論文紹介:Effects of acupuncture at Weizhong (BL40) on brain function with PET/CT「委中穴(BL40)への鍼刺激がPET/CTによる脳機能に及ぼす影響」

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引用論文

Shapo, G., Ma, L., & Liu, C. (2006). [Effects of acupuncture at Weizhong (BL40) on brain function with PET/CT]. Zhongguo Zhong Xi Yi Jie He Za Zhi, 26(11), 969–972. PMID: 17186722 


Effects of acupuncture at Weizhong (BL40) on brain function with PET/CT
「委中穴(BL40)への鍼刺激がPET/CTによる脳機能に及ぼす影響」

背景

慢性腰痛や運動器疾患の治療において、経穴への鍼刺激は局所の血流改善や筋膜リリースのみならず、中枢神経系にも影響を及ぼすことが知られています。とりわけ、PET/CTなどの機能的画像診断技術を用いることで、刺鍼による脳内グルコース代謝変化や血流分布のリアルタイムな評価が可能となり、従来の主観的評価に依存しない客観的エビデンスの構築が期待されています  。中国伝統医学(TCM)では、膀胱経の合水穴である委中(BL40)が腰背部・下肢の疼痛緩和に古くから用いられており、その中枢調節メカニズムの解明が求められてきました 


目的

本研究は、Healthyな成人ボランティアに対し、右脚の委中穴(BL40)に電気鍼刺激を行った際の脳機能変化を、PET/CTを用いて刺鍼前後で比較し、経穴–脳機能の関連性および鍼の中枢調節メカニズムを探索的に明らかにすることを目的としました 


方法

  • 対象:健康成人16名(男性8名、女性8名、平均年齢27.3歳)を、刺激群(n=8)および非刺激対照群(n=8)に無作為割付。

  • 刺激条件:刺激群には右脚の委中(BL40)に電気鍼(HANS型電気鍼刺激器)を装着し、鍼柄に同軸ケーブルを接続。通電パラメータは1回あたり「60秒ON/120秒OFF」を4分間×2セットのブロックデザインで実施。刺入深度は25~30 mmとし、得気感(de-qi)を確認後に通電を開始した。

  • 対照条件:対照群は同時間、同体位で安静に過ごし、経穴刺激は一切行わなかった。

  • PET/CT撮像

    • 装置:GE製3.0T PET/CT統合型システム

    • プロトコル:[^18F]FDG静脈内投与後、30分安静保持。刺鍼前、刺鍼ONブロック(4分×2)中に各30秒間撮像。

    • 画像解析:SPM(Statistical Parametric Mapping)によるボクセル単位ペアt検定を実施し、p < 0.01(uncorrected)、クラスタサイズk > 30 voxelsを有意閾値とした。

  • 評価領域:前頭葉、側頭葉、頭頂葉、島皮質、視床、小脳皮質、被殻など広範な脳領域をROIとし、活性化領域・抑制領域を抽出した。 


結果

  1. 活性化領域

    刺鍼ON vs. 刺鍼前比較において、有意にグルコース代謝が増強された領域は以下の通りでした:

    • 前頭葉:左BA10, BA11, BA44–46;右BA10

    • 側頭葉:左BA22(Wernicke野近傍)

    • 頭頂葉:左BA39–40

    • 視覚連合野:両側BA18–19

    • 小脳皮質:左外側小脳

    • 島皮質:左insula

    • 被殻付近:claustrum(脳梁縁皮質付近) 

  2. 抑制領域

    同比較で代謝が有意に低下した領域は以下でした:

    • 前頭葉:右BA44, BA6

    • 頭頂葉:左BA7–8, BA19, BA40;右BA1–3(体性感覚野)

    • 帯状回:両側BA24(前部帯状回)

    • 脳幹:左substantia nigra(黒質) 

