論文紹介:Acupoint specificity on acupuncture regulation of hypothalamic-pituitary-adrenal cortex axis function「視床下部-下垂体-副腎皮質軸機能調節における経穴特異性」

画像
⭐️経穴リスニング暗記帳⭐️を詳しく見る

引用論文

Wang, S.-j., Zhang, J.-j., Yang, H.-y., Wang, F., & Li, S.-t. (2015). Acupoint specificity on acupuncture regulation of hypothalamic-pituitary-adrenal cortex axis function. BMC Complementary and Alternative Medicine, 15, Article 87. https://doi.org/10.1186/s12906-015-0625-4 

Acupoint specificity on acupuncture regulation of hypothalamic-pituitary-adrenal cortex axis function
「視床下部-下垂体-副腎皮質軸機能調節における経穴特異性」

背景

ストレス応答の中枢調節系である視床下部-下垂体-副腎皮質軸(HPAA)は、視床下部パラベントリキュラ核(PVN)で産生されるCRH(コルチコトロピン放出ホルモン)を契機に、下垂体からのACTH分泌を経て副腎皮質からのコルチコステロイド放出を促します。これにより外的ストレスへの適応とネガティブフィードバック制御が達成される一方で、慢性的なストレス状態ではHPAA制御が破綻し、うつ様行動や自律神経・内分泌異常を招くとされています。鍼治療は末梢の感覚受容器を介して中枢へ信号を伝え、HPAAを含む神経-内分泌系の機能調節効果が臨床的にも示唆されていますが、どの経穴がHPAA機能に特異的に作用するかは未解明でした。本研究は、in vivo電気生理学的手法を用いてPVN内のCRH様ニューロン活性をアセスメントし、刺激経穴の特異性を客観的に同定するとともに、うつ様行動モデルでのHPAA調節効果を評価することで、経穴特異性の基礎的証拠を構築することを目指しました 

目的

本研究の第一の目的は、33種類の経穴への鍼刺激がPVN内CRH様ニューロン(Stress Reaction Neurons; SRNs)のスパイク発火率に与える影響をin vivoで記録し、±20%以上の変化を示す「特異経穴」を同定することにあります。第二の目的は、特異経穴がストレス誘導ラットモデル(UCMS: Unpredictable Chronic Mild Stress)において、血中コルチコステロン(CORT)レベル、PVN内CRHおよびグルココルチコイド受容体(GR)蛋白発現、そして行動指標(オープンフィールドテスト、スクロース消費量)に及ぼす調節効果を検証することです 

方法

  1. 電気生理学的同定

    • 被験動物:150–170 gの雄性Sprague–Dawley系ラット。

    • 測定手法:ガラス電極を用い、PVN内43ユニットのCRH様ニューロン活動を外部記録。

    • 刺激経穴:全身に分布する33箇所の経穴(手足の三陰三陽経、督脈・任脈、耳甲部など)を各々刺激。

    • 評価基準:刺激後の発火率が基底状態比±20%以上変化を示す経穴を「特異経穴」と定義。

  2. UCMSモデルによる検証

    • モデル構築:天候変動や騒音などを無作為に組み合わせたUCMSプロトコルを3週間実施し、うつ様行動を誘導。

    • 群分け:

      • N(正常対照)

      • NEA(正常+非特異経穴:SP6/三陰交、KI9/陰谷)

      • M(UCMSモデル)

      • MNEA(UCMS+非特異経穴)

      • MEA(UCMS+特異経穴)

    • 鍼刺激条件:特異経穴群および非特異経穴群に1日1回、計14日間、各30秒刺入後60秒保持。

  3. アウトカム測定

    • 血中CORT測定:ELISA法。

    • PVN組織蛋白発現:Western blotにてGRおよびCRH蛋白を定量。

    • 行動評価:オープンフィールドにおける水平移動距離、垂直運動回数、ラインクロス数、及び24時間スクロース消費量を測定 

結果

  1. 特異経穴の同定

    • 発火率が有意に上昇または抑制された経穴は以下の8穴:Shenshu(BL23/腎兪)、Ganshu(BL18/肝兪)、Qimen(LR14/期門)、Jingmen(GB25/京門)、Riyue(GB24/日月)、Zangmen(LR13/章門)、Dazui(DU14/大椎)、Auricular Concha Region(ACR/耳甲部)。

