも、統計的有意差は認めず(P>0.05) 。

  2. PAR2およびTPSP/SP/CGRP発現の抑制

    • M群で上昇したPAR2タンパク・mRNAはM+EA群で顕著に低下。TPSP, SP, CGRPも同様にEA施術群で発現抑制。

    • PAR2-AP共投与群ではEA効果がやや減弱したが、M群に比べ全体として抑制傾向を維持 。

考察

本研究により、EAは腸管局所のマスト細胞由来TPSPによるPAR2活性化を阻害し、その下流シグナルであるSPおよびCGRP放出を抑制することでVHを緩和することが示されました。EAによる電気刺激は、腸管神経叢における免疫‐神経相互作用を調節し、過敏性疼痛シグナルの増幅を遮断すると考えられます。また、PAR2-AP投与によるEA効果の一部打ち消しは、PAR2がEA鎮痛作用の主要な分子標的であることを裏付けます。これらの知見は、PI-IBS患者に対するEA臨床応用の分子基盤を提供するとともに、PAR2経路を治療標的とした新たな鍼治療戦略の開発を示唆します。

結論

ST25(天枢)およびST37(上巨虚)へのEAは、TPSP/PAR2/SP/CGRPシグナル軸を不活性化し、PI-IBSラットの内臓過敏症を有意に緩和する。特にPAR2はEA鎮痛機序のクリティカルコントローラーである。

使用経穴

  • ST25(天枢)

  • ST37(上巨虚)

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ここでは、Ankiのシステムを使った「経穴リスニング暗記帳」が何故、学習効率が高いのかについて説明いたします。

– Ankiによる自動復習機能(分散学習)

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忘れる前に、Ankiが思い出させてくれる。

Ankiは、記憶の心理学的メカニズム――特にエビングハウスの忘却曲線の研究に基づき、「最適な復習タイミング」を自動で提示するシステムを備えています。

これにより、学習内容を忘れかけた絶妙なタイミングで再提示し、記憶を強化。最終的には長期記憶として定着させることが可能です。

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このような間隔反復(Spaced Repetition)の仕組みは、短期記憶のまま消えていくのを防ぎ、効率的で持続性のある学習を実現します。

🔺 最適な復習タイミングが、記憶の定着を飛躍的に高める。

– 能動的想起(テスト効果)による記憶の強化

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能動的想起(アクティブリコール)による記憶の強化

ただ教科書を読むだけの「受動的学習」では、情報はなかなか定着しません。
一方で、学んだ内容を自分の頭で思い出そうとする「能動的学習」では、記憶の定着率が格段に向上することが、数多くの心理学的研究で示されています。

この「思い出そうとする行為」そのものが脳内の記憶経路を再活性化し、情報へのアクセスを強化します。その結果、より強固で思い出しやすい記憶が形成されるのです。

左側:受動的学習(教科書を読むだけ) → 記憶の定着は限定的
右側:能動的学習(思い出そうとする) → 記憶の定着が飛躍的にアップ

🔴 記憶は「入力」ではなく「出力」によって強化される。

Ankiなどのテスト形式の学習ツールは、まさにこの能動的想起(Active Recall)の原理を活かした方法であり、記憶の強化に極めて効果的です。

– 複数の感覚を使うと、記憶はもっと強くなる

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マルチモーダル学習による記憶定着の向上

記憶をより深く、強く定着させるには、視覚だけに頼るのではなく、複数の感覚を同時に使う「マルチモーダル学習」が効果的です。

  • 👁 視覚情報:文字・図を見て学ぶ

  • 👂 聴覚情報:音声を聞いて学ぶ

  • 触覚情報:実際に身体に触れ、感覚を伴って学ぶ

これらの異なる感覚情報が脳内で統合されることで、記憶のネットワークが多層的に構築され、忘れにくくなるのです。

特に経穴の学習においては、
「見る」+「聴く」+「触れる」という三感覚の連携が極めて有効。

🔷 マルチモーダル学習で、記憶が深く刻まれる。
→ 経穴の学習には「見る」「聴く」「触れる」が鍵。

– 二重符号化理論 – 記憶のバックアップを作る

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二重符号化理論(Dual-Coding Theory)
― 記憶のバックアップを作る学び方 ―

学習した情報を視覚(文字·図)と聴覚(音声)の2つの経路で同時に取り入れることで、記憶の定着が強化されるという理論が「二重符号化理論(Dual-Coding Theory)」です。

👁 視覚情報(文字・図)
👂 聴覚情報(音声)

これらは脳内で別々のチャンネルとして処理·保存されるため、どちらか一方の記憶が弱まっても、もう一方から補完され、思い出しやすくなるという利点があります。

たとえば、音を忘れても文字を見れば思い出せる。
または、文字を忘れても音を聞けば思い出せる。

📌 文字と音声の両方で学ぶことで、記憶が二重に保存される。
つまり、記憶にバックアップが作られるような状態が生まれ、忘れにくくなるのです。

– 声に出して覚えると、記憶はもっと深く残る

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― 生成効果(Production Effect)とは ―

単に「読む」「聞く」といった受動的な学習に比べて、自分の声で情報を発する=生成する(能動的学習)ことで、記憶の定着率は大幅に向上します。

この現象は、生成効果(Production Effect)と呼ばれ、心理学的にも広く研究されています。

📖👂 読む·聞く(受動的)
→ 情報は一方的に入力されるが、記憶への定着は弱い。
🗣🧠 声に出す(能動的)
→ 自らの言葉で発することで、脳内の記憶回路が活性化。
→ 記憶の痕跡が強く、深く刻まれる。

このように、音読やシャドーイングのような声に出す学習は、
単なる受け身の学習を超えて、脳に「刻み込む」記憶法へと変わります。

🔷 声に出す(=情報を生成する)ことが、記憶を深く定着させる鍵。

– 声に出すことは、優れた運動感覚学習となる
〜 シャドーイングは脳と身体をフルに使う記憶術 〜

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シャドーイングとは、聞いた音声をすぐに繰り返して発音する学習法です。

この方法には、単なる「耳で聞く学習」を超えた、運動感覚学習(Kinesthetic Learning)の効果があります。

なぜ記憶が深くなるのか?

  1. 発声(motor)
    → 口や喉などの運動器官を使い、声に出して情報を「体で再現」。

  2. 聴覚モニタリング(sensory)
    → 自分の発した声が耳から入り、自分の聴覚を再び刺激。

  3. 脳内でのフィードバック修正
    → 発声→聴取→修正のサイクルが脳内で繰り返されることで、運動感覚と知覚の統合が起こり、記憶がより強固になります。

  4. 体性感覚の追加モダリティ
    → 経穴名などの抽象的な情報が、「自分の声を出した感覚」と結びつき、身体に刻まれる。

•  目で見て、耳で聴いて、口で言う
• 「口が覚えている」=身体で覚えている

🔷 シャドーイングは、脳と身体を統合して使う、最強の記憶術。
抽象知識を身体的な感覚とつなげることで、記憶は格段に深まります。

Ankiを最大限に活かす鍵は、カードの“質”にある
― 効果的な学習のためには、高品質なカードが必要 ―

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Ankiは非常に優れた学習ツールですが、本当に効果を発揮するには「カードの質」が重要です。

しかし、多くの人にとって
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