論文紹介:Effects of moxibustion at “Xinshu” (BL15) and “Feishu” (BL13) on myocardial transferrin receptor 1 and ferroptosis suppressor protein 1 in chronic heart failure rats「慢性心不全ラットにおける「心兪」(BL15)および「肺俞」(BL13)への灸法が心筋トランスフェリン受容体1およびフェロトーシス抑制タンパク質1に与える影響」

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引用論文

Gao, B., Liu, P., Li, L., Gong, T., Zhu, L., Li, L., Xia, R., & Wang, J. (2025). Effects of moxibustion at “Xinshu” (BL15) and “Feishu” (BL13) on myocardial transferrin receptor 1 and ferroptosis suppressor protein 1 in chronic heart failure rats. Zhongguo Zhen Jiu, 45(6), 781–790. https://doi.org/10.13703/j.0255-2930.20240417-k0005 


Effects of moxibustion at “Xinshu” (BL15) and “Feishu” (BL13) on myocardial transferrin receptor 1 and ferroptosis suppressor protein 1 in chronic heart failure rats
「慢性心不全ラットにおける「心兪」(BL15)および「肺俞」(BL13)への灸法が心筋トランスフェリン受容体1およびフェロトーシス抑制タンパク質1に与える影響」

1. 研究背景

慢性心不全(CHF)は、心筋のリモデリングと線維化が進行し、心収縮能の低下を伴う疾患である。近年、心筋細胞の鉄代謝異常とフェロトーシス(鉄依存性細胞死)がCHFの進展に深く関与することが示唆されている。特に、心筋トランスフェリン受容体1(TfR1)の発現亢進や、フェロトーシス抑制タンパク質1(FSP1)の発現低下は、鉄過負荷と細胞死を促進し、線維化を悪化させるメカニズムと考えられている。一方、鍼灸の灸法(moxibustion)は古典的に循環器機能改善や線維化抑制を目的として用いられてきたが、その分子機序は未だ十分に解明されていない。本研究は、慢性心不全ラットモデルにおいて、BL 15(心兪)およびBL 13(肺俞)への灸法が心筋のTfR1およびFSP1発現に及ぼす影響を評価し、灸法による鉄代謝・フェロトーシス制御機序を解析することを目的とした 

2. 研究方法

被験者:Sprague–Dawleyラット50匹を用い、正常群(n=10)とモデリング群(n=40)に分けた。

CHFモデル作製:モデリング群では左前下行枝の結紮により心筋梗塞性心不全モデルを作製し、成功後に以下の4群に無作為割付した。

  • モデル群(n=9)

  • 灸法群(n=8)

  • ラパマイシン(RAPA)群(n=9)

  • 灸法+RAPA群(n=9)

介入

  • 灸法群では、両側BL 13およびBL 15に対し、各部位15分間、1日1回、4週間連続で艾条灸(mild moxibustion)を施行。

  • RAPA群では1 mg/kgのラパマイシンを腹腔内投与(1日1回・4週間)。

  • 灸法+RAPA群では灸法後に同量のラパマイシン投与 

評価項目

  1. 心機能指標:駆出率(EF)および心室短縮率(FS)

  2. 心筋組織学:HE染色・Masson染色による線維化評価

  3. 鉄含有量:心筋組織の総鉄量(比色法)

  4. 分子発現:TfR1、FSP1、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)、CollagenⅠのタンパク質およびmRNA発現量(Western blot・qPCR) 

