論文紹介:Lumbar temperature change after acupuncture or moxibustion at Weizhong (BL40) or Chize (LU5) in healthy adults: A randomized controlled trial 「健常成人における委中(BL40)または尺沢(LU5)への鍼治療および灸治療後の腰部温度変化:ランダム化比較試験」

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引用論文

Zheng, S.-Y., Wang, X.-Y., Lin, L.-N., Liu, S., Huang, X.-X., Liu, Y.-Y., Yu, X.-S., Pan, W., Fang, J.-Q., & Liang, Y. (2025). Lumbar temperature change after acupuncture or moxibustion at Weizhong (BL40) or Chize (LU5) in healthy adults: A randomized controlled trial. Journal of Integrative Medicine, 23(2), 145–151. https://doi.org/10.1016/j.joim.2025.01.004 

Lumbar temperature change after acupuncture or moxibustion at Weizhong (BL40) or Chize (LU5) in healthy adults: A randomized controlled trial
「健常成人における委中(BL40)または尺沢(LU5)への鍼治療および灸治療後の腰部温度変化:ランダム化比較試験」

研究背景

腰痛をはじめとする腰部諸症状は現代社会で非常に高頻度にみられ、QOL(生活の質)低下の大きな要因となっています。鍼灸療法は東洋医学の重要な柱として、痛み緩和のみならず局所の微小循環改善を通じた温熱効果も期待されています。しかし、同じ治療法であっても、選択する経穴や鍼か灸かといった刺激様式の違いにより、局所温度変化や血流改善の度合いがどのように異なるかについては十分に検討されていませんでした。本研究は、腰部の代表的経穴である委中(BL40)および尺沢(LU5)を対象に、鍼治療と灸治療それぞれが腰部温度変化に及ぼす影響を比較することで、経穴選択と治療法の特異的効果を明らかにすることを目的としています。 

研究目的

本研究の主目的は、健常成人において委中(BL40)への鍼治療(Acu-BL40)が尺沢(LU5)への鍼治療(Acu-LU5)および両経穴への灸治療(Mox-BL40、Mox-LU5)と比較して、腰部表面温度に及ぼす影響が異なるかを検証することです。また、30分間の治療セッションにおける経時的な温度変化と督脈・膀胱経の領域温度変化も副次的に評価しました。 

研究デザイン・方法

本研究はランダム化比較試験(RCT)として設計され、140名の健常成人ボランティアを対象に実施されました。被験者は性別・年齢を層別化した上で、以下の4群に1:1:1:1の比率で無作為に割り付けられました。

  • Acu-BL40群:委中(BL40)への鍼治療

  • Acu-LU5群:尺沢(LU5)への鍼治療

  • Mox-BL40群:委中(BL40)への灸治療

  • Mox-LU5群:尺沢(LU5)への灸治療

各群ともに治療部位の消毒後、鍼は長さ25 mm、太さ0.25 mmの使い捨てステンレス鍼を用い、深さ約10–15 mmまで刺入した後に手技による補瀉操作を行いました。灸治療は市販の直接灸を用い、1壮当たり約3 分間の停灸を4壮、合計約12 分間施灸しました。各治療は30 分間とし、施術中の刺激強度や被験者の体位は一定に保ちました。治療前、施術中(5分毎)、および施術後直後に、赤外線サーモグラフィー(サーモグラフィモデルX)を用いて腰部表面温度を計測し、平均温度および督脈・膀胱経の走行上の温度を算出しました。 

評価項目

  • 主要評価項目:治療開始前と30分施術後の観察領域(約10 cm×10 cm)の平均表面温度差(ΔT)。

  • 副次評価項目

    1. 5分毎の温度推移(0–30 分)

    2. 観察領域内の督脈領域および膀胱経領域の平均温度差

温度データは正規分布を仮定し、2要因分散分析(治療法×経穴)を行い、主要評価項目において有意水準5%で検討しました。 

結果

解析の結果、治療法(鍼 vs. 灸)および経穴(BL40 vs. LU5)の交互作用が主要評価項目において有意であることが示されました(P < 0.001)。特にAcu-BL40群は、Acu-LU5群およびMox-BL40群と比較して30 分後の平均温度上昇がそれぞれ0.29 °C(95 % CI: 0.17–0.41)および0.24 °C(95 % CI: 0.08–0.41)と有意に高く、BL40への鍼治療が他の条件よりも著しい温熱効果を示しました。また、5分毎の時系列解析では、Acu-BL40群は開始10分以降で急速な温度上昇を呈し、20–30分間にかけて安定的に高温が維持されるパターンが観察されました。督脈領域と膀胱経領域の比較では、特に膀胱経領域における温度上昇が顕著であり、これはBL40が膀胱経の募穴ではないものの、走行上での相対的な温熱伝播が強いことを示唆しています。 

