学習トップ理由で解く 柔道整復師整形外科学 ▸ §25 臨床実地問題 / QJ34P067

理由で解く 柔道整復師

QJ34P067 整形外科学

出典:第34回柔道整復師国家試験(2026)午後 問67
問題
20歳の男性。サッカーで後方に左手を突いて転倒し受傷した。病院にて骨折と診断された。受傷時の単純エックス線写真(別冊 No. 2)を別に示す。ギプスによる保存的治療を8週間行ったが、半年の時点でも疼痛は残存している。正しいのはどれか。
図
選択肢
1 徒手整復を行う。
2 snuff box に圧痛がある。
3 再度ギプス固定を行う。
4 この骨の血流は近位から入る。
解答
正解2(snuff box に圧痛がある。)
解説

手をついて受傷し、8週間のギプス固定後も半年の時点で疼痛が残るという経過は、手舟状骨骨折の遷延治癒・偽関節を強く疑わせる。この骨折の身体所見の要は snuff box(解剖学的嗅ぎたばこ入れ)の圧痛であり、正しいのは 2

舟状骨は手根骨骨折のなかで最も多く、手関節背屈位で手をついた際に受傷する。栄養血管は橈骨動脈の枝が背側稜から遠位側で入り、近位へ逆行性に流れるという特殊な血行を持つため、腰部(中央部)や近位部で折れると近位骨片が阻血に陥り、癒合不全や阻血性壊死を起こしやすい。初診時のエックス線で骨折線が写らないことも多く、見逃されて後から偽関節が判明する「見逃されやすい骨折」の代表でもある。本問のように長期固定後も痛みが続く場合は、CTやMRIで癒合状態と近位骨片の血流を評価し、必要なら骨移植を併用したスクリュー固定(Herbert スクリューなど)を検討する段階に入っている。

✓ 2. 正しい
snuff box に圧痛がある。
解剖学的嗅ぎたばこ入れは、長母指伸筋腱と短母指伸筋腱・長母指外転筋腱に挟まれた陥凹で、その底に舟状骨がある。したがって舟状骨骨折ではここに限局した圧痛が出る。あわせて舟状骨結節の圧痛、母指(第1中手骨)・示指(第2中手骨)の長軸方向への軸圧痛も参考所見となる。舟状骨は大菱形骨・小菱形骨を介して第1・第2中手骨列とつながっているため、この2本の軸圧が舟状骨に伝わるからである。一方第3中手骨は有頭骨—月状骨と一直線に並ぶので、その長軸圧で痛むのは月状骨損傷(月状骨骨折・月状骨周囲脱臼・キーンベック病)を示唆する所見であり、舟状骨とは区別する。エックス線が陰性でもこれらの所見があれば骨折として扱い、固定したうえで再検査に回すのが安全な対応である。
✗ 1. 誤り
徒手整復を行う。
舟状骨は靱帯に包まれた小さな手根骨で、徒手的に整復位を得て保持することはできない。ましてや受傷から半年が経ち癒合していない状態では、徒手整復の対象にならない。この段階で取るべき行動は、CT・MRIで骨癒合と近位骨片の血流を確認したうえで、骨移植を併用した内固定など外科的治療を専門医と検討することである。
✗ 3. 誤り
再度ギプス固定を行う。
8週間の適切な固定を行っても半年後に痛みが残っているということは、保存療法では癒合が得られなかった可能性が高い。ここでさらに固定を延長しても癒合は期待しにくく、手関節や手指の拘縮・筋萎縮という不利益が上乗せされる。画像で偽関節が確認されれば手術に方針を切り替え、術後に可動域訓練へつなげるのが妥当な流れである。
✗ 4. 誤り
この骨の血流は近位から入る。
血流の向きが逆である。舟状骨の主な栄養血管は橈骨動脈の枝が背側稜の遠位側から入り、近位へ向かって逆行性に走る。そのため骨折線より近位の骨片は血流を断たれやすく、偽関節や阻血性壊死が生じる。本問で半年たっても痛みが残る理由そのものであり、「舟状骨・大腿骨頭・距骨体部は血流が末梢から中枢へ入るため壊死しやすい」とまとめて覚えたい。
ポイント
  • 手舟状骨骨折は手根骨骨折で最多。手関節背屈位で手をついて受傷する。
  • 所見は snuff box の圧痛、舟状骨結節の圧痛、第1・2中手骨(母指・示指)の軸圧痛
  • 第3中手骨の軸圧痛は有頭骨—月状骨列に伝わる所見で月状骨損傷を示す。舟状骨と混同しない。
  • 初期のエックス線で骨折線が写らないことがある。所見があれば骨折として固定し、再検査へつなぐ。
  • 栄養血管は遠位から入り近位へ逆行性。近位骨片が阻血に陥り偽関節・阻血性壊死を起こしやすい。
  • 長期固定後も疼痛が残る例は偽関節を疑い、CT・MRIで評価のうえ骨移植併用の内固定を検討する。
比較表
栄養血管の入り口血流の向き壊死しやすい部位
手舟状骨背側稜の遠位側(橈骨動脈枝)遠位 → 近位近位骨片
大腿骨頭頸部の基部(内・外側大腿回旋動脈枝)遠位 → 近位骨頭
距骨頸部前方 → 後方(体部へ)体部
軸圧を加える中手骨疼痛が示唆する手根骨併せてみる所見
第1(母指)・第2(示指)中手骨手舟状骨snuff box の圧痛、舟状骨結節の圧痛
第3中手骨月状骨(有頭骨—月状骨と一直線に並ぶ)手関節中央部の圧痛、月状骨周囲脱臼の有無
第4・第5中手骨有鉤骨(鉤骨折)手掌尺側の限局性圧痛、握力低下
この問題の解説の修正を依頼する

解説に誤り・改善点があればお知らせください。件名と本文は自動入力済みです(編集できます)。お名前・メールアドレスは任意です。送信内容は玄康株式会社(黒澤一弘)に届きます。