論文紹介:Neurophysiologic Basis of Back-Shu and Huatuo-Jiaji Points「背部兪穴および華佗夾脊穴の神経生理学的基盤」

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引用論文

Cabioglu, M. T., & Arslan, G. (2008). Neurophysiologic Basis of Back-Shu and Huatuo-Jiaji Points. The American Journal of Chinese Medicine, 36(3), 473–479. 

Neurophysiologic Basis of Back-Shu and Huatuo-Jiaji Points
「背部兪穴および華佗夾脊穴の神経生理学的基盤」

背景

背部兪穴(Back-Shu points)は、膀胱経上に督脈から外方1.5寸の位置にとり、それぞれの臓器と同一神経節レベルに対応するとされる経穴群です。一方、華佗夾脊穴(Huatuo-Jiaji points)は、第1胸椎から第5腰椎の棘突起下縁外方0.5寸に左右各17穴、計34穴が分布し、主に脊髄神経を介した多様な反射機序を利用します。本論文は、これらの経穴が自律神経系(交感神経・副交感神経)にどのように作用し、臓器機能を調節するかを解明することを目的とした基礎研究です 

自律神経系の求心性・遠心性神経分布

交感神経前髄心細胞は胸髄節(T1~L3)に起始し、傍脊椎神経節を経て臓器へ走行します。副交感神経は延髄核や仙髄S2~S4に起始し、迷走神経や骨盤神経を介して臓器に分布します。これらの神経線維は脊髄後角で入力・出力がクロスし、皮膚・筋・臓器間で多重の神経反射が成立します 

背部兪穴の解剖学的位置と臓器反射

各背部兪穴は、対応臓器と同レベルの椎体横に位置し、刺激により皮膚-臓器間の神経反射(皮臓反射)を誘発します。例えば、肺兪(UB13)への鍼刺激は気管支拡張を促し、心兪(UB15)は心拍調節、胃兪(UB21)は胃腸運動亢進、腎兪(UB23)は膀胱収縮抑制など、多様な生理応答を示します 

華佗夾脊穴の特徴

華佗夾脊穴は、棘突起下縁外方0.5寸に沿う細線維を直接刺激できるため、深い刺絡や電気鍼が容易です。背部兪穴より浅い刺入で安全性が高く、同層多点同時刺激による中枢性下行性抑制や側副神経回路の賦活が期待できます 

神経反射機序の分類

  1. 皮臓(viscero-cutaneous)反射:臓器障害に伴い、対応する皮膚領域に過敏や圧痛が出現する現象です。逆に、その部位を鍼刺激することで臓器機能が調整されます 

  2. 皮臓(cutaneous-visceral)反射:皮膚刺激が脊髄後角を介して自律神経出力に影響し、臓器運動や分泌を変化させる機序です 

  3. 皮筋(cutaneous-muscular)反射:皮膚への刺鍼刺激が骨格筋緊張を変化させ、間接的に内臓圧迫・牽引を介して臓器機能を調節する可能性があります 

  4. 臓筋(viscero-muscular)反射:臓器からの知覚入力が脊髄反射を介して筋活動を変調し、その逆もまた成立する双方向性機序です 

背部兪穴と自律神経節の対応

本論文では、各臓器と対応する脊髄節レベルを示し、背部兪穴の位置が交感神経・副交感神経の入力・出力点と一致することを表形式で整理しています。たとえば、肺兪(UB13)はT3節、心兪(UB15)はT5節、腎兪(UB23)はL2節、膀胱兪(UB28)はS2節に該当し、臓器特異的反射が成立しやすいことが示されています 