  3. 非刺激対照群

    対照群では撮像ブロック間で統計学的に有意な変化を認めず、刺激群で観察された中枢応答が鍼刺激特異的であることを裏付けた。


考察

  1. 前頭葉および島皮質の活性化

    BA10・11は扁桃体–前頭前野回路と関わり、疼痛認知や情動調節に寄与します。島皮質は侵害受容情報の統合中枢であり、刺鍼によるC線維・Aδ線維刺激がこれら領域を活性化することで、脳内の鎮痛・情動制御ネットワークを賦活していると考えられます 

  2. 視床–島皮質–被殻を介した情報伝達

    視床およびclaustrumは感覚情報のハブであり、刺鍼によって抹消から伝わった刺激が視床を経由して島皮質・前頭前野へ拡散し、Pain Matrix全体の調節を図る可能性が示唆されます。

  3. 帯状回および黒質の抑制

    BA24(前部帯状回)は注意・情動制御に関与し、黒質はドパミン作動性ニューロンの集積地です。これらの抑制は注意資源の再配分や鎮痛性ドパミン作動系の調節を示すと考えられ、中枢オピオイド系・ドパミン系による複合的な鎮痛機序を反映している可能性があります 

  4. 小脳の関与

    小脳皮質の活性化は、運動–感覚統合や筋緊張調節の変化を示唆し、刺鍼による筋膜緊張リリース効果が遠隔的にもフィードバックされる可能性を持ちます。

  5. TCM経絡理論との整合性

    TCMでは、BL40は膀胱経の合水穴として「膀胱経の水分を調整し、腰背痛を緩和する」とされます。本研究の脳機能変化は、BL40刺鍼が多層的に中枢神経系を再編成し、「気血の流れ」を科学的に裏付ける一例といえます 


結論

委中穴(BL40)への電気鍼刺激は、PET/CTで捉えられる広範な脳領域の活性化・抑制を伴い、侵害受容から情動制御まで含む多層的な中枢調節を誘導することが示されました。特に前頭前野・島皮質・視床–島皮質–被殻回路、および帯状回・黒質の抑制が疼痛緩和に重要な役割を果たすと考えられます。PET/CTはTCM経絡理論を客観的に検証し、中枢メカニズムの解明に有用なツールであることが改めて示されました。今後は、腰痛患者への臨床試験や他経穴との比較試験を通じて、鍼治療プロトコルの最適化とエビデンス強化を図る必要があります 


使用経穴一覧

  • BL40(委中, Weizhong) 

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ここでは、Ankiのシステムを使った「経穴リスニング暗記帳」が何故、学習効率が高いのかについて説明いたします。

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忘れる前に、Ankiが思い出させてくれる。

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このような間隔反復(Spaced Repetition)の仕組みは、短期記憶のまま消えていくのを防ぎ、効率的で持続性のある学習を実現します。

🔺 最適な復習タイミングが、記憶の定着を飛躍的に高める。

– 能動的想起(テスト効果)による記憶の強化

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能動的想起(アクティブリコール)による記憶の強化

ただ教科書を読むだけの「受動的学習」では、情報はなかなか定着しません。
一方で、学んだ内容を自分の頭で思い出そうとする「能動的学習」では、記憶の定着率が格段に向上することが、数多くの心理学的研究で示されています。

