論文紹介:Effect of Acupuncture on Diaphragm Function in Healthy Volunteers: A Pilot Clinical Study「健常ボランティアにおける呼吸横隔膜機能への鍼治療の効果:パイロット臨床試験」

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引用論文

Formenti, P., Galimberti, A., Pinciroli, R., & Umbrello, M. (2022). Effect of Acupuncture on Diaphragm Function in Healthy Volunteers: A Pilot Clinical Study. Evidence-Based Complementary and Alternative Medicine, 2022, 6608200. https://doi.org/10.1155/2022/6608200 


Effect of Acupuncture on Diaphragm Function in Healthy Volunteers: A Pilot Clinical Study
「健常ボランティアにおける呼吸横隔膜機能への鍼治療の効果:パイロット臨床試験」

1. 研究背景

西洋医学において横隔膜は主要な吸息筋であり、胸郭のポスチャー制御やバランス保持にも寄与する重要筋肉である。一方、伝統中国医学(TCM)では横隔膜は「気」の流れを上下に分かつ要所と捉えられ、全身の昇降機能を調整する役割を担うと考えられてきた。このように横隔膜は呼吸機能のみならず身体全体の調和に深く関与している 

しかし、鍼治療が横隔膜機能に及ぼす影響については臨床的検証がほとんど行われておらず、本研究では健常者を対象に、鍼を用いて横隔膜の運動(excursion)と筋厚(thickening)を超音波計測し、その機能変化を評価することを目的とした。

2. 研究デザイン

  • デザイン:プルーフ・オブ・コンセプトの前向き、対照付きパイロット試験

  • 対象:10名の健常ボランティア(男性6名、平均体重71±12 kg、身長173±9 cm、BMI 21±1.3 kg/m²)

  • 介入:各被験者に対し、

    1. ベースライン測定

    2. シャム鍼(偽刺激)

    3. 実鍼(Acupuncture)

      の順に実施し、各ステップごとに呼吸時のパラメータを計測

  • 測定項目

    • 呼吸数(Respiratory Rate)

    • 一回換気量(Tidal Volume)

    • 最大呼吸時の一回換気量(Vital Capacity Breathing Volume)

    • 横隔膜の動揺幅(Diaphragm Excursion)

    • 横隔膜筋厚および厚さ比(Thickening Fraction)

  • 評価方法:超音波(エコー)ガイド下に安静時(tidal breathing)および肺活量呼吸時(vital capacity breathing)に計測。

3. 刺鍼プロトコール

  • 使用した経穴:

    • GB34(陽陵泉)

    • LV3(太衝)

    • CV17(膻中)

    • BL17(膈兪)

    • BL46(膏肓兪) 

  • 刺鍼手技:各経穴に1本ずつ使い捨て鍼を挿入し、「得気」を得るまで手技刺激を行い、その後安定置鍼。

  • シャム鍼:皮膚を軽く接触させるのみで鍼刺入および「得気」は行わない。

4. 主な結果

  1. 安静呼吸(Tidal Breathing)時

    • 一回換気量、横隔膜動揺幅、呼気終末時の筋厚には、ベースライン→シャム→実鍼のいずれにおいても有意変化なし。

    • 厚さ比(Thickening Fraction)はベースライン30.8±15.3%、シャム31.3±14.9%、実鍼43.5±16.6%であり、実鍼群で増加傾向を示したものの統計的有意差は認められなかった(p=0.1066) 

  2. 肺活量呼吸(Vital Capacity Breathing)時

    • 一回換気量:実鍼群3840±690 mlがベースライン3230±750 ml、シャム鍼3110±880 mlに対し増加傾向(p=0.1247)。

    • 厚さ比(Thickening Fraction):実鍼群270.6±136.4%がベースライン188.6±41.7%、シャム鍼172.4±57.4%に比べ有意に増加(p=0.0414) 

以上より、鍼刺激は最大努力呼吸時において横隔膜の収縮性を高める効果が示唆された。

5. 考察

  • 横隔膜機能改善の意義

    肺活量呼吸での厚さ比増加は、鍼治療が横隔膜筋の収縮効率を向上させ、吸息ポンプとしての働きを強化した可能性を示す。これは、呼吸リハビリテーションや運動パフォーマンス向上への応用が期待できる。

  • TCMの視点との整合性

    膻中(CV17)は胸腔内の気の中心、膈兪(BL17)は横隔膜の背部募穴、膏肓兪(BL46)は胸腔調整、陽陵泉(GB34)と太衝(LV3)は筋骨の調整に用いられる要穴であり、呼吸運動の調和を意図した選穴といえる。

  • パイロット試験の限界

    • 被験者数が少数(n=10)で探索的研究にとどまり、偽刺激との差異をより確実に検証するためには症例数の増加が必要。

    • 健常者対象のため、呼吸障害患者への有効性は未検証。

    • 刺鍼手技の標準化やエコー計測の技術ばらつき抑制が今後の課題。

6. 臨床応用への示唆

  • 呼吸リハビリテーション

    呼吸筋トレーニングと併用して鍼治療を行うことで、COPDや慢性呼吸不全患者の横隔膜機能改善に結びつく可能性がある。

  • スポーツコンディショニング

    運動前の鍼刺激により呼吸効率を高め、持久力向上や疲労軽減への応用が期待される。

  • 姿勢・バランス制御

    横隔膜は体幹の安定化にも関与するため、鍼による機能向上が姿勢制御訓練の一助となり得る。

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■ 何故、Ankiは学習効率が高いのか

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ここでは、Ankiのシステムを使った「経穴リスニング暗記帳」が何故、学習効率が高いのかについて説明いたします。

– Ankiによる自動復習機能(分散学習)