臨床的意義

  1. 診断上の活用:臓器機能障害時に対応背部兪穴の圧痛をチェックすることで病態評価や経絡診断の補助となります。

  2. 治療プロトコールの標準化:各臓器疾患に対し、背部兪穴と華佗夾脊穴を併用することで多重の反射経路を活性化し、有効性を高める根拠が得られました。

  3. 安全性の向上:背部兪穴への深刺は危険を伴う場合があるため、華佗夾脊穴で代替的に浅刺・電気鍼を用いることで安全かつ効果的なアプローチが可能です 

今後の展望

  • 神経伝達物質解析:刺鍼後の髄液や血漿中エンドルフィン、セロトニンなどの変動を計測し、反射機序の分子レベルでの検証。

  • 機能的画像解析:fMRIやPETを用いた中枢神経活動の可視化により、反応部位と経穴位置の対応を詳細に評価。

  • 臨床試験:背部兪穴・華佗夾脊穴併用プロトコールによる多施設ランダム化比較試験を実施し、エビデンスを拡充。


使用経穴

  • 背部兪穴(Back-Shu Points)

    • UB13(肺兪)

    • UB14(厥陰兪)

    • UB15(心兪)

    • UB18(肝兪)

    • UB19(膽兪)

    • UB20(脾兪)

    • UB21(胃兪)

    • UB23(腎兪)

    • UB25(大腸兪)

    • UB27(小腸兪)

    • UB28(膀胱兪) 

  • 華佗夾脊穴(Huatuo-Jiaji Points)

    • T1~L5棘突起下外方0.5寸(左右各)

    • 対応臓器別主な対照レベル:

      • T3華佗夾脊穴(肺関連)

      • T4華佗夾脊穴(心包関連)

      • T5華佗夾脊穴(心関連)

      • T9華佗夾脊穴(肝関連)

      • T10華佗夾脊穴(胆関連)

      • T11華佗夾脊穴(脾関連)

      • T12華佗夾脊穴(胃関連)

      • L2華佗夾脊穴(腎関連)

      • L4華佗夾脊穴(大腸関連)

      • S1華佗夾脊穴(小腸関連)

      • S2華佗夾脊穴(膀胱関連) 

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■ 何故、Ankiは学習効率が高いのか

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ここでは、Ankiのシステムを使った「経穴リスニング暗記帳」が何故、学習効率が高いのかについて説明いたします。

– Ankiによる自動復習機能(分散学習)

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忘れる前に、Ankiが思い出させてくれる。

Ankiは、記憶の心理学的メカニズム――特にエビングハウスの忘却曲線の研究に基づき、「最適な復習タイミング」を自動で提示するシステムを備えています。

これにより、学習内容を忘れかけた絶妙なタイミングで再提示し、記憶を強化。最終的には長期記憶として定着させることが可能です。

  1. 復習しないと忘却が進行
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  2. Ankiが復習を促す
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  3. 記憶が強化される
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  4. 記憶が定着する
    → 繰り返しにより、長期的な知識として安定的に保持されます。

このような間隔反復(Spaced Repetition)の仕組みは、短期記憶のまま消えていくのを防ぎ、効率的で持続性のある学習を実現します。

🔺 最適な復習タイミングが、記憶の定着を飛躍的に高める。

– 能動的想起(テスト効果)による記憶の強化

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能動的想起(アクティブリコール)による記憶の強化

ただ教科書を読むだけの「受動的学習」では、情報はなかなか定着しません。
一方で、学んだ内容を自分の頭で思い出そうとする「能動的学習」では、記憶の定着率が格段に向上することが、数多くの心理学的研究で示されています。

