論文紹介:Anatomical structures and needling method of the back-shu points BL18, BL20, and BL22 related to gastrointestinal organs: A PRISMA-compliant systematic review of acupoints and exploratory mechanism analysis 「消化器臓器に関連する背部兪穴BL18・BL20・BL22の解剖学構造および刺鍼法:PRISMA準拠の経穴系統的レビューとメカニズム探索解析」

引用論文

Cho, Y., Han, Y., Kim, Y., Han, S., Oh, K., Chae, H., Chu, H., & Ryu, M. (2022). Anatomical structures and needling method of the back-shu points BL18, BL20, and BL22 related to gastrointestinal organs: A PRISMA-compliant systematic review of acupoints and exploratory mechanism analysis. Medicine (Baltimore), 101(43), e29878. https://doi.org/10.1097/MD.0000000000029878 


Anatomical structures and needling method of the back-shu points BL18, BL20, and BL22 related to gastrointestinal organs: A PRISMA-compliant systematic review of acupoints and exploratory mechanism analysis
「消化器臓器に関連する背部兪穴BL18・BL20・BL22の解剖学構造および刺鍼法:PRISMA準拠の経穴系統的レビューとメカニズム探索解析」

1. はじめに

過去数十年にわたり、背部兪穴(Back-shu points, BSPs)は内臓機能の遠隔制御点として注目され、特に消化器系疾患への応用が盛んに研究されてきた。本研究では、肝兪(BL18)、脾兪(BL20)、三焦兪(BL22)という3つのBSPsについて、解剖学的構造と刺鍼法に関する既存文献を網羅的にレビューし、有効性と安全性、さらに刺激機序の探索的分析を行った。これにより、鍼灸師や学生がこれらの経穴を消化器疾患治療に適切に応用するためのガイドライン作成を目指している。 

2. 方法

  • 文献検索

    • Medline、Cochrane Library、EMBASE、OASIS、RISS、CNKIの6データベースを、各々の開設時から2021年7月まで検索。

  • 選定基準

    • 保証されたランダム化比較試験(RCT)からケースレポートまで、BL18・BL20・BL22の刺鍼深度または角度、解剖学的標的に言及する臨床・解剖学研究を含む。

    • 115報の論文が適格と判断され、うち108報で刺鍼深度、86報で刺鍼角度、79報で標的筋・神経構造が詳細に記載されていた。

  • データ抽出と解析

    • 各論文から「深度」「角度」「標的筋・構造」「臨床的応答」を定量的に抽出。

    • PRISMAフローに従い、重複除外後の選定過程を図示。 

3. 結果

  • 刺鍼深度と角度

    • BL18(肝兪):第9胸椎棘突起下,左右1.5寸外側。刺鍼深度は約0.5~1.0寸(15~30 mm)が多数報告され、刺入角度は15°~30°で腹側に向ける方法が一般的。

    • BL20(脾兪):第11胸椎棘突起下,左右1.5寸外側。深度は0.6~1.2寸(18~36 mm)、角度は20°~35°で背側に向ける手法が多い。

    • BL22(三焦兪):第1腰椎棘突起下,左右1.5寸外側。深度0.7~1.3寸(21~39 mm)、角度は15°~30°で対角線的刺入が推奨される。

  • 解剖学的標的

    • いずれの穴も、棘間筋・多裂筋を貫き、深層では横突間筋・肋間筋へ到達し、脊髄神経後枝や交感神経幹に近接。

    • BL18は肝門脊髄レベル、BL20は脾胃支配レベル、BL22は三焦および小腸機能に関連する神経線維に近いことが確認された。

  • 臨床的応答

    • 消化管運動改善、腹痛軽減、排便習慣の正常化を報告したRCTおよび症例シリーズが多数。

    • 刺鍼により交感神経活動が調整され、副交感神経優位へのシフトが観察されることが動物実験および一部臨床試験で示唆された。

  • 安全性

    • ほとんどの文献で有害事象は報告されず、軽度の出血・筋肉痛が稀に見られたのみ。深部への過度の刺入は肋骨・脊椎損傷のリスクを伴うため注意が必要。 

4. 考察

本レビューは、BL18・BL20・BL22がいずれも「解剖学的に明確な深度・角度」で刺鍼可能であり、その機序として

  1. 脊髄神経後枝の機械的圧迫

  2. 交感神経幹の化学的・機械的刺激による自律神経調整

  3. 横隔膜と肋間筋を介した内臓-体性反射

    などが作用し、消化器系の疼痛および運動機能に影響を与えると分析した。

    しかし、研究間で用いた刺鍼手技に一貫性がなく、客観的バイオマーカーの測定が不足している点が課題である。今後は超音波ガイド下刺鍼や自律神経活動の定量評価を組み合わせた大規模RCTが望まれる。 


使用経穴一覧

  • 肝兪(BL18):第9胸椎棘突起下,左右1.5寸外側

  • 脾兪(BL20):第11胸椎棘突起下,左右1.5寸外側

  • 三焦兪(BL22):第1腰椎棘突起下,左右1.5寸外側

これらの背部兪穴は、消化器疾患の遠隔治療点として、深度・角度を厳守することで臨床的有効性と安全性を両立できることが示された。今後の研究で、さらに詳細なメカニズム解明と刺鍼プロトコルの標準化が期待される。

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