考察

本研究により、委中(BL40)への鍼治療は尺沢(LU5)への鍼治療および灸治療と比較して、腰部表面温度をより効果的に上昇させることが明らかとなりました。この結果は、BL40が膀胱経の要穴であり、腰部の微小循環改善に有効な主要経穴であることを支持します。また、鍼刺激特有のメカニカル・サーモダイナミクス的作用が、単なる温熱刺激である灸治療を上回る可能性を示唆しています。既存の研究では、灸治療が持続的かつ穏やかな温熱効果をもたらす一方で、鍼治療は機械的刺激による即時的な血流促進作用があるとされており、本研究の結果とも整合的です。さらに、督脈・膀胱経領域での温度変化パターンは、経絡概念に基づく局所的熱伝道が臨床的効果に寄与している可能性を示しており、今後は疾患モデル(腰痛患者)への応用や疼痛評価を併用した臨床試験が望まれます。 

結論および臨床的意義

本RCTは、健常成人において委中(BL40)への鍼治療が尺沢(LU5)や灸治療に比べて腰部温度上昇において優位性を示すことを明確にしました。臨床現場では、腰痛や腰部冷え症の管理に際し、BL40を中心とした鍼治療を優先的に組み込むことで、速やかな温熱効果と微小循環改善を期待できます。また、温熱以外の疼痛緩和や機能改善への転嫁効果を評価することで、エビデンスに基づく鍼灸治療プロトコールの確立が進むと考えられます。さらに、灸治療との併用や経穴組み合わせ(例:BL23、GV4など)による相乗効果の検討も今後の課題です。 

使用経穴一覧

  • BL40(委中)

  • LU5(尺沢)

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忘却曲線に基づいて復習タイミングが自動で最適化され、
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■ 何故、Ankiは学習効率が高いのか

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ここでは、Ankiのシステムを使った「経穴リスニング暗記帳」が何故、学習効率が高いのかについて説明いたします。

– Ankiによる自動復習機能(分散学習)

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忘れる前に、Ankiが思い出させてくれる。

Ankiは、記憶の心理学的メカニズム――特にエビングハウスの忘却曲線の研究に基づき、「最適な復習タイミング」を自動で提示するシステムを備えています。

これにより、学習内容を忘れかけた絶妙なタイミングで再提示し、記憶を強化。最終的には長期記憶として定着させることが可能です。

  1. 復習しないと忘却が進行
    → 時間とともに記憶は薄れていきます。

  2. Ankiが復習を促す
    → 忘れる前の最適なタイミングでカードが再提示されます。

  3. 記憶が強化される
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  4. 記憶が定着する
    → 繰り返しにより、長期的な知識として安定的に保持されます。

このような間隔反復(Spaced Repetition)の仕組みは、短期記憶のまま消えていくのを防ぎ、効率的で持続性のある学習を実現します。

🔺 最適な復習タイミングが、記憶の定着を飛躍的に高める。

– 能動的想起(テスト効果)による記憶の強化

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能動的想起(アクティブリコール)による記憶の強化

ただ教科書を読むだけの「受動的学習」では、情報はなかなか定着しません。
一方で、学んだ内容を自分の頭で思い出そうとする「能動的学習」では、記憶の定着率が格段に向上することが、数多くの心理学的研究で示されています。