3. 使用経穴

  • BL 15(心兪/Xinshu):第5胸椎棘突起下縁外方1.5寸に位置し、心機能調整・精神安定に用いられる背兪穴。

  • BL 13(肺俞/Feishu):第3胸椎棘突起下縁外方1.5寸に位置し、呼吸器機能・免疫調整に用いられる背兪穴。

4. 主な結果

  1. 心機能改善

    • 灸法群はモデル群に比べてEFおよびFSが有意に上昇し(P<0.01)、心収縮能の改善を示した。

  2. 線維化抑制

    • Masson染色で灸法群はコラーゲン沈着量が大幅に低下し(P<0.01)、心筋線維化の抑制が確認された。

  3. 鉄代謝調整

    • モデル群では心筋鉄含有量およびTfR1発現が上昇し、FSP1発現が低下していたが、灸法群ではこれらが正常群に近い水準まで改善した(P<0.01)。

  4. 分子マーカー

    • 灸法群はTfR1タンパク質・mRNAとANP、CollagenⅠの発現が有意に低下し、FSP1発現が有意に上昇した(P<0.01)。

  5. 併用効果

    • 灸法+RAPA群と比べても、単独の灸法群で最も顕著な改善が見られ、灸法単独の効果がラパマイシン併用を凌駕する傾向が示唆された 

5. 考察

本研究により、BL 15およびBL 13への灸法がCHFラットにおける心筋線維化を緩和し、心機能を改善することが示された。特に、鉄代謝関連分子の制御を介したフェロトーシス抑制が主要作用機序と考えられる。すなわち、灸法によりTfR1の過剰発現を抑え、鉄過負荷を軽減すると同時に、FSP1を賦活化してフェロトーシス抑制機構を強化することで、心筋細胞死と線維化進展を抑制するものと推察される 

臨床的には、CHF患者に対する灸法の補助療法として、従来の薬物治療と併用することで心機能維持・QOL向上が期待できる。また、BL 15・BL 13はベッドサイドでも簡便に施術可能な部位であり、安全性・経済性に優れる点も大きな利点である。

6. 限界と今後の展開

  • 動物モデルの限界:ラットモデルにおける結果であり、ヒト臨床への直接的な適用にはさらなる検証が必要。

  • 手技の標準化:灸法の深度・温度・時間などパラメータ最適化が未完。

  • 長期効果:4週間介入後の短期効果評価にとどまり、持続的改善や再発予防については未検討。

  • 分子機序の詳細:上流・下流シグナル伝達経路や他のフェロトーシス関連因子との相互作用解析が今後の課題。


本論文は、伝統的な灸法の作用機序を現代分子生物学的視点で解明した先駆的研究として評価される。

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ここでは、Ankiのシステムを使った「経穴リスニング暗記帳」が何故、学習効率が高いのかについて説明いたします。

– Ankiによる自動復習機能(分散学習)

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忘れる前に、Ankiが思い出させてくれる。

Ankiは、記憶の心理学的メカニズム――特にエビングハウスの忘却曲線の研究に基づき、「最適な復習タイミング」を自動で提示するシステムを備えています。

これにより、学習内容を忘れかけた絶妙なタイミングで再提示し、記憶を強化。最終的には長期記憶として定着させることが可能です。

  1. 復習しないと忘却が進行
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  2. Ankiが復習を促す
    → 忘れる前の最適なタイミングでカードが再提示されます。

  3. 記憶が強化される
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このような間隔反復(Spaced Repetition)の仕組みは、短期記憶のまま消えていくのを防ぎ、効率的で持続性のある学習を実現します。

🔺 最適な復習タイミングが、記憶の定着を飛躍的に高める。

– 能動的想起(テスト効果)による記憶の強化

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能動的想起(アクティブリコール)による記憶の強化

ただ教科書を読むだけの「受動的学習」では、情報はなかなか定着しません。
一方で、学んだ内容を自分の頭で思い出そうとする「能動的学習」では、記憶の定着率が格段に向上することが、数多くの心理学的研究で示されています。

