論文紹介:The efficacy and neural mechanism of acupuncture therapy in the treatment of visceral hypersensitivity in irritable bowel syndrome「過敏性腸症候群における内臓過敏症治療に対する鍼治療の有効性と神経メカニズム」

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引用論文

Yang, Y., Wang, J., Zhang, C., Guo, Y., Zhao, M., Zhang, M., Li, Z., Gao, F., Luo, Y., Wang, Y., Cao, J., Du, M., Wang, Y., Lin, X., & Xu, Z. (2023). The efficacy and neural mechanism of acupuncture therapy in the treatment of visceral hypersensitivity in irritable bowel syndrome. Frontiers in Neuroscience, 17, 1251470. https://doi.org/10.3389/fnins.2023.1251470 

The efficacy and neural mechanism of acupuncture therapy in the treatment of visceral hypersensitivity in irritable bowel syndrome
「過敏性腸症候群における内臓過敏症治療に対する鍼治療の有効性と神経メカニズム」

研究目的

過敏性腸症候群(IBS)は慢性的な腹痛・膨満感・排便習慣異常を呈する機能性腸疾患で,なかでも内臓過敏性(Visceral Hypersensitivity; VH)が慢性腹痛の主因とされる.既存の内服薬ではVH進行を完全に抑制できないため,非薬物代替療法としての鍼治療の有効性と神経メカニズムの解明が望まれている.本研究は,IBSモデル動物を対象に電気鍼(EA),手技鍼(ACU/MA),灸(MM/SM),レーザー刺激(LM/GPM)など多様な鍼灸介入がVHを軽減する末梢・中枢メカニズムを体系的にレビューし,現行エビデンスを整理することを目的とした 

検索方法と文献選定

PubMedおよびWeb of Scienceを用い,2003年1月〜2023年2月までに発表された「irritable bowel syndrome」「mucinous colitis」等疾患関連語と「acupuncture therapy」「electroacupuncture」「moxibustion」「laser needle」等治療法関連語を検索し,計690件を抽出.重複・抄録欠如・撤回論文を除外後,113件の基礎実験研究を精査し,全文入手可能かつVHメカニズム評価指標を含む68件を最終選定した.選定論文の介入手法,刺激パラメータ,行動学的・薬理学的評価指標(AWRスコア,糞便水分量,痛覚閾値,伝達物質発現など)を二重抽出し,表1にまとめた 

鍼治療の介入手法と使用経穴の概要

68報の動物実験では,主に以下の経穴が多用された(複数併用あり).

  • 天枢 (ST25): 腹部反応量(AWR)や糞便水分量の改善指標に最も頻出 

  • 足三里 (ST36): 消化管運動調節と神経栄養因子調整(NGF, BDNF)の指標に使用 

  • 上巨虚 (ST37): 腹腔内圧閾値および収縮反応の改善に多用 

  • 三陰交 (SP6), 太衝 (LR3): 自律神経バランス回復と痛覚閾値上昇に寄与 

  • 大腸兪 (BL25), 中脘 (CV12/RN12), 合谷 (LI4), 内関 (PC6), 印堂 (DU29): 選択的研究で用いられ,腸管感覚終末や前帯状回(ACC)での神経応答を評価 

末梢レベルにおける鎮痛メカニズム

IBSモデル動物の末梢腸管感覚終末では,5-HT合成酵素(TPH)と5-HT3受容体(5-HT3R)の発現上昇,セロトニントランスポーター(SERT)低下によりVHが増強される.鍼治療はこれらを抑制すると同時に,5-HT4受容体(5-HT4R)の発現を増加させ,炎症抑制と痛覚閾値上昇をもたらす.さらに,NGF/TrkA,BDNF/TrkBの抑制,TRPV1チャネル遮断,腸管グリア細胞(enteric glia)によるSP・CGRP分泌抑制などにより末梢感作が緩和される 

中枢レベルにおける鎮痛メカニズム

末梢から伝達された異常痛覚信号は脊髄後角および前帯状回(ACC)で中枢感作を引き起こす.鍼刺激はNMDA受容体チャネル(NR1, NR2サブユニット)のリン酸化抑制および内因性オピオイド(エンケファリン, ダイノルフィン, オーファニン)分泌増加を介し痛覚伝達を遮断する.さらに,グリア細胞P2X7受容体およびプロキネティン(PK1/PKR1, PK2/PKR2)経路の抑制により中枢グリア細胞活性化を阻害し,慢性痛の維持を防ぐ 

感情成分とHPA軸調節の関与

IBS患者では不安・抑うつがVHを悪化させる因子として知られる.鍼刺激は視床下部-下垂体-副腎(HPA)軸関連ホルモン(CRH, ACTH, コルチコステロン)およびGABA, ドーパミン, セロトニンなどの中枢伝達物質を介してストレス応答を正常化し,ACC, 扁桃体, 前島皮質といった脳部位でのVH知覚・認知を抑制したとの報告がある 

