論文紹介:Combination of Manual Acupuncture, Penetrating Needling, and Electroacupuncture to Treat Bell’s Palsy 「手技鍼、貫入鍼法および電気鍼を組み合わせたベル麻痺治療」

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タイトル

Combination of Manual Acupuncture, Penetrating Needling, and Electroacupuncture to Treat Bell’s Palsy + 手技鍼、貫入鍼法および電気鍼を組み合わせたベル麻痺治療


引用

Mardiana, W., Viventius, Y., Nareswari, I., & Djaali, W. (2024). Combination of Manual Acupuncture, Penetrating Needling, and Electroacupuncture to Treat Bell’s Palsy. Medical Acupuncture, 36(3), 163–167. https://doi.org/10.1089/acu.2023.0033 


目次

論文の日本語説明

背景

ベル麻痺は顔面神経下位運動ニューロンが片側のみ原因不明に麻痺する急性疾患であり,患者の表情機能障害だけでなく,社会的・心理的健康にも大きく影響します。House–Brackmann尺度で重症度を評価し,Grade Iが正常,Grade VIが完全麻痺に相当します。本症例報告では,鍼治療の有効率が90%以上と報告される伝統的手技鍼(filiform needles)に加え,貫入鍼法と電気鍼(EA)を組み合わせることで,疾患経過短縮と後遺症予防を図った臨床効果を検討しています 

症例

  • 患者プロファイル:34歳女性。発症2日前より右顔面全体の筋力低下を自覚し,来院時にはHouse–Brackmann Grade IIIと診断。

  • 西洋医学的治療:メチルプレドニゾロン4 mgおよびメコバラミンを1日2回,メチスプリノール500 mgを1日4回投与開始 

  • 鍼治療の詳細

    1. 手技鍼(Manual Acupuncture)

      • 使用鍼:Hūanqúi製 単刺0.25×25 mmおよび0.25×40 mm

      • 選穴:GB-20(風池),BL-2(攅竹),ST-36(足三里),LI-4(合谷),TE-5(外関)左右,GV-20(百会)

      • 刺入→保持30分 

    2. 貫入鍼法(Penetrating Needling)

      • 経絡方向に沿って5対の鍼を顔面部に貫通させ,30分保持

        • GB-14 → Ex-HN-3

        • ST-7 → SI-18

        • SI-18 → LI-20

        • ST-6 → ST-4

        • ST-5 → ST-4 

    3. 電気鍼(Electroacupuncture, EA)

      • 第4回治療より導入

      • ペアリング:ST-7–SI-18, ST-6–ST-5, GB-14–Ex-HN-5, ST-4–CV-24

      • 波形:dense–disperse(10/50 Hz), 強度レベル2, 20分 

    4. 補助的温熱療法

      • 初回~第4回にTDPランプによる局所温熱(15分)を併用 

  • 施術頻度・回数:週2回,計12セッション実施。

結果

  • 改善経過:1~3回目はGrade III,4回目にGrade IIへ移行,7回目以降はGrade I(正常顔面機能)を維持 

  • 副作用:鍼・EAともに痛みや不快感なく,熱傷や神経刺激過剰などの有害事象は一切観察されず。

  • 患者の主観的評価:鍼治療中はリラックス感が得られ,時折睡眠に入るほど快適であったとの報告あり 

考察

  1. 早期介入の重要性

    発症3日目からの鍼治療は,顔面神経浮腫の軽減と軸索脱髄予防に寄与し,急性期の神経保護に有効とされる 

  2. 貫入鍼法のメカニズム

    ST-6→ST-4の貫入は咬筋や頬筋を含む表情筋群を顔面神経枝レベルで直接刺激し,線維化や筋萎縮の抑制につながる 

  3. 全身穴の役割

    GV-20やST-36の刺激は,BDNF・GDNFの発現増加やTNF-α抑制,マクロファージ活性化を介して神経再生・抗炎症効果を示唆  。LI-4は小脳調節を通じて異常神経回路の正常化に寄与すると考えられる。