    • 胆経・肝経・督脈系の経絡がHPAA調節に特に寄与し、副腎と同一または隣接する脊髄節領域に対応する経穴で効果が顕著であった 

  2. UCMSモデルにおける生化学的・行動学的効果

    • 血中CORT:M群で対照比有意上昇。MEA群ではM群と比較し約30%の有意低下(p < 0.05)、MNEA群は若干の抑制傾向のみ (p > 0.05) 

    • GR/CRH発現:M群でGR低下・CRH上昇を認めたが、MEA群ではGRが正常比に回復(p < 0.05)、CRHが有意抑制(p < 0.01)。NEA群・MNEA群はM群と差を示さず 

    • オープンフィールドテスト:MEA群はM群に対し水平移動距離が約40%回復(p < 0.05)、ラインクロス数・垂直運動は部分的改善、NEA群・MNEA群は改善を示さず。

    • スクロース消費量:MEA群でM群比20%程度の有意増加(p < 0.05)、付随的に快楽応答の回復を示唆 

考察

本研究は、経穴特異性という観点からHPAA調節メカニズムを解明した初の報告といえます。特異経穴刺激によるPVN内CRH様ニューロン発火率変動は、経穴–神経節–中枢回路の解剖学的・生理学的整合性を示唆します。特にBL23(腎兪)やBL18(肝兪)は副腎および肝臓を支配する脊髄節に隣接し、LR14(期門)などは自律神経節にも近接するため、末梢刺激が速やかに中枢へ伝達されたと考えられます。UCMSモデルにおけるGR回復・CRH抑制効果は、負のフィードバック系の再構築を示し、コルチコステロイド過剰状態からの正常化機能を裏付けます。加えて、行動・生化学的パラメータが非特異経穴群と比べて有意に改善されたことから、単なる皮膚刺激ではない経穴部位依存的な効果が実証されました 

結論

Shenshu(BL23/腎兪)やGanshu(BL18/肝兪)等の特異経穴は、HPAAの中枢–末梢ネットワークに直接的影響を及ぼし、ストレス負荷状態でのコルチコステロン制御、GR/CRH発現調節、うつ様行動改善をもたらします。本プラットフォームは臨床鍼灸における経穴選択指針の構築や、HPAA関連疾患(うつ病、PTSD、自律神経失調症など)への応用に向けた基盤研究として大きな意義を持ちます 

使用している経穴

  • BL23(腎兪)

  • BL18(肝兪)

  • LR14(期門)

  • GB25(京門)

  • GB24(日月)

  • LR13(章門)

  • DU14(大椎)

  • ACR(耳甲部) 

効率的に解剖学を勉強する

解剖学の学習を、もっと身近に、もっと効率的に

  • 国家試験対策に最適な解剖学e-learning
  • 視聴制限なしの動画講座
  • 質問し放題の「学びサロン」サポート
  • 図が豊富でわかりやすい解説
  • 一問一答で重要用語をもれなく暗記
  • 国試問題演習で問題を解く考え方を養う

「解剖学の学習、こんな悩みはありませんか?」

時間の壁

理解の壁

記憶の壁


「かずひろ先生の解剖学e-learningなら」

時間の自由

理解の深化

記憶の定着

解剖学e-learningを詳しく見る

■ 経穴リスニング暗記帳
経穴学習における革新的なソリューション

noteで販売中

画像

Ankiのもつ自動復習機能(分散学習)にくわえて、文字情報だけでなく全てのカードに音声を追加。見て・聴いて経穴を覚えられる「経穴リスニング暗記帳」を作成しました。

画像

「経穴リスニング暗記帳」は、鍼灸学習者が直面する経穴の暗記という大きな壁を打ち破るために開発された、革新的な学習ツールです。
このAnkiデッキは、単なるデジタル単語帳ではありません。忙しい社会人学生が経穴を効率良く覚えるために認知科学と教育工学の科学的な知見を基盤としています。