この「思い出そうとする行為」そのものが脳内の記憶経路を再活性化し、情報へのアクセスを強化します。その結果、より強固で思い出しやすい記憶が形成されるのです。

左側:受動的学習(教科書を読むだけ) → 記憶の定着は限定的
右側:能動的学習(思い出そうとする) → 記憶の定着が飛躍的にアップ

🔴 記憶は「入力」ではなく「出力」によって強化される。

Ankiなどのテスト形式の学習ツールは、まさにこの能動的想起(Active Recall)の原理を活かした方法であり、記憶の強化に極めて効果的です。

– 複数の感覚を使うと、記憶はもっと強くなる

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マルチモーダル学習による記憶定着の向上

記憶をより深く、強く定着させるには、視覚だけに頼るのではなく、複数の感覚を同時に使う「マルチモーダル学習」が効果的です。

  • 👁 視覚情報:文字・図を見て学ぶ

  • 👂 聴覚情報:音声を聞いて学ぶ

  • 触覚情報:実際に身体に触れ、感覚を伴って学ぶ

これらの異なる感覚情報が脳内で統合されることで、記憶のネットワークが多層的に構築され、忘れにくくなるのです。

特に経穴の学習においては、
「見る」+「聴く」+「触れる」という三感覚の連携が極めて有効。

🔷 マルチモーダル学習で、記憶が深く刻まれる。
→ 経穴の学習には「見る」「聴く」「触れる」が鍵。

– 二重符号化理論 – 記憶のバックアップを作る

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二重符号化理論(Dual-Coding Theory)
― 記憶のバックアップを作る学び方 ―

学習した情報を視覚(文字·図)と聴覚(音声)の2つの経路で同時に取り入れることで、記憶の定着が強化されるという理論が「二重符号化理論(Dual-Coding Theory)」です。

👁 視覚情報(文字・図)
👂 聴覚情報(音声)

これらは脳内で別々のチャンネルとして処理·保存されるため、どちらか一方の記憶が弱まっても、もう一方から補完され、思い出しやすくなるという利点があります。

たとえば、音を忘れても文字を見れば思い出せる。
または、文字を忘れても音を聞けば思い出せる。

📌 文字と音声の両方で学ぶことで、記憶が二重に保存される。
つまり、記憶にバックアップが作られるような状態が生まれ、忘れにくくなるのです。

– 声に出して覚えると、記憶はもっと深く残る

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― 生成効果(Production Effect)とは ―

単に「読む」「聞く」といった受動的な学習に比べて、自分の声で情報を発する=生成する(能動的学習)ことで、記憶の定着率は大幅に向上します。

この現象は、生成効果(Production Effect)と呼ばれ、心理学的にも広く研究されています。

📖👂 読む·聞く(受動的)
→ 情報は一方的に入力されるが、記憶への定着は弱い。
🗣🧠 声に出す(能動的)
→ 自らの言葉で発することで、脳内の記憶回路が活性化。
→ 記憶の痕跡が強く、深く刻まれる。

このように、音読やシャドーイングのような声に出す学習は、
単なる受け身の学習を超えて、脳に「刻み込む」記憶法へと変わります。

🔷 声に出す(=情報を生成する)ことが、記憶を深く定着させる鍵。

– 声に出すことは、優れた運動感覚学習となる
〜 シャドーイングは脳と身体をフルに使う記憶術 〜

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シャドーイングとは、聞いた音声をすぐに繰り返して発音する学習法です。

この方法には、単なる「耳で聞く学習」を超えた、運動感覚学習(Kinesthetic Learning)の効果があります。

なぜ記憶が深くなるのか?

  1. 発声(motor)
    → 口や喉などの運動器官を使い、声に出して情報を「体で再現」。

  2. 聴覚モニタリング(sensory)
    → 自分の発した声が耳から入り、自分の聴覚を再び刺激。

  3. 脳内でのフィードバック修正
    → 発声→聴取→修正のサイクルが脳内で繰り返されることで、運動感覚と知覚の統合が起こり、記憶がより強固になります。

  4. 体性感覚の追加モダリティ
    → 経穴名などの抽象的な情報が、「自分の声を出した感覚」と結びつき、身体に刻まれる。

•  目で見て、耳で聴いて、口で言う
• 「口が覚えている」=身体で覚えている

🔷 シャドーイングは、脳と身体を統合して使う、最強の記憶術。
抽象知識を身体的な感覚とつなげることで、記憶は格段に深まります。

Ankiを最大限に活かす鍵は、カードの“質”にある
― 効果的な学習のためには、高品質なカードが必要 ―

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Ankiは非常に優れた学習ツールですが、本当に効果を発揮するには「カードの質」が重要です。

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