臨床への示唆と今後の展望

動物実験による詳細メカニズムの解明は,IBS患者への鍼治療プロトコール設計に貴重な指針を与える.例えば,天枢+足三里+三陰交の併用は炎症抑制,自律神経調整,腸管運動促進を同時に達成し得る.今後は,ランダム化比較試験(RCT)における生体力学的評価(筋硬度計測,皮膚電気反応など)や機能的画像検査(fMRI, NIRS)との併用によるトランスレーショナル研究を進め,ヒト臨床応用の質的向上を図る必要がある 

今後の研究課題

動物モデルとヒト臨床の評価指標ギャップ,経穴刺激パラメータの最適化,長期フォローアップ研究の不足が課題である.動物実験で得られた神経・薬理学的指標を,ヒトへの臨床バイオマーカー(血中CGRP,炎症マーカーなど)として活用し,個別化医療への展開を目指すことが期待される 

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このAnkiデッキは、単なるデジタル単語帳ではありません。忙しい社会人学生が経穴を効率良く覚えるために認知科学と教育工学の科学的な知見を基盤としています。

– 経穴リスニング暗記帳の特徴

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  1. Ankiの自動復習機能(分散学習):科学的に証明された分散学習システム(SRS)による効率的な記憶の定着。

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  3. シャドーイングの実践:音声を聞きながら即座に復唱することで、記憶を能動的に深く刻み込む学習法。

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経穴の学習は、その専門的で複雑な名称、身体上の正確な位置、そして要穴といった膨大な情報を正確に記憶する必要があります。
記憶に定着させるには、何度も復習することが大切です。Ankiはその優れた自動復習機能で、あなたの効率的な記憶をサポートしてくれます。

– 音声でひろがる、新しい学びのかたち

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「経穴リスニング暗記帳」は、すべてのカードに音声がついたAnki用の学習ツール

  • 音声によって、視覚だけでなく聴覚も同時に刺激され、記憶が深まります(マルチモーダル学習)。

  • 経穴名を聴きながらその場で復唱することで、シャドーイング学習が可能に。

  • 歩きながらの学習にも対応し、通勤・通学時間も学習時間に変わります。

  • 視覚障害のある方にも利用可能で、アクセシビリティにも配慮。

そして、この暗記帳にはAnkiの最大の特長である
「分散学習(Spaced Repetition)」の効果も加わります。

忘却曲線に基づいて復習タイミングが自動で最適化され、
“見る+聴く+話す”の三感覚刺激により、記憶はさらに深く、確実に定着します。

■ 何故、Ankiは学習効率が高いのか

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ここでは、Ankiのシステムを使った「経穴リスニング暗記帳」が何故、学習効率が高いのかについて説明いたします。

– Ankiによる自動復習機能(分散学習)

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忘れる前に、Ankiが思い出させてくれる。

Ankiは、記憶の心理学的メカニズム――特にエビングハウスの忘却曲線の研究に基づき、「最適な復習タイミング」を自動で提示するシステムを備えています。

これにより、学習内容を忘れかけた絶妙なタイミングで再提示し、記憶を強化。最終的には長期記憶として定着させることが可能です。

  1. 復習しないと忘却が進行
    → 時間とともに記憶は薄れていきます。

  2. Ankiが復習を促す
    → 忘れる前の最適なタイミングでカードが再提示されます。

  3. 記憶が強化される
    → 復習によって脳内ネットワークが再活性化され、記憶が深まります。

  4. 記憶が定着する
    → 繰り返しにより、長期的な知識として安定的に保持されます。

このような間隔反復(Spaced Repetition)の仕組みは、短期記憶のまま消えていくのを防ぎ、効率的で持続性のある学習を実現します。

🔺 最適な復習タイミングが、記憶の定着を飛躍的に高める。

– 能動的想起(テスト効果)による記憶の強化

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能動的想起(アクティブリコール)による記憶の強化

ただ教科書を読むだけの「受動的学習」では、情報はなかなか定着しません。
一方で、学んだ内容を自分の頭で思い出そうとする「能動的学習」では、記憶の定着率が格段に向上することが、数多くの心理学的研究で示されています。