– 経穴リスニング暗記帳の特徴

画像
  1. Ankiの自動復習機能(分散学習):科学的に証明された分散学習システム(SRS)による効率的な記憶の定着。

  2. 高品質な音声:全ての経穴に耳でも学べる読み上げ音声を収録。

  3. シャドーイングの実践:音声を聞きながら即座に復唱することで、記憶を能動的に深く刻み込む学習法。

– 経穴の記憶をAnkiがサポート

画像

経穴の学習は、その専門的で複雑な名称、身体上の正確な位置、そして要穴といった膨大な情報を正確に記憶する必要があります。
記憶に定着させるには、何度も復習することが大切です。Ankiはその優れた自動復習機能で、あなたの効率的な記憶をサポートしてくれます。

– 音声でひろがる、新しい学びのかたち

画像

「経穴リスニング暗記帳」は、すべてのカードに音声がついたAnki用の学習ツール

  • 音声によって、視覚だけでなく聴覚も同時に刺激され、記憶が深まります(マルチモーダル学習)。

  • 経穴名を聴きながらその場で復唱することで、シャドーイング学習が可能に。

  • 歩きながらの学習にも対応し、通勤・通学時間も学習時間に変わります。

  • 視覚障害のある方にも利用可能で、アクセシビリティにも配慮。

そして、この暗記帳にはAnkiの最大の特長である
「分散学習(Spaced Repetition)」の効果も加わります。

忘却曲線に基づいて復習タイミングが自動で最適化され、
“見る+聴く+話す”の三感覚刺激により、記憶はさらに深く、確実に定着します。

■ 何故、Ankiは学習効率が高いのか

画像

ここでは、Ankiのシステムを使った「経穴リスニング暗記帳」が何故、学習効率が高いのかについて説明いたします。

– Ankiによる自動復習機能(分散学習)

画像

忘れる前に、Ankiが思い出させてくれる。

Ankiは、記憶の心理学的メカニズム――特にエビングハウスの忘却曲線の研究に基づき、「最適な復習タイミング」を自動で提示するシステムを備えています。

これにより、学習内容を忘れかけた絶妙なタイミングで再提示し、記憶を強化。最終的には長期記憶として定着させることが可能です。

  1. 復習しないと忘却が進行
    → 時間とともに記憶は薄れていきます。

  2. Ankiが復習を促す
    → 忘れる前の最適なタイミングでカードが再提示されます。

  3. 記憶が強化される
    → 復習によって脳内ネットワークが再活性化され、記憶が深まります。

  4. 記憶が定着する
    → 繰り返しにより、長期的な知識として安定的に保持されます。

このような間隔反復(Spaced Repetition)の仕組みは、短期記憶のまま消えていくのを防ぎ、効率的で持続性のある学習を実現します。

🔺 最適な復習タイミングが、記憶の定着を飛躍的に高める。

– 能動的想起(テスト効果)による記憶の強化

画像

能動的想起(アクティブリコール)による記憶の強化

ただ教科書を読むだけの「受動的学習」では、情報はなかなか定着しません。
一方で、学んだ内容を自分の頭で思い出そうとする「能動的学習」では、記憶の定着率が格段に向上することが、数多くの心理学的研究で示されています。

この「思い出そうとする行為」そのものが脳内の記憶経路を再活性化し、情報へのアクセスを強化します。その結果、より強固で思い出しやすい記憶が形成されるのです。

左側:受動的学習(教科書を読むだけ) → 記憶の定着は限定的
右側:能動的学習(思い出そうとする) → 記憶の定着が飛躍的にアップ

🔴 記憶は「入力」ではなく「出力」によって強化される。

Ankiなどのテスト形式の学習ツールは、まさにこの能動的想起(Active Recall)の原理を活かした方法であり、記憶の強化に極めて効果的です。

– 複数の感覚を使うと、記憶はもっと強くなる

画像

マルチモーダル学習による記憶定着の向上

記憶をより深く、強く定着させるには、視覚だけに頼るのではなく、複数の感覚を同時に使う「マルチモーダル学習」が効果的です。

  • 👁 視覚情報:文字・図を見て学ぶ

  • 👂 聴覚情報:音声を聞いて学ぶ

  • 触覚情報:実際に身体に触れ、感覚を伴って学ぶ

これらの異なる感覚情報が脳内で統合されることで、記憶のネットワークが多層的に構築され、忘れにくくなるのです。

特に経穴の学習においては、
「見る」+「聴く」+「触れる」という三感覚の連携が極めて有効。

🔷 マルチモーダル学習で、記憶が深く刻まれる。
→ 経穴の学習には「見る」「聴く」「触れる」が鍵。

– 二重符号化理論 – 記憶のバックアップを作る

画像

二重符号化理論(Dual-Coding Theory)
― 記憶のバックアップを作る学び方 ―

学習した情報を視覚(文字·図)と聴覚(音声)の2つの経路で同時に取り入れることで、記憶の定着が強化されるという理論が「二重符号化理論(Dual-Coding Theory)」です。