この「思い出そうとする行為」そのものが脳内の記憶経路を再活性化し、情報へのアクセスを強化します。その結果、より強固で思い出しやすい記憶が形成されるのです。

左側:受動的学習(教科書を読むだけ) → 記憶の定着は限定的
右側:能動的学習(思い出そうとする) → 記憶の定着が飛躍的にアップ

🔴 記憶は「入力」ではなく「出力」によって強化される。

Ankiなどのテスト形式の学習ツールは、まさにこの能動的想起(Active Recall)の原理を活かした方法であり、記憶の強化に極めて効果的です。

– 複数の感覚を使うと、記憶はもっと強くなる

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マルチモーダル学習による記憶定着の向上

記憶をより深く、強く定着させるには、視覚だけに頼るのではなく、複数の感覚を同時に使う「マルチモーダル学習」が効果的です。

  • 👁 視覚情報:文字・図を見て学ぶ

  • 👂 聴覚情報:音声を聞いて学ぶ

  • 触覚情報:実際に身体に触れ、感覚を伴って学ぶ

これらの異なる感覚情報が脳内で統合されることで、記憶のネットワークが多層的に構築され、忘れにくくなるのです。

特に経穴の学習においては、
「見る」+「聴く」+「触れる」という三感覚の連携が極めて有効。

🔷 マルチモーダル学習で、記憶が深く刻まれる。
→ 経穴の学習には「見る」「聴く」「触れる」が鍵。

– 二重符号化理論 – 記憶のバックアップを作る

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二重符号化理論(Dual-Coding Theory)
― 記憶のバックアップを作る学び方 ―

学習した情報を視覚(文字·図)と聴覚(音声)の2つの経路で同時に取り入れることで、記憶の定着が強化されるという理論が「二重符号化理論(Dual-Coding Theory)」です。

👁 視覚情報(文字・図)
👂 聴覚情報(音声)

これらは脳内で別々のチャンネルとして処理·保存されるため、どちらか一方の記憶が弱まっても、もう一方から補完され、思い出しやすくなるという利点があります。

たとえば、音を忘れても文字を見れば思い出せる。
または、文字を忘れても音を聞けば思い出せる。

📌 文字と音声の両方で学ぶことで、記憶が二重に保存される。
つまり、記憶にバックアップが作られるような状態が生まれ、忘れにくくなるのです。

– 声に出して覚えると、記憶はもっと深く残る

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― 生成効果(Production Effect)とは ―

単に「読む」「聞く」といった受動的な学習に比べて、自分の声で情報を発する=生成する(能動的学習)ことで、記憶の定着率は大幅に向上します。

この現象は、生成効果(Production Effect)と呼ばれ、心理学的にも広く研究されています。

📖👂 読む·聞く(受動的)
→ 情報は一方的に入力されるが、記憶への定着は弱い。
🗣🧠 声に出す(能動的)
→ 自らの言葉で発することで、脳内の記憶回路が活性化。
→ 記憶の痕跡が強く、深く刻まれる。

このように、音読やシャドーイングのような声に出す学習は、
単なる受け身の学習を超えて、脳に「刻み込む」記憶法へと変わります。

🔷 声に出す(=情報を生成する)ことが、記憶を深く定着させる鍵。

– 声に出すことは、優れた運動感覚学習となる
〜 シャドーイングは脳と身体をフルに使う記憶術 〜

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シャドーイングとは、聞いた音声をすぐに繰り返して発音する学習法です。

この方法には、単なる「耳で聞く学習」を超えた、運動感覚学習(Kinesthetic Learning)の効果があります。

なぜ記憶が深くなるのか?

  1. 発声(motor)
    → 口や喉などの運動器官を使い、声に出して情報を「体で再現」。

  2. 聴覚モニタリング(sensory)
    → 自分の発した声が耳から入り、自分の聴覚を再び刺激。

  3. 脳内でのフィードバック修正
    → 発声→聴取→修正のサイクルが脳内で繰り返されることで、運動感覚と知覚の統合が起こり、記憶がより強固になります。

  4. 体性感覚の追加モダリティ
    → 経穴名などの抽象的な情報が、「自分の声を出した感覚」と結びつき、身体に刻まれる。

•  目で見て、耳で聴いて、口で言う
• 「口が覚えている」=身体で覚えている

🔷 シャドーイングは、脳と身体を統合して使う、最強の記憶術。
抽象知識を身体的な感覚とつなげることで、記憶は格段に深まります。

Ankiを最大限に活かす鍵は、カードの“質”にある
― 効果的な学習のためには、高品質なカードが必要 ―

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Ankiは非常に優れた学習ツールですが、本当に効果を発揮するには「カードの質」が重要です。

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