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井穴は経気の湧き出る源であり、経脈の反対端(顔面部・咽喉)の熱を清し、意識を回復させる(開竅醒神)作用を持つ

目次

1. 井穴は「経気の湧き出る源」

「所出為井,所溜為荥,所注為俞,所行為経,所入為合。」
―『黄帝内経 霊枢・九針十二原』

霊枢は五兪穴を川の上流から河口へ向かう“気の五段階”にたとえ、その最上流=発源点を井穴と位置づけています。「経気がまず体表に湧き出て外界と交わる場所」という位置づけは、後代すべての針灸古典の共通知見になりました。


2. 反対端(顔面・咽喉)の熱を瀉する

難経の機能分類

「井主心下滿,荥主身熱,俞主体重節痛,経主喘咳寒熱,合主逆氣而泄。」
―『難経』第六十八難

ここでいう「心下滿」は上焦・顔咽部に鬱滞した熱を含む広義の表現で、手の井穴(少商 LU-11・商陽 LI-1 など)が急性咽喉腫痛・鼻衄・面部熱感にしばしば用いられる理論的根拠になりました。

経絡走行と“末端-本幹の反射”

  • 肺経は喉を通り親指先で終わる → 少商で咽喉腫痛を瀉

  • 大腸経は口鼻に集まって人差し指先で終わる → 商陽で歯痛・鼻出血を瀉

『針灸大成』は各井穴の主治に「咽痛喉腫」「鼻衄唇喎」など上部熱証を列挙し、まさに“対側末端による遠隔瀉熱”として整理しています。


3. 開竅醒神――昏厥・卒中の急救穴

早期層の記載

  • 『霊枢・厥病』は手足末端を刺して厥証を救う手法を示唆。

  • 『備急千金要方』「卒中不語」条:「刺手足十井出血,一過即蘇」と放血療法を具体的に記述。

成書期の体系化

「人病尸厥暴死……可初刺足太陰隠白,二刺足少陰湧泉……五刺手少陰少冲。五井穴各二分……」
―『針灸大成』巻五「十二経井穴」

ここでは“尸厥(深昏迷)”の一次救急として六陰の井穴刺絡が処方され、「五絡閉塞を破り陽気を喚醒する」と説明。以後「開竅醒神・瀉熱救厥」は井穴の代名詞となります。


4. 古典的処方の実際例

証候

典拠

選穴・手技

目的

咽喉腫痛・高熱

『針灸甲乙経』咽喉門

手肺経 少商 点刺放血

末端瀉熱で局部炎症を鎮静

顔面浮熱・鼻衄

『難経』68 難の運用例

手大腸経 商陽 点刺

経別の行走部(鼻)から熱を抜く

昏厥/熱閉

『針灸大成』尸厥篇

十二井穴刺絡(指尖全放血)

開竅醒神・速やかな意識回復

これらの処方はすべて「熱は井穴で速やかに外へ逃す/閉竅は井穴で一気に開く」という同じ理論に立脚しています。


5. まとめ ――古典が語る井穴の三大要点

  1. 経気の源流

    • 『霊枢』が明確に定義。「所出為井」で全経脈の気血が最初に現れる節。

  2. 遠隔瀉熱

    • 『難経』の五兪穴主治分類と、個々の経絡走行から顔面・咽喉など経脈上端の実熱に対する速効穴として運用。

  3. 開竅醒神

    • 隋唐以降の急救方(千金要方)から明代『針灸大成』まで一貫して刺絡または強刺激で意識を喚醒する救急手技の第一選択穴。

したがって
「井穴は経気の湧き出る源であり、経脈の反対端の熱を清し、意識を回復させる」という説明は、霊枢・難経を礎とし、甲乙経・千金要方・針灸大成など歴代の臨床典籍で実証的に発展してきた古典的コンセンサスと言えます。

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