👁 視覚情報(文字・図)
👂 聴覚情報(音声)

これらは脳内で別々のチャンネルとして処理·保存されるため、どちらか一方の記憶が弱まっても、もう一方から補完され、思い出しやすくなるという利点があります。

たとえば、音を忘れても文字を見れば思い出せる。
または、文字を忘れても音を聞けば思い出せる。

📌 文字と音声の両方で学ぶことで、記憶が二重に保存される。
つまり、記憶にバックアップが作られるような状態が生まれ、忘れにくくなるのです。

– 声に出して覚えると、記憶はもっと深く残る

画像

― 生成効果(Production Effect)とは ―

単に「読む」「聞く」といった受動的な学習に比べて、自分の声で情報を発する=生成する(能動的学習)ことで、記憶の定着率は大幅に向上します。

この現象は、生成効果(Production Effect)と呼ばれ、心理学的にも広く研究されています。

📖👂 読む·聞く(受動的)
→ 情報は一方的に入力されるが、記憶への定着は弱い。
🗣🧠 声に出す(能動的)
→ 自らの言葉で発することで、脳内の記憶回路が活性化。
→ 記憶の痕跡が強く、深く刻まれる。

このように、音読やシャドーイングのような声に出す学習は、
単なる受け身の学習を超えて、脳に「刻み込む」記憶法へと変わります。

🔷 声に出す(=情報を生成する)ことが、記憶を深く定着させる鍵。

– 声に出すことは、優れた運動感覚学習となる
〜 シャドーイングは脳と身体をフルに使う記憶術 〜

画像

シャドーイングとは、聞いた音声をすぐに繰り返して発音する学習法です。

この方法には、単なる「耳で聞く学習」を超えた、運動感覚学習(Kinesthetic Learning)の効果があります。

なぜ記憶が深くなるのか?

  1. 発声(motor)
    → 口や喉などの運動器官を使い、声に出して情報を「体で再現」。

  2. 聴覚モニタリング(sensory)
    → 自分の発した声が耳から入り、自分の聴覚を再び刺激。

  3. 脳内でのフィードバック修正
    → 発声→聴取→修正のサイクルが脳内で繰り返されることで、運動感覚と知覚の統合が起こり、記憶がより強固になります。

  4. 体性感覚の追加モダリティ
    → 経穴名などの抽象的な情報が、「自分の声を出した感覚」と結びつき、身体に刻まれる。

•  目で見て、耳で聴いて、口で言う
• 「口が覚えている」=身体で覚えている

🔷 シャドーイングは、脳と身体を統合して使う、最強の記憶術。
抽象知識を身体的な感覚とつなげることで、記憶は格段に深まります。

Ankiを最大限に活かす鍵は、カードの“質”にある
― 効果的な学習のためには、高品質なカードが必要 ―

画像

Ankiは非常に優れた学習ツールですが、本当に効果を発揮するには「カードの質」が重要です。

しかし、多くの人にとって
「一から効果的なカードを作ること」は膨大な時間と労力がかかる大きなハードルです。

そこで登場するのが、「⭐️経穴リスニング暗記帳⭐️」です。

  • ✅ 認知科学に基づいた設計
    → 科学的な学習原理(分散学習·生成効果·二重符号化理論など)をフル活用。

  • ✅ 学習効率を最大化
    → カードの構造や音声設計が、学習を自然に促進。

  • ✅ “すぐに始められる高品質”
    → 手間のかかる初期設定は不要。Ankiに取り込むだけで、今日から記憶定着の効果を実感できます。

Ankiは「道具」、でも記憶に残すのは「カードの質」
質の高いカードが、あなたの学びを加速させる。
この「経穴リスニング暗記帳」は、まさにその“質の壁”を乗り越えるために設計された、すぐに使えるプロ仕様のAnkiデッキです。

画像
⭐️経穴リスニング暗記帳⭐️を詳しく見る
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

目次