引用論文
Electroacupuncture versus solifenacin succinate for female overactive bladder: study protocol for a multicentre, randomised, controlled, double-dummy, non-inferiority trial
「女性過活動膀胱に対する電気鍼療法とソリフェナシンザクシネートの比較:多施設ランダム化二重ダミー非劣性試験プロトコール」
背景
過活動膀胱(OAB)は、感染や器質的異常を伴わずに「尿意切迫感」「頻尿」「夜間頻尿」を主症状とし、500万人単位で有病率が報告される疾患です。女性に多く、高齢化や閉経後に増悪傾向を示し、QOLを著しく低下させる要因となります。第一選択として行動療法や抗ムスカリン薬(ソリフェナシン等)が用いられますが、服薬継続率は20%以下にとどまり、副作用(口渇・便秘・視覚障害など)も少なくありません。このため、薬物療法の非劣性代替として神経調節を介した鍼治療、特に電気鍼(EA)の有用性が注目されていますが、高品質な臨床エビデンスは限られています 。
目的
本研究は、女性OAB患者において、電気鍼療法がソリフェナシンザクシネートと比較して非劣性であるかを評価することを主要目的とします。また、安全性と忍容性、長期フォローにおける症状改善の持続性も検証し、非薬物療法としての臨床的有用性を明らかにすることを目指します 。
試験デザイン
多施設共同、単盲検、二重ダミー非劣性ランダム化比較試験として設計され、上海中医薬大学附属龍華病院など3施設で実施されます。204名の女性OAB患者を1︰1で電気鍼群またはソリフェナシン群に割り付け、治療期間を4週間、その後12週間のフォローアップとします。被験者以外は盲検化され、専門研究者による乱数表生成と不透明封筒による割り付けが行われます 。
対象者
対象は18~75歳の女性OAB患者で、AUAおよび中国泌尿器学会の基準を満たし、症状継続3か月以上、OABSS 3~11点の者。排尿検査異常や過去に鍼治療歴のある者、心肝腎疾患、骨盤臓器脱、尿路手術歴、妊娠・授乳中などの者は除外されます 。
介入内容
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電気鍼群:12回(週3回×4週)の電気鍼を施行。交互にA群(CV3、中極/KI12、大赫/ST28、水道/SP6、三陰交)とB群(BL23、腎兪/BL32、次髎/BL29、中膂兪/BL35、会陽/BL40、委中)の経穴を用い、SDZ-V電気刺激装置で30Hz、1.0~5.0mAをBL32–BL35およびKI12–ST28に通電。全穴で得気誘発の後、保持時間30分間操作(挙転捻転等)を行います 。
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ソリフェナシン群:5mg/日を4週間経口投与し、同時に偽電気鍼(非挿入デバイス)を同経穴に施行。薬物と偽鍼のパッケージは視覚的に同一化し、二重ダミーとしています 。
評価項目
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主要アウトカム:ベースラインから治療4週後までの24時間排尿回数変化率。
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副次アウトカム:治療2週・8週・16週時点の排尿回数変化率、OAB症状スコア(OABSS)、3日間排尿日誌に基づく失禁・尿意切迫回数、Overactive Bladder Questionnaire、GAD-7、King’s Health Questionnaire、被験者自己評価。有害事象は治療期間中随時モニタリングします 。
統計解析
ITT解析およびPPS解析で非劣性マージンを設定し、混合モデル等で群間比較を行います。信頼区間が事前設定のマージン内であれば非劣性を示すものとします。盲検評価と独立した第三者統計解析により結果の信頼性を担保します 。
倫理および臨床意義
倫理委員会承認(2022LCSY097)を得ており、参加同意書取得後に開始されます。電気鍼がソリフェナシンに非劣性かつ副作用軽減を示せば、OAB治療における非薬物オプションとして実臨床での導入が期待されます 。
強み・限界
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強み:二重ダミー・単盲検設計、多施設共同、大サンプルサイズによる信頼性担保。
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限界:鍼師の盲検化困難、長期持続効果不明、フォローアップ16週までに限定 。
使用経穴
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Group A
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CV3(中極)
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KI12(大赫)
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ST28(水道)
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SP6(三陰交)
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Group B
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BL23(腎兪)
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BL32(次髎)
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BL29(中膂兪)
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BL35(会陽)
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BL40(委中)
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