この「思い出そうとする行為」そのものが脳内の記憶経路を再活性化し、情報へのアクセスを強化します。その結果、より強固で思い出しやすい記憶が形成されるのです。

左側:受動的学習(教科書を読むだけ) → 記憶の定着は限定的
右側:能動的学習(思い出そうとする) → 記憶の定着が飛躍的にアップ

🔴 記憶は「入力」ではなく「出力」によって強化される。

Ankiなどのテスト形式の学習ツールは、まさにこの能動的想起(Active Recall)の原理を活かした方法であり、記憶の強化に極めて効果的です。

– 複数の感覚を使うと、記憶はもっと強くなる

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マルチモーダル学習による記憶定着の向上

記憶をより深く、強く定着させるには、視覚だけに頼るのではなく、複数の感覚を同時に使う「マルチモーダル学習」が効果的です。

  • 👁 視覚情報:文字・図を見て学ぶ

  • 👂 聴覚情報:音声を聞いて学ぶ

  • 触覚情報:実際に身体に触れ、感覚を伴って学ぶ

これらの異なる感覚情報が脳内で統合されることで、記憶のネットワークが多層的に構築され、忘れにくくなるのです。

特に経穴の学習においては、
「見る」+「聴く」+「触れる」という三感覚の連携が極めて有効。

🔷 マルチモーダル学習で、記憶が深く刻まれる。
→ 経穴の学習には「見る」「聴く」「触れる」が鍵。

– 二重符号化理論 – 記憶のバックアップを作る

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二重符号化理論(Dual-Coding Theory)
― 記憶のバックアップを作る学び方 ―

学習した情報を視覚(文字·図)と聴覚(音声)の2つの経路で同時に取り入れることで、記憶の定着が強化されるという理論が「二重符号化理論(Dual-Coding Theory)」です。

👁 視覚情報(文字・図)
👂 聴覚情報(音声)

これらは脳内で別々のチャンネルとして処理·保存されるため、どちらか一方の記憶が弱まっても、もう一方から補完され、思い出しやすくなるという利点があります。

たとえば、音を忘れても文字を見れば思い出せる。
または、文字を忘れても音を聞けば思い出せる。

📌 文字と音声の両方で学ぶことで、記憶が二重に保存される。
つまり、記憶にバックアップが作られるような状態が生まれ、忘れにくくなるのです。

– 声に出して覚えると、記憶はもっと深く残る

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― 生成効果(Production Effect)とは ―

単に「読む」「聞く」といった受動的な学習に比べて、自分の声で情報を発する=生成する(能動的学習)ことで、記憶の定着率は大幅に向上します。

この現象は、生成効果(Production Effect)と呼ばれ、心理学的にも広く研究されています。

📖👂 読む·聞く(受動的)
→ 情報は一方的に入力されるが、記憶への定着は弱い。
🗣🧠 声に出す(能動的)
→ 自らの言葉で発することで、脳内の記憶回路が活性化。
→ 記憶の痕跡が強く、深く刻まれる。

このように、音読やシャドーイングのような声に出す学習は、
単なる受け身の学習を超えて、脳に「刻み込む」記憶法へと変わります。

🔷 声に出す(=情報を生成する)ことが、記憶を深く定着させる鍵。

– 声に出すことは、優れた運動感覚学習となる
〜 シャドーイングは脳と身体をフルに使う記憶術 〜

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シャドーイングとは、聞いた音声をすぐに繰り返して発音する学習法です。

この方法には、単なる「耳で聞く学習」を超えた、運動感覚学習(Kinesthetic Learning)の効果があります。

なぜ記憶が深くなるのか?

  1. 発声(motor)
    → 口や喉などの運動器官を使い、声に出して情報を「体で再現」。

  2. 聴覚モニタリング(sensory)
    → 自分の発した声が耳から入り、自分の聴覚を再び刺激。

  3. 脳内でのフィードバック修正
    → 発声→聴取→修正のサイクルが脳内で繰り返されることで、運動感覚と知覚の統合が起こり、記憶がより強固になります。

  4. 体性感覚の追加モダリティ
    → 経穴名などの抽象的な情報が、「自分の声を出した感覚」と結びつき、身体に刻まれる。

•  目で見て、耳で聴いて、口で言う
• 「口が覚えている」=身体で覚えている

🔷 シャドーイングは、脳と身体を統合して使う、最強の記憶術。
抽象知識を身体的な感覚とつなげることで、記憶は格段に深まります。

Ankiを最大限に活かす鍵は、カードの“質”にある
― 効果的な学習のためには、高品質なカードが必要 ―

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Ankiは非常に優れた学習ツールですが、本当に効果を発揮するには「カードの質」が重要です。

しかし、多くの人にとって
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