学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §24 臨床実地問題 / QJ33P120

理由で解く 柔道整復師

QJ33P120 柔道整復理論

出典:第33回柔道整復師国家試験(2025)午後 問120
問題
3歳の男児。歩容異常を祖母に指摘されたため来所した。両下腿の内反変形がみられた。医科で画像検査を行い、両側ともにFTAは186度、脛骨近位端内側に嘴様変形がみられた。外傷の既往や明らかな感染徴候はない。考えられるのはどれか。
選択肢
1 ブラント(Blount)病
2 マルファン(Marfan) 症候群
3 ペレグリーニ・スティーダ (Pellegrini-Stieda) 病
4 シンディングラーセン・ヨハンソン(Sinding Larsen-Johansson)病
解答
正解1(ブラント(Blount)病)
解説

3歳という年齢、両側性の下腿内反、FTA 186度、そして脛骨近位端内側の嘴様変形。この4点がそろえば脛骨内反症、すなわちブラント(Blount)病である。

大腿脛骨角(FTA)は大腿骨軸と脛骨軸がつくる外側の角度で、成人の目安はおよそ176度である。この値より大きければ内反(O脚)側、小さければ外反(X脚)側に傾いていると読む。小児の下肢アライメントは生まれつきやや内反で、2歳前後を境に外反寄りへ振れ、就学前後で成人の値に近づくのが通常の経過である。本例は3歳になっても内反が残っているうえにFTAが186度と目安より10度も内反側に振れており、生理的な範囲を超えている。決め手になるのが脛骨近位端内側の嘴様変形で、これは脛骨近位骨端線の内側部分で軟骨内骨化が乱れ、内側の骨幹端が下内方へ嘴のように突出したものである。内反そのものは、この内側部分の成長だけが抑えられて外側との間に伸びの差が生じることで起こり、体重がかかるにつれて進行していく。つまり「内側の成長抑制→内反の進行」と「内側骨端線の骨化障害→内側骨幹端の嘴様突出」を分けて理解しておくとよい。左右差なく両側に現れていること、外傷の既往も感染徴候もないことも、外因ではなく成長軟骨自体の発育障害を示している。柔道整復の施術で骨端線の成長障害そのものを治すことはできないため、この所見に気づいたら速やかに整形外科へつなぎ、装具療法や骨切り術の適応判断を仰ぐのが正しい対応である。

✓ 1. 正しい
ブラント(Blount)病
脛骨近位骨端線の内側部分が発育障害を起こし、内反変形が進行する疾患である。本例の所見はすべてこれで説明がつく。3歳という年齢は乳幼児型(早期発症型、4歳未満の発症)の好発時期にあたり、両側性に出やすいのも乳幼児型の特徴である。FTA 186度という内反の強さは生理的O脚の範囲を超えており、脛骨近位端内側の嘴様変形は、内側の成長軟骨で軟骨内骨化が障害されていることを画像で示す所見にほかならない。外傷の既往も感染徴候もないという情報は、外傷性骨端線損傷や化膿性骨髄炎による二次性の変形を消してくれる、いわば消去のための一文である。肥満や歩き始めが早いことが危険因子として知られる。
✗ 2. 誤り
マルファン(Marfan) 症候群
フィブリリンの異常による全身性の結合組織疾患で、高身長、細く長い指(くも指)、側弯、漏斗胸、水晶体亜脱臼、大動脈基部の拡張などが主な特徴である。骨・靱帯が細く軟らかいために関節過可動や反張膝を伴うことはあるが、あくまで全身の結合組織の問題であって、脛骨近位骨端線の内側だけが選択的に障害される疾患ではなく、内側に限局した嘴様変形は説明できない。
✗ 3. 誤り
ペレグリーニ・スティーダ (Pellegrini-Stieda) 病
膝内側側副靱帯の大腿骨付着部が外傷後に石灰化・骨化したもので、外反強制などの受傷歴があってはじめて成立する病態である。設問に「外傷の既往はない」と明記されている時点で成立しない。加えて石灰化が起きるのは大腿骨内側上顆の周囲であって脛骨近位端ではなく、変形ではなく圧痛や可動域制限が主症状で、好発も小児ではなく青壮年である。
✗ 4. 誤り
シンディングラーセン・ヨハンソン(Sinding Larsen-Johansson)病
膝蓋骨下極に起こる骨端症で、ジャンプやダッシュを繰り返すスポーツ年代、おおむね10歳前後から中学生に多い。大腿四頭筋の牽引力が膝蓋腱の近位付着部である膝蓋骨下極にくり返し加わることで生じ、症状は運動時の膝前面痛と下極の圧痛である。同じ膝蓋腱でも遠位付着部である脛骨粗面に起こるのがオスグッド・シュラッター病で、両者は膝蓋腱の上端と下端という上下逆の関係にある。いずれにせよ3歳児の歩容異常という状況とは年齢も発生機序も合わず、下肢アライメントの内反変形をきたす疾患でもない。
ポイント
  • FTAは176度が目安。大きいほど内反(O脚)、小さいほど外反(X脚)。186度は明らかな内反である。
  • 生理的O脚は2歳ごろまで。その後は外反寄りに振れて就学前後で落ち着く。3歳以降も内反が残る、あるいは強まる場合は病的と考える。
  • 脛骨近位端内側の嘴様変形=ブラント病のサイン。内側骨端線での軟骨内骨化が乱れて内側骨幹端が下内方へ嘴状に突出する所見。内反の進行のほうは、内側の成長が抑えられて外側との差が開くことで起こる。
  • 乳幼児型(おおむね1〜3歳、4歳未満の発症)は両側性に出やすく、肥満や歩き始めが早いことが危険因子。4歳以降に発症する遅発型(若年型4〜10歳/青年型11歳以上)もある。
  • 骨端線の成長障害は施術では戻せない。気づいたら整形外科へつなぎ、装具や骨切り術の適応判断を仰ぐ。
  • 「外傷の既往なし・感染徴候なし」の一文は、外傷性骨端線損傷や骨髄炎による二次性変形を消すために置かれた手がかりと読む。
比較表
疾患名好発年齢部位・病態見分けの手がかり
ブラント病乳幼児型: おおむね1〜3歳(4歳未満)
遅発型: 若年型4〜10歳/青年型11歳以上
脛骨近位骨端線内側の発育障害内反変形の進行、FTA増大、脛骨近位端内側の嘴様変形
ペレグリーニ・スティーダ病青壮年膝内側側副靱帯の大腿骨付着部の石灰化・骨化外傷の既往が前提。内側上顆周囲の圧痛と可動域制限
シンディングラーセン・ヨハンソン病10歳前後〜中学生膝蓋腱近位付着部(膝蓋骨下極)の骨端症ジャンプ動作の反復、運動時の膝前面痛、下極の圧痛
オスグッド・シュラッター病
(参考)
10〜15歳膝蓋腱遠位付着部(脛骨粗面)の骨端症脛骨粗面の隆起・圧痛。膝蓋腱をはさんで上記と付着部が逆
マルファン症候群全年齢(先天性)全身性の結合組織疾患高身長・くも指・側弯・漏斗胸・水晶体亜脱臼・大動脈基部拡張
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