■ 固有心筋と特殊心筋
心筋には収縮に適した固有心筋と、興奮の発生と伝導に適した特殊心筋の2種類があります。
心臓の拍動のリズムを決める刺激伝導系は特殊心筋で構成されています。(刺激伝導系は神経線維ではないことがよく出題されます。)
■ 刺激伝導系の順序と場所
心臓がポンプとして機能するためには、心房から心室へと順序よく収縮し、血液を送り出す必要があります。この収縮のリズムを決め、伝えるのが刺激伝導系です。以下にその順序と場所を示します:
- 洞房結節(SA node):
- 右心房の上大静脈開口部付近にある特殊心筋のかたまりです。
- 心拍のペースメーカーとして機能し、心臓の拍動リズムを決定します。
- 房室結節(AV node):
- 右心房の下壁に存在し、洞房結節からの興奮を受け取ります。
- この部分では興奮伝導速度が極端に遅くなり、心房と心室の収縮にタイミングの差をつけます。
- 房室束(ヒス束):
- 線維三角を貫通し、心房と心室間の興奮伝導を担います。
- ここが障害されると房室ブロックと呼ばれる状態になります。
- 左脚・右脚:
- ヒス束を通過した興奮は心室中隔にて左脚・右脚に分かれ、心尖部に向かって下行します。
- プルキンエ線維:
- 心室の心内膜下を枝分かれしながら広がり、心室筋全体に興奮を伝え、心室の協調した収縮を促します。
これにより、心房が収縮してから一瞬の間をおいて心室が収縮するというタイミングが確保され、効率的な血液の駆出が可能となります。
▶ 参考)自動能のしくみ
心臓の拍動は体外に取り出しても続く自動能を持っています。このリズムは洞房結節で発生します。以下に、心臓の自動能と刺激伝導系についてのポイントをまとめます:
- 自動能:
- 心臓は自動的に拍動を続ける能力を持っており、これを自動能と言います。
- 洞房結節がこのリズムを生成し、通常の脈拍数(60〜80拍/分)を決定します。
- 固有心筋と特殊心筋:
- 固有心筋: 通常の心筋で静止電位を持ちます。
- 特殊心筋: 静止電位を持たず、時間経過と共に徐々に電位が上がり、自動的に閾値に達し活動電位を生じます(自動能)。
- 特殊心筋は、それぞれの場所で自動能をもちますが、通常は一番上位である洞房結節の刺激発生頻度に従い下位は閾値に達します。
- 完全房室ブロック:
- 心房と心室間の興奮伝導が途絶えると、下位の自動能が働くようになります。
- 完全房室ブロックの時は、プルキンエ線維の自動能で心室が収縮し、徐脈となります。