この「思い出そうとする行為」そのものが脳内の記憶経路を再活性化し、情報へのアクセスを強化します。その結果、より強固で思い出しやすい記憶が形成されるのです。

左側:受動的学習(教科書を読むだけ) → 記憶の定着は限定的
右側:能動的学習(思い出そうとする) → 記憶の定着が飛躍的にアップ

🔴 記憶は「入力」ではなく「出力」によって強化される。

Ankiなどのテスト形式の学習ツールは、まさにこの能動的想起(Active Recall)の原理を活かした方法であり、記憶の強化に極めて効果的です。

– 複数の感覚を使うと、記憶はもっと強くなる

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マルチモーダル学習による記憶定着の向上

記憶をより深く、強く定着させるには、視覚だけに頼るのではなく、複数の感覚を同時に使う「マルチモーダル学習」が効果的です。

  • 👁 視覚情報:文字・図を見て学ぶ

  • 👂 聴覚情報:音声を聞いて学ぶ

  • 触覚情報:実際に身体に触れ、感覚を伴って学ぶ

これらの異なる感覚情報が脳内で統合されることで、記憶のネットワークが多層的に構築され、忘れにくくなるのです。

特に経穴の学習においては、
「見る」+「聴く」+「触れる」という三感覚の連携が極めて有効。

🔷 マルチモーダル学習で、記憶が深く刻まれる。
→ 経穴の学習には「見る」「聴く」「触れる」が鍵。

– 二重符号化理論 – 記憶のバックアップを作る

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二重符号化理論(Dual-Coding Theory)
― 記憶のバックアップを作る学び方 ―

学習した情報を視覚(文字·図)と聴覚(音声)の2つの経路で同時に取り入れることで、記憶の定着が強化されるという理論が「二重符号化理論(Dual-Coding Theory)」です。

👁 視覚情報(文字・図)
👂 聴覚情報(音声)

これらは脳内で別々のチャンネルとして処理·保存されるため、どちらか一方の記憶が弱まっても、もう一方から補完され、思い出しやすくなるという利点があります。

たとえば、音を忘れても文字を見れば思い出せる。
または、文字を忘れても音を聞けば思い出せる。

📌 文字と音声の両方で学ぶことで、記憶が二重に保存される。
つまり、記憶にバックアップが作られるような状態が生まれ、忘れにくくなるのです。

– 声に出して覚えると、記憶はもっと深く残る

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― 生成効果(Production Effect)とは ―

単に「読む」「聞く」といった受動的な学習に比べて、自分の声で情報を発する=生成する(能動的学習)ことで、記憶の定着率は大幅に向上します。

この現象は、生成効果(Production Effect)と呼ばれ、心理学的にも広く研究されています。

📖👂 読む·聞く(受動的)
→ 情報は一方的に入力されるが、記憶への定着は弱い。
🗣🧠 声に出す(能動的)
→ 自らの言葉で発することで、脳内の記憶回路が活性化。
→ 記憶の痕跡が強く、深く刻まれる。

このように、音読やシャドーイングのような声に出す学習は、
単なる受け身の学習を超えて、脳に「刻み込む」記憶法へと変わります。

🔷 声に出す(=情報を生成する)ことが、記憶を深く定着させる鍵。

– 声に出すことは、優れた運動感覚学習となる
〜 シャドーイングは脳と身体をフルに使う記憶術 〜

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シャドーイングとは、聞いた音声をすぐに繰り返して発音する学習法です。

この方法には、単なる「耳で聞く学習」を超えた、運動感覚学習(Kinesthetic Learning)の効果があります。

なぜ記憶が深くなるのか?

  1. 発声(motor)
    → 口や喉などの運動器官を使い、声に出して情報を「体で再現」。

  2. 聴覚モニタリング(sensory)
    → 自分の発した声が耳から入り、自分の聴覚を再び刺激。

  3. 脳内でのフィードバック修正
    → 発声→聴取→修正のサイクルが脳内で繰り返されることで、運動感覚と知覚の統合が起こり、記憶がより強固になります。

  4. 体性感覚の追加モダリティ
    → 経穴名などの抽象的な情報が、「自分の声を出した感覚」と結びつき、身体に刻まれる。

•  目で見て、耳で聴いて、口で言う
• 「口が覚えている」=身体で覚えている

🔷 シャドーイングは、脳と身体を統合して使う、最強の記憶術。
抽象知識を身体的な感覚とつなげることで、記憶は格段に深まります。

Ankiを最大限に活かす鍵は、カードの“質”にある
― 効果的な学習のためには、高品質なカードが必要 ―

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Ankiは非常に優れた学習ツールですが、本当に効果を発揮するには「カードの質」が重要です。

しかし、多くの人にとって
「一から効果的なカードを作ること」は膨大な時間と労力がかかる大きなハードルです。

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  • ✅ 認知科学に基づいた設計
    → 科学的な学習原理(分散学習·生成効果·二重符号化理論など)をフル活用。

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  • ✅ “すぐに始められる高品質”
    → 手間のかかる初期設定は不要。Ankiに取り込むだけで、今日から記憶定着の効果を実感できます。

Ankiは「道具」、でも記憶に残すのは「カードの質」
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