論文紹介:Exploratory Study of Biomechanical Properties and Pain Sensitivity at Back-Shu Points「背募穴における生体力学的特性と痛み感受性の探索的研究」

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論文紹介:Exploratory Study of Biomechanical Properties and Pain Sensitivity at Back-Shu Points「背募穴における生体力学的特性と痛み感受性の探索的研究」

引用論文

Moon, H., Lee, S., Yoon, D.-E., Lee, I.-S., & Chae, Y. (2024). Exploratory study of biomechanical properties and pain sensitivity at back-shu points. Brain Sciences, 14(8), 823. https://doi.org/10.3390/brainsci14080823

論文紹介:Exploratory Study of Biomechanical Properties and Pain Sensitivity at Back-Shu Points「背募穴における生体力学的特性と痛み感受性の探索的研究」

概要

本研究は、健康な成人を対象に、内臓に対応する五つの背募穴(BL13, BL15, BL18, BL20, BL23)における筋肉のトーン(自然振動周波数)と硬度(抵抗力)および深部圧痛に対する痛み感受性を評価し、それらの部位間に有意差が存在するかを検討した探索的研究である。48名のボランティア参加者を対象に、Myoton PRO装置を用いて背募穴上の筋トーンおよび筋硬度を計測し、一定力で5秒間圧迫した後の痛みレベルを11点尺度で評価した。結果として、BL15で最も筋トーンが高く、BL23で最も筋トーンおよび筋硬度が低かったほか、痛み感受性はBL23が最も高かった。また、筋トーンと痛み感受性には有意な負の相関が認められた。これらの結果は、背募穴部位間の解剖学的・生体力学的差異を踏まえた診断的考慮の必要性を示唆している。

研究背景

伝統的に背募穴は内臓疾患の診断および治療に重要視されてきた。背部の脊椎棘突起の下縁から外側1.5寸に位置し、それぞれ肺(BL13)、心(BL15)、肝(BL18)、脾(BL20)、腎(BL23)と対応する。これらの部位は筋膜や末梢神経を介して内臓と神経学的に連関し、病態に応じて皮膚の過敏や筋硬度の変化が生じるとされる。しかし、同一被験者内で背募穴間の生体力学的性状や痛み感受性に差異があるかについては未検討であり、本研究ではHealthy Volunteerを対象にその有無を検証した。

方法

本研究は倫理審査委員会承認(KHSIRB-21-243)のもと、BMI18.5–25 kg/m²の健康ボランティア48名(平均年齢22.5±2.3歳、男女比26:22)を対象とした。参加者は被験12時間前の飲酒・カフェイン・薬物摂取を控え、うつ伏せ位で実施された。背募穴の同定はWHO標準に従い、熟練伝統医が脊椎棘突起下縁を触知し、そこから外側1.5寸にマークを付与した(図1)。筋トーン・硬度測定にはMyoton PRO(Myoton AS, エストニア)を用い、0.4 Nの衝撃刺激(15 ms)で自然振動を誘発し計測した。痛み感受性は力センサ(FSR402)とArduino UNOで圧力をモニタリングしつつ、一定力で5秒間圧迫後に11点数値評価(0:無痛~10:想像し得る最悪の痛み)を口頭で報告させた。左右値は高い左右相関(r=0.60–0.88, p<0.001)を確認後に平均化し、一元配置分散分析(ANOVA)とTukey検定で群間比較を行い、Pearson相関で筋トーンと痛み感受性の関係を検討した。

結果

筋トーンは背募穴間で有意差を示し(F=54.8, p<0.001)、BL23が最も低値(14.9±0.2 Hz)、BL15が最も高値(18.9±0.3 Hz)であった。筋硬度も同様にBL23が最低値(267.9±5.3 N/m)、BL15が最高値(383.2±9.6 N/m)を示した(F=39.36, p<0.001)。一方、痛み感受性はBL23が最も高く(1.6±0.2)、BL18が最も低かった(1.0±0.2, p<0.01)。さらに、筋トーンと痛み感受性には負の相関が認められた(r=–0.172, p<0.01)。

考察

本研究で観察された背募穴間の生体力学的特性差は、部位ごとの筋層構造および筋膜分布の解剖学的差異が影響していると考えられる。特にBL23付近は広背筋・胸腰筋膜の厚みが大きいため、筋トーン・硬度が低く、逆に痛み感受性が高かった可能性がある。臨床では背募穴の圧痛や硬度を基に内臓疾患を診断するが、本研究結果を踏まえないと、例えば腎機能異常の診断でBL23の自然低トーン・高感受性を過剰に解釈して誤診する恐れがある。よって、各背募穴の基礎的生体力学的特性を理解した上で診断・治療に応用する必要がある。

使用経穴

  • BL13(肺兪): 第3胸椎下縁
    外側1.5寸

  • BL15(心兪): 第5胸椎下縁
    外側1.5寸

  • BL18(肝兪): 第9胸椎下縁
    外側1.5寸

  • BL20(脾兪): 第11胸椎下縁
    外側1.5寸

  • BL23(腎兪): 第2腰椎下縁
    外側1.5寸 

臨床的意義

背募穴は伝統的に内臓機能の診断・治療に用いられてきたが、同一被験者内で穴位ごとに自然に備わる硬度・トーン・感受性に差があることを本研究が初めて示した。これにより、臨床での触診圧痛評価や生体力学的検査(硬度計測など)を行う際は、各穴位の基準値を設定し、個々の変動を的確に捉えた診断が可能となる。また、今後は疾患患者との比較研究を通じて背募穴のセンシティビティ変化を検証し、診断ツールとしてのエビデンスを強化することが期待される。

