「Effectiveness of Acupuncture for Lateral Epicondylitis: A Systematic Review and Meta‑Analysis(PMCID: PMC7114772)」の要約と、使用された主な経穴について整理した内容です。
論文概要
背景・目的
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上外側上顆炎(テニス肘)への鍼治療(手技鍼、電気鍼)の臨床効果を、偽鍼・薬物治療・ブロック療法(局所注射)と比較するため、10件のランダム化比較試験(RCT)を対象に系統的レビューとメタ解析を実施 。
対象と方法
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検索時点:2019年5月まで。
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対象:796例を含む10件のRCT。
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比較群:偽鍼(2件)、薬物療法(NSAIDsなど、2件)、ブロック注射(4件)。
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評価項目:臨床有効率(有効と判定された率)、疼痛のVSA(視覚的アナログスケール)。
主な結果
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臨床有効率:鍼療法は偽鍼、薬物療法、注射療法に対して統計的に優位であった(P=0.15, P=0.02, P=0.0001)。
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VASスコア:鍼療法は偽鍼、薬物療法、注射療法と比較して有意に疼痛を軽減した(P=0.18, P<0.00001, P=0.03) 。
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フォローアップ情報と有害事象は不十分で、評価不可。
結論
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鍼治療は短期的な痛み緩和および臨床改善率について、偽鍼、薬物、注射に勝る可能性。ただし、研究の質に不確かさがあるため、今後は大規模・高品質なRCTが求められる 。
使用された経穴・治療手法
RCTの個別研究をもとに、主に次のようなポイントが頻用されていました:
1. 基本経穴(LI経絡:大腸経絡)
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LI10(手三里)、LI11(曲池):前腕・肘周囲の筋・筋膜に作用し、炎症や痛み軽減に良く使用。
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LI4(合谷):全身的な鎮痛効果を狙い、しばしば併用。
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SJ5(外関)などの三焦経穴:側腕部の気血流通を促進し、関連症状改善を助ける。
2. 阿是穴(Ashi points)
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上外側上顆周辺のエキス性痛点(圧痛点)に直接刺鍼。
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対象筋:ECRB(短橈側手根伸筋)、ED(総指伸筋)、supinator(回外筋)など痛みや筋緊張が集中する筋を狙う。
3. 電気鍼(EA)
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一部研究ではGB34(陽陵泉)、ST38(梁丘)など遠隔穴に低周波刺激を併用。
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肘周辺穴(LI11等)に対しても電気刺激を行うことで、鎮痛・血流改善の増強を図る治験が含まれる 。
まとめ表
経穴/手法 |
目的・効果 |
---|---|
LI10(手三里) |
前腕筋の痛み緩和 |
LI11(曲池) |
局所の炎症と痛みの軽減 |
LI4(合谷) |
全身的な鎮痛とストレス缓和 |
SJ5(外関) |
側腕部の気血循環改善 |
Ashi点(ECRB, ED等) |
圧痛点への直接刺激で局所の筋緊張解消・鎮痛 |
電気鍼(LI11, GB34, ST38など) |
鎮痛作用の増強、血流促進、組織回復促進 |
臨床的インプリケーションと今後の課題
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短期的には上記の組み合わせ鍼治療が疼痛軽減と機能改善に有効である可能性が高いが、長期的効果や安全性についてはデータ不足。
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研究の多くはランダム化・盲検化・フォローアップの設計に不十分な点が指摘されており、臨床適用にあたってはその点を踏まえる必要がある 。
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今後は 大規模RCT・線量反応解析・長期追跡・有害事象記録を充実させることが求められます。
結論
このメタ解析では、テニス肘に対する鍼(特にLI経穴・Ashi点+電気鍼併用)が、偽鍼や薬物治療、注射療法よりも有意に短期的鎮痛と臨床改善をもたらす可能性が示唆されています。ただし、使用経穴の明記と効果因子の特定にはばらつきがあり、今後の高品質研究による確証が期待されます。