  4. 電気鍼の波形選択

    低周波(2–4 Hz)はエンドルフィン放出,高周波は筋収縮抑制に有効であるが,単一周波ではスパズムや痛みのリスクがあるため,10/50 Hzのdense–disperse波形で両者をバランスさせた 

  5. 温熱療法の併用

    TDPによる局所温熱は血流改善・抗炎症作用を強化し,鍼刺激効果の増幅を助ける 

結論

本症例では,手技鍼・貫入鍼法・電気鍼およびTDP温熱療法を組み合わせた集学的アプローチにより,ベル麻痺の回復期間を有意に短縮し,後遺症リスクを低減した。痛みや副作用のリスクも低く,他の臨床例への展開が期待されるが,大規模試験での検証が必要である 


使用経穴一覧

  • 頭部・頸部局所穴

    • GB-14(陽白)→Ex-HN-3(印堂)

    • BL-2(攅竹)

    • GB-20(風池)

  • 顔面貫入鍼ペア

    • ST-7(下関)→SI-18(顴髎)

    • SI-18(顴髎)→LI-20(迎香)

    • ST-6(頰車)→ST-4(地倉)

    • ST-5(大迎)→ST-4(地倉)

  • 体幹・四肢遠隔穴

    • ST-36(足三里)

    • LI-4(合谷)

    • TE-5(外関)左右

    • GV-20(百会)

  • 電気鍼ペア

    • ST-7–SI-18

    • ST-6–ST-5

    • GB-14–Ex-HN-5

    • ST-4–CV-24

以上の集学的鍼治療プロトコルは,ベル麻痺の早期回復と後遺症予防を目的とした有効な選択肢として臨床応用が検討されます。

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忘却曲線に基づいて復習タイミングが自動で最適化され、
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■ 何故、Ankiは学習効率が高いのか

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ここでは、Ankiのシステムを使った「経穴リスニング暗記帳」が何故、学習効率が高いのかについて説明いたします。

– Ankiによる自動復習機能(分散学習)

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忘れる前に、Ankiが思い出させてくれる。

Ankiは、記憶の心理学的メカニズム――特にエビングハウスの忘却曲線の研究に基づき、「最適な復習タイミング」を自動で提示するシステムを備えています。

これにより、学習内容を忘れかけた絶妙なタイミングで再提示し、記憶を強化。最終的には長期記憶として定着させることが可能です。

  1. 復習しないと忘却が進行
    → 時間とともに記憶は薄れていきます。

  2. Ankiが復習を促す
    → 忘れる前の最適なタイミングでカードが再提示されます。

  3. 記憶が強化される
    → 復習によって脳内ネットワークが再活性化され、記憶が深まります。

  4. 記憶が定着する
    → 繰り返しにより、長期的な知識として安定的に保持されます。

このような間隔反復(Spaced Repetition)の仕組みは、短期記憶のまま消えていくのを防ぎ、効率的で持続性のある学習を実現します。

🔺 最適な復習タイミングが、記憶の定着を飛躍的に高める。

– 能動的想起(テスト効果)による記憶の強化

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能動的想起(アクティブリコール)による記憶の強化

ただ教科書を読むだけの「受動的学習」では、情報はなかなか定着しません。
一方で、学んだ内容を自分の頭で思い出そうとする「能動的学習」では、記憶の定着率が格段に向上することが、数多くの心理学的研究で示されています。