この「思い出そうとする行為」そのものが脳内の記憶経路を再活性化し、情報へのアクセスを強化します。その結果、より強固で思い出しやすい記憶が形成されるのです。

左側:受動的学習(教科書を読むだけ) → 記憶の定着は限定的
右側:能動的学習(思い出そうとする) → 記憶の定着が飛躍的にアップ

🔴 記憶は「入力」ではなく「出力」によって強化される。

Ankiなどのテスト形式の学習ツールは、まさにこの能動的想起(Active Recall)の原理を活かした方法であり、記憶の強化に極めて効果的です。

– 複数の感覚を使うと、記憶はもっと強くなる

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マルチモーダル学習による記憶定着の向上

記憶をより深く、強く定着させるには、視覚だけに頼るのではなく、複数の感覚を同時に使う「マルチモーダル学習」が効果的です。

  • 👁 視覚情報:文字・図を見て学ぶ

  • 👂 聴覚情報:音声を聞いて学ぶ

  • 触覚情報:実際に身体に触れ、感覚を伴って学ぶ

これらの異なる感覚情報が脳内で統合されることで、記憶のネットワークが多層的に構築され、忘れにくくなるのです。

特に経穴の学習においては、
「見る」+「聴く」+「触れる」という三感覚の連携が極めて有効。

🔷 マルチモーダル学習で、記憶が深く刻まれる。
→ 経穴の学習には「見る」「聴く」「触れる」が鍵。

– 二重符号化理論 – 記憶のバックアップを作る

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二重符号化理論(Dual-Coding Theory)
― 記憶のバックアップを作る学び方 ―

学習した情報を視覚(文字·図)と聴覚(音声)の2つの経路で同時に取り入れることで、記憶の定着が強化されるという理論が「二重符号化理論(Dual-Coding Theory)」です。

👁 視覚情報(文字・図)
👂 聴覚情報(音声)

これらは脳内で別々のチャンネルとして処理·保存されるため、どちらか一方の記憶が弱まっても、もう一方から補完され、思い出しやすくなるという利点があります。

たとえば、音を忘れても文字を見れば思い出せる。
または、文字を忘れても音を聞けば思い出せる。

📌 文字と音声の両方で学ぶことで、記憶が二重に保存される。
つまり、記憶にバックアップが作られるような状態が生まれ、忘れにくくなるのです。

– 声に出して覚えると、記憶はもっと深く残る

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― 生成効果(Production Effect)とは ―

単に「読む」「聞く」といった受動的な学習に比べて、自分の声で情報を発する=生成する(能動的学習)ことで、記憶の定着率は大幅に向上します。

この現象は、生成効果(Production Effect)と呼ばれ、心理学的にも広く研究されています。

📖👂 読む·聞く(受動的)
→ 情報は一方的に入力されるが、記憶への定着は弱い。
🗣🧠 声に出す(能動的)
→ 自らの言葉で発することで、脳内の記憶回路が活性化。
→ 記憶の痕跡が強く、深く刻まれる。

このように、音読やシャドーイングのような声に出す学習は、
単なる受け身の学習を超えて、脳に「刻み込む」記憶法へと変わります。

🔷 声に出す(=情報を生成する)ことが、記憶を深く定着させる鍵。

– 声に出すことは、優れた運動感覚学習となる
〜 シャドーイングは脳と身体をフルに使う記憶術 〜

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シャドーイングとは、聞いた音声をすぐに繰り返して発音する学習法です。

この方法には、単なる「耳で聞く学習」を超えた、運動感覚学習(Kinesthetic Learning)の効果があります。

なぜ記憶が深くなるのか?

  1. 発声(motor)
    → 口や喉などの運動器官を使い、声に出して情報を「体で再現」。

  2. 聴覚モニタリング(sensory)
    → 自分の発した声が耳から入り、自分の聴覚を再び刺激。

  3. 脳内でのフィードバック修正
    → 発声→聴取→修正のサイクルが脳内で繰り返されることで、運動感覚と知覚の統合が起こり、記憶がより強固になります。

  4. 体性感覚の追加モダリティ
    → 経穴名などの抽象的な情報が、「自分の声を出した感覚」と結びつき、身体に刻まれる。

•  目で見て、耳で聴いて、口で言う
• 「口が覚えている」=身体で覚えている

🔷 シャドーイングは、脳と身体を統合して使う、最強の記憶術。
抽象知識を身体的な感覚とつなげることで、記憶は格段に深まります。

Ankiを最大限に活かす鍵は、カードの“質”にある
― 効果的な学習のためには、高品質なカードが必要 ―

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