2.1 BL1 Jīngmíng (睛明) – Bright Eyes
- 取穴部位: 内眼角の内上方0.1寸、眼窩骨壁との間の陥凹部に取る 。
- 古典的基礎: BL1 睛明は、膀胱経の起始点であり、手の太陽小腸経、足の陽明胃経、そして奇経八脈の陰蹻脈・陽蹻脈が交会する極めて重要な経穴である。その名称は「睛(ひとみ)を明(あきら)かにする」という意味を持ち、古来よりあらゆる眼疾患の要穴とされてきた 。『鍼灸甲乙経』では、視力低下、流涙、目の赤みや痒みなど、広範な眼症状に対する主治が記載されている 。
- 現代科学的エビデンスと作用機序: 睛明は、現代の臨床研究において最もエビデンスが蓄積されている眼科領域の経穴の一つである。特に中等度から重度のドライアイ(DED)に対する効果が注目されている。複数のランダム化比較試験(RCT)において、睛明への単穴刺鍼が、人工涙液の点眼と比較して、涙液分泌量(シルマーテスト値)を有意に増加させ、眼の乾燥感や痛みといった自覚症状を改善することが示されている 。
- Li, J., Wang, Y., Li, Y., Ding, L., Zhao, Y., Li, Y., Du, S., Liu, S., Wu, H., Wu, H., Zhang, Y., Liu, Y., Zhao, H., & Liang, F. (2022). Effectiveness of acupuncture at acupoint BL1 (Jingming) in comparison with artificial tears for moderate to severe dry eye disease: A randomized controlled trial. Trials, 23(1), 625. https://doi.org/10.1186/s13063-022-06486-4 → 要約
- 神経調節: 睛明への刺激は、眼窩周囲の三叉神経(眼神経)の枝を介して脳幹にある涙液分泌中枢に信号を送り、副交感神経を介して涙腺からの涙液分泌を反射的に促進する。
- 血流改善: 鍼刺激は、眼動脈やその分枝の血流を増加させ、眼球およびその付属器への栄養供給を改善する。これは、視神経萎縮や網膜疾患に対する治療効果の基盤となりうる 。
- 中枢作用: fMRI研究はまだ限定的だが、眼疾患治療に用いられる経穴(例:GB20)への刺激が視覚野(後頭葉)の活動を変化させることが知られており、睛明も同様に視覚情報処理に関わる中枢神経系ネットワークを調節する可能性が示唆されている 。
- 臨床応用と配穴
- 主要な臨床応用: ドライアイ、眼精疲労、初期の白内障・緑内障、視神経萎縮、アレルギー性結膜炎など、ほぼ全ての眼疾患。
- 注意: 眼球に近接するため、刺鍼には高度な技術と解剖学的知識が要求される。眼球を避け、眼窩壁に沿ってゆっくりと刺入する必要がある。
- 配穴:
- ドライアイ・眼精疲労: 肝血を補い眼を滋養するため、足の厥陰肝経のLR3(太衝)や背部兪穴のBL18(肝兪)と組み合わせる。
- 視力低下: 視力に関わる奇穴である球後や、足の少陽胆経のGB37(光明)と配穴する。