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忘れる前に、Ankiが思い出させてくれる。

Ankiは、記憶の心理学的メカニズム――特にエビングハウスの忘却曲線の研究に基づき、「最適な復習タイミング」を自動で提示するシステムを備えています。

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  1. 復習しないと忘却が進行
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  2. Ankiが復習を促す
    → 忘れる前の最適なタイミングでカードが再提示されます。

  3. 記憶が強化される
    → 復習によって脳内ネットワークが再活性化され、記憶が深まります。

  4. 記憶が定着する
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このような間隔反復(Spaced Repetition)の仕組みは、短期記憶のまま消えていくのを防ぎ、効率的で持続性のある学習を実現します。

🔺 最適な復習タイミングが、記憶の定着を飛躍的に高める。

– 能動的想起(テスト効果)による記憶の強化

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能動的想起(アクティブリコール)による記憶の強化

ただ教科書を読むだけの「受動的学習」では、情報はなかなか定着しません。
一方で、学んだ内容を自分の頭で思い出そうとする「能動的学習」では、記憶の定着率が格段に向上することが、数多くの心理学的研究で示されています。

この「思い出そうとする行為」そのものが脳内の記憶経路を再活性化し、情報へのアクセスを強化します。その結果、より強固で思い出しやすい記憶が形成されるのです。

左側:受動的学習(教科書を読むだけ) → 記憶の定着は限定的
右側:能動的学習(思い出そうとする) → 記憶の定着が飛躍的にアップ

🔴 記憶は「入力」ではなく「出力」によって強化される。

Ankiなどのテスト形式の学習ツールは、まさにこの能動的想起(Active Recall)の原理を活かした方法であり、記憶の強化に極めて効果的です。

– 複数の感覚を使うと、記憶はもっと強くなる

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マルチモーダル学習による記憶定着の向上

記憶をより深く、強く定着させるには、視覚だけに頼るのではなく、複数の感覚を同時に使う「マルチモーダル学習」が効果的です。

  • 👁 視覚情報:文字・図を見て学ぶ

  • 👂 聴覚情報:音声を聞いて学ぶ

  • 触覚情報:実際に身体に触れ、感覚を伴って学ぶ

これらの異なる感覚情報が脳内で統合されることで、記憶のネットワークが多層的に構築され、忘れにくくなるのです。

特に経穴の学習においては、
「見る」+「聴く」+「触れる」という三感覚の連携が極めて有効。

🔷 マルチモーダル学習で、記憶が深く刻まれる。
→ 経穴の学習には「見る」「聴く」「触れる」が鍵。

– 二重符号化理論 – 記憶のバックアップを作る

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二重符号化理論(Dual-Coding Theory)
― 記憶のバックアップを作る学び方 ―

学習した情報を視覚(文字·図)と聴覚(音声)の2つの経路で同時に取り入れることで、記憶の定着が強化されるという理論が「二重符号化理論(Dual-Coding Theory)」です。

👁 視覚情報(文字・図)
👂 聴覚情報(音声)

これらは脳内で別々のチャンネルとして処理·保存されるため、どちらか一方の記憶が弱まっても、もう一方から補完され、思い出しやすくなるという利点があります。

たとえば、音を忘れても文字を見れば思い出せる。
または、文字を忘れても音を聞けば思い出せる。

📌 文字と音声の両方で学ぶことで、記憶が二重に保存される。
つまり、記憶にバックアップが作られるような状態が生まれ、忘れにくくなるのです。

– 声に出して覚えると、記憶はもっと深く残る

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― 生成効果(Production Effect)とは ―

単に「読む」「聞く」といった受動的な学習に比べて、自分の声で情報を発する=生成する(能動的学習)ことで、記憶の定着率は大幅に向上します。

この現象は、生成効果(Production Effect)と呼ばれ、心理学的にも広く研究されています。

📖👂 読む·聞く(受動的)
→ 情報は一方的に入力されるが、記憶への定着は弱い。
🗣🧠 声に出す(能動的)
→ 自らの言葉で発することで、脳内の記憶回路が活性化。
→ 記憶の痕跡が強く、深く刻まれる。

このように、音読やシャドーイングのような声に出す学習は、
単なる受け身の学習を超えて、脳に「刻み込む」記憶法へと変わります。

🔷 声に出す(=情報を生成する)ことが、記憶を深く定着させる鍵。

– 声に出すことは、優れた運動感覚学習となる
〜 シャドーイングは脳と身体をフルに使う記憶術 〜

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シャドーイングとは、聞いた音声をすぐに繰り返して発音する学習法です。

この方法には、単なる「耳で聞く学習」を超えた、運動感覚学習(Kinesthetic Learning)の効果があります。

なぜ記憶が深くなるのか?

  1. 発声(motor)
    → 口や喉などの運動器官を使い、声に出して情報を「体で再現」。

  2. 聴覚モニタリング(sensory)
    → 自分の発した声が耳から入り、自分の聴覚を再び刺激。

  3. 脳内でのフィードバック修正
    → 発声→聴取→修正のサイクルが脳内で繰り返されることで、運動感覚と知覚の統合が起こり、記憶がより強固になります。

  4. 体性感覚の追加モダリティ
    → 経穴名などの抽象的な情報が、「自分の声を出した感覚」と結びつき、身体に刻まれる。

•  目で見て、耳で聴いて、口で言う
• 「口が覚えている」=身体で覚えている

🔷 シャドーイングは、脳と身体を統合して使う、最強の記憶術。
抽象知識を身体的な感覚とつなげることで、記憶は格段に深まります。

Ankiを最大限に活かす鍵は、カードの“質”にある
― 効果的な学習のためには、高品質なカードが必要 ―

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Ankiは非常に優れた学習ツールですが、本当に効果を発揮するには「カードの質」が重要です。

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