この「思い出そうとする行為」そのものが脳内の記憶経路を再活性化し、情報へのアクセスを強化します。その結果、より強固で思い出しやすい記憶が形成されるのです。

左側:受動的学習(教科書を読むだけ) → 記憶の定着は限定的
右側:能動的学習(思い出そうとする) → 記憶の定着が飛躍的にアップ

🔴 記憶は「入力」ではなく「出力」によって強化される。

Ankiなどのテスト形式の学習ツールは、まさにこの能動的想起(Active Recall)の原理を活かした方法であり、記憶の強化に極めて効果的です。

– 複数の感覚を使うと、記憶はもっと強くなる

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マルチモーダル学習による記憶定着の向上

記憶をより深く、強く定着させるには、視覚だけに頼るのではなく、複数の感覚を同時に使う「マルチモーダル学習」が効果的です。

  • 👁 視覚情報:文字・図を見て学ぶ

  • 👂 聴覚情報:音声を聞いて学ぶ

  • 触覚情報:実際に身体に触れ、感覚を伴って学ぶ

これらの異なる感覚情報が脳内で統合されることで、記憶のネットワークが多層的に構築され、忘れにくくなるのです。

特に経穴の学習においては、
「見る」+「聴く」+「触れる」という三感覚の連携が極めて有効。

🔷 マルチモーダル学習で、記憶が深く刻まれる。
→ 経穴の学習には「見る」「聴く」「触れる」が鍵。

– 二重符号化理論 – 記憶のバックアップを作る

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二重符号化理論(Dual-Coding Theory)
― 記憶のバックアップを作る学び方 ―

学習した情報を視覚(文字·図)と聴覚(音声)の2つの経路で同時に取り入れることで、記憶の定着が強化されるという理論が「二重符号化理論(Dual-Coding Theory)」です。

👁 視覚情報(文字・図)
👂 聴覚情報(音声)

これらは脳内で別々のチャンネルとして処理·保存されるため、どちらか一方の記憶が弱まっても、もう一方から補完され、思い出しやすくなるという利点があります。

たとえば、音を忘れても文字を見れば思い出せる。
または、文字を忘れても音を聞けば思い出せる。

📌 文字と音声の両方で学ぶことで、記憶が二重に保存される。
つまり、記憶にバックアップが作られるような状態が生まれ、忘れにくくなるのです。

– 声に出して覚えると、記憶はもっと深く残る

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― 生成効果(Production Effect)とは ―

単に「読む」「聞く」といった受動的な学習に比べて、自分の声で情報を発する=生成する(能動的学習)ことで、記憶の定着率は大幅に向上します。

この現象は、生成効果(Production Effect)と呼ばれ、心理学的にも広く研究されています。

📖👂 読む·聞く(受動的)
→ 情報は一方的に入力されるが、記憶への定着は弱い。
🗣🧠 声に出す(能動的)
→ 自らの言葉で発することで、脳内の記憶回路が活性化。
→ 記憶の痕跡が強く、深く刻まれる。

このように、音読やシャドーイングのような声に出す学習は、
単なる受け身の学習を超えて、脳に「刻み込む」記憶法へと変わります。

🔷 声に出す(=情報を生成する)ことが、記憶を深く定着させる鍵。

– 声に出すことは、優れた運動感覚学習となる
〜 シャドーイングは脳と身体をフルに使う記憶術 〜

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シャドーイングとは、聞いた音声をすぐに繰り返して発音する学習法です。

この方法には、単なる「耳で聞く学習」を超えた、運動感覚学習(Kinesthetic Learning)の効果があります。

なぜ記憶が深くなるのか?

  1. 発声(motor)
    → 口や喉などの運動器官を使い、声に出して情報を「体で再現」。

  2. 聴覚モニタリング(sensory)
    → 自分の発した声が耳から入り、自分の聴覚を再び刺激。

  3. 脳内でのフィードバック修正
    → 発声→聴取→修正のサイクルが脳内で繰り返されることで、運動感覚と知覚の統合が起こり、記憶がより強固になります。

  4. 体性感覚の追加モダリティ
    → 経穴名などの抽象的な情報が、「自分の声を出した感覚」と結びつき、身体に刻まれる。

•  目で見て、耳で聴いて、口で言う
• 「口が覚えている」=身体で覚えている

🔷 シャドーイングは、脳と身体を統合して使う、最強の記憶術。
抽象知識を身体的な感覚とつなげることで、記憶は格段に深まります。

Ankiを最大限に活かす鍵は、カードの“質”にある
― 効果的な学習のためには、高品質なカードが必要 ―

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Ankiは非常に優れた学習ツールですが、本当に効果を発揮するには「カードの質」が重要です。

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