結論

五つの背募穴において、生体力学的性状と痛み感受性に有意差が認められた。本研究は健康者における基礎値の把握を目的とし、臨床的内臓診断の精度向上に寄与する知見を提供する。今後は病態のある患者群を対象とした研究により、背募穴センシティビティの診断的有用性をさらに検討する必要がある。

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ここでは、Ankiのシステムを使った「経穴リスニング暗記帳」が何故、学習効率が高いのかについて説明いたします。

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このような間隔反復(Spaced Repetition)の仕組みは、短期記憶のまま消えていくのを防ぎ、効率的で持続性のある学習を実現します。

🔺 最適な復習タイミングが、記憶の定着を飛躍的に高める。

– 能動的想起(テスト効果)による記憶の強化

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能動的想起(アクティブリコール)による記憶の強化

ただ教科書を読むだけの「受動的学習」では、情報はなかなか定着しません。
一方で、学んだ内容を自分の頭で思い出そうとする「能動的学習」では、記憶の定着率が格段に向上することが、数多くの心理学的研究で示されています。

この「思い出そうとする行為」そのものが脳内の記憶経路を再活性化し、情報へのアクセスを強化します。その結果、より強固で思い出しやすい記憶が形成されるのです。

左側:受動的学習(教科書を読むだけ) → 記憶の定着は限定的
右側:能動的学習(思い出そうとする) → 記憶の定着が飛躍的にアップ

🔴 記憶は「入力」ではなく「出力」によって強化される。

Ankiなどのテスト形式の学習ツールは、まさにこの能動的想起(Active Recall)の原理を活かした方法であり、記憶の強化に極めて効果的です。

– 複数の感覚を使うと、記憶はもっと強くなる

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マルチモーダル学習による記憶定着の向上

記憶をより深く、強く定着させるには、視覚だけに頼るのではなく、複数の感覚を同時に使う「マルチモーダル学習」が効果的です。

  • 👁 視覚情報:文字・図を見て学ぶ

  • 👂 聴覚情報:音声を聞いて学ぶ

  • 触覚情報:実際に身体に触れ、感覚を伴って学ぶ

これらの異なる感覚情報が脳内で統合されることで、記憶のネットワークが多層的に構築され、忘れにくくなるのです。

特に経穴の学習においては、
「見る」+「聴く」+「触れる」という三感覚の連携が極めて有効。

🔷 マルチモーダル学習で、記憶が深く刻まれる。
→ 経穴の学習には「見る」「聴く」「触れる」が鍵。

– 二重符号化理論 – 記憶のバックアップを作る

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二重符号化理論(Dual-Coding Theory)
― 記憶のバックアップを作る学び方 ―

学習した情報を視覚(文字·図)と聴覚(音声)の2つの経路で同時に取り入れることで、記憶の定着が強化されるという理論が「二重符号化理論(Dual-Coding Theory)」です。

👁 視覚情報(文字・図)
👂 聴覚情報(音声)

これらは脳内で別々のチャンネルとして処理·保存されるため、どちらか一方の記憶が弱まっても、もう一方から補完され、思い出しやすくなるという利点があります。

たとえば、音を忘れても文字を見れば思い出せる。
または、文字を忘れても音を聞けば思い出せる。

📌 文字と音声の両方で学ぶことで、記憶が二重に保存される。
つまり、記憶にバックアップが作られるような状態が生まれ、忘れにくくなるのです。

– 声に出して覚えると、記憶はもっと深く残る

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― 生成効果(Production Effect)とは ―

単に「読む」「聞く」といった受動的な学習に比べて、自分の声で情報を発する=生成する(能動的学習)ことで、記憶の定着率は大幅に向上します。

この現象は、生成効果(Production Effect)と呼ばれ、心理学的にも広く研究されています。

📖👂 読む·聞く(受動的)
→ 情報は一方的に入力されるが、記憶への定着は弱い。
🗣🧠 声に出す(能動的)
→ 自らの言葉で発することで、脳内の記憶回路が活性化。
→ 記憶の痕跡が強く、深く刻まれる。

このように、音読やシャドーイングのような声に出す学習は、
単なる受け身の学習を超えて、脳に「刻み込む」記憶法へと変わります。

🔷 声に出す(=情報を生成する)ことが、記憶を深く定着させる鍵。

– 声に出すことは、優れた運動感覚学習となる
〜 シャドーイングは脳と身体をフルに使う記憶術 〜

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シャドーイングとは、聞いた音声をすぐに繰り返して発音する学習法です。

この方法には、単なる「耳で聞く学習」を超えた、運動感覚学習(Kinesthetic Learning)の効果があります。

なぜ記憶が深くなるのか?

  1. 発声(motor)
    → 口や喉などの運動器官を使い、声に出して情報を「体で再現」。

  2. 聴覚モニタリング(sensory)
    → 自分の発した声が耳から入り、自分の聴覚を再び刺激。

  3. 脳内でのフィードバック修正
    → 発声→聴取→修正のサイクルが脳内で繰り返されることで、運動感覚と知覚の統合が起こり、記憶がより強固になります。

  4. 体性感覚の追加モダリティ
    → 経穴名などの抽象的な情報が、「自分の声を出した感覚」と結びつき、身体に刻まれる。

•  目で見て、耳で聴いて、口で言う
• 「口が覚えている」=身体で覚えている

🔷 シャドーイングは、脳と身体を統合して使う、最強の記憶術。
抽象知識を身体的な感覚とつなげることで、記憶は格段に深まります。

Ankiを最大限に活かす鍵は、カードの“質”にある
― 効果的な学習のためには、高品質なカードが必要 ―

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Ankiは非常に優れた学習ツールですが、本当に効果を発揮するには「カードの質」が重要です。

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