

握力の秘密がわかる!
前腕屈筋群ショートストーリー
スマホ片手に電車で揺られているそこのあなた。
いま指を動かしているのは、まさに前腕屈筋群の面々です。今日はその舞台裏を、筋肉たちの“キャラクター紹介”風に読んでみましょう。
ステージ0:共通のたまり場「内側上顆」
屈筋メンバーの多くが集合するのが、上腕骨の内側上顆。ゴルフスイングで痛くなると「ゴルファー肘」と呼ばれるホットスポットです。ここが痛むと、日常のキーボード操作すらつらいので要注意。
ステージ1:浅層 ― パワー系メンバーズ
円回内筋はドアノブを回してくれる回内の達人。正中神経をうっかり締め付けると、しびれというクレームが発生します。
橈側手根屈筋は手首を掌側+橈側へシュッと曲げるアクティブ派。スマホ持ちすぎで腱鞘炎? 彼のオーバーワークかもしれません。
長掌筋は手掌腱膜をピーンと張る裏方。約15%の人に「最初からいない」という自由人ですが、欠席しても日常生活に支障は少なめ。むしろ腱移植のヒーローとして登板します。
尺側手根屈筋は豆状骨を経由し、手首を尺屈+掌屈。そのすぐ下を尺骨神経が走るため、ギヨン管症候群では“隣人トラブル”が勃発。
浅指屈筋はPIP関節を曲げるスプリンター。スピーディに握力を生むので、瞬発的なグリップスポーツで大活躍です。
これら浅層筋の腱は手根管を通過。ホルモン変化や反復作業で腱鞘がむくむと、正中神経が「狭いよ…」と悲鳴を上げる――それが手根管症候群です。
ステージ2:深層 ― 精密オペレーターズ
深指屈筋はDIP関節を静かに屈曲する職人気質。橈側は正中神経、尺側は尺骨神経からダブルで指令を受ける、二刀流プレーヤーです。
長母指屈筋は母指のIP関節をピンポイントで曲げるスナイパー。お札をつまむテストで動かなければ、前骨間神経がトラブルかも。
方形回内筋は手首近くで前腕を回内ロックするガードマン。橈尺関節をギュッと安定させ、コーヒーカップをこぼさせません。
サポート役として腕橈骨筋(中間位で肘屈曲)や回外筋(ドライバーを回外方向へひねる)が控え、動きにメリハリを与えます。
肘の外側後方で回外筋が橈骨神経の深枝を締めると、手指の伸展ができない後骨間神経麻痺が起こります。”物を落としやすい”患者さんは要チェック!
ステージ3:握力コンサートの舞台裏
あなたが握力計をギュッと握るとき、シグナルはこう流れます:
- 瞬間最大パワー=浅指屈筋
- 持続型ねばり腰=深指屈筋
- 手首の角度調整=橈側/尺側手根屈筋
エネルギー切れを感じたら、前腕を軽くストレッチ。屈筋と伸筋のバランス調整で、腱鞘炎を遠ざけられます。
ステージ4:クイズでアクティブリコール!
Q1. DIP関節を単独で屈曲する筋は?
→ 深指屈筋
Q2. ゴルファー肘が痛む骨性ランドマークは?
→ 上腕骨内側上顆
Q3. 前骨間神経麻痺で最初に障害される母指の動きは?
→ IP屈曲(長母指屈筋)
エンディング:今日からできるセルフケア
スマホを握る親指、人差し指に疲れを感じたら、反対の手で母指球をゆっくり押圧 → 手首を軽く曲げ伸ばししてみましょう。屈筋腱が滑走し、正中神経へのプレッシャーが和らぎます。
次に電車に乗ったときは、ハンドルにつかまる腕の前腕をそっと触診してみてください。筋肉たちが動くリアルを“立体的に”感じ取れるはずです。
――前腕屈筋群の旅はここで終わり。今日の握力に、ちょっぴり愛着が湧きましたか?