学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §24 臨床実地問題 / QJ32P116

理由で解く 柔道整復師

QJ32P116 柔道整復理論

出典:第32回柔道整復師国家試験(2024)午後 問116
問題
35歳の男性。テニス中に転がっていたボールを踏み転倒し、右母指を外転強制された。MP 関節の圧痛、運動痛、側方動揺性がみられる。医科での単純エックス線検査では骨損傷は確認されなかった。正しいのはどれか。
選択肢
1 MP 関節伸展位で固定する。
2 ステナー損傷が必発する。
3 IP 関節に弾発現象が現れる。
4 IP 関節伸展位で副靱帯は弛緩する。
解答
正解1(MP 関節伸展位で固定する。)
解説

母指の外転強制でMP関節に圧痛・運動痛・側方動揺性、画像では骨損傷なし――母指MP関節の(尺側)側副靱帯損傷です。固定はMP関節を伸展位に保って行います。

母指MP関節の固有側副靱帯は、中手骨頭の背側寄りから基節骨基部の掌側寄りへ斜めに走ります。この走行のため、MP関節を屈曲するほど張り、伸展位では緩みます。断裂した靱帯を治すには、その靱帯が緩んで断端どうしが近づく肢位に保つのが基本なので、母指MP関節を伸展位(0度付近)に置き、母指を軽度対立位にしてアルミ副子や母指スパイカ包帯で固定します。手関節や他指は動かせるようにしておくと、固定に伴う機能低下を抑えられます。側方動揺性が著明な例は完全断裂や断端の翻転が疑われるため、医師の評価を受けてもらったうえで方針を決めます。

✓ 1. 正しい
MP 関節伸展位で固定する。
母指MP関節の固有側副靱帯は屈曲位で緊張し、伸展位で弛緩します。損傷した靱帯に緊張をかけない伸展位で固定することで、断端を近づけた状態のまま修復を待てます。母指全体は軽度対立位に置き、外転方向のストレスが加わらないよう保持します。
✗ 2. 誤り
ステナー損傷が必発する。
ステナー損傷とは、断裂した尺側側副靱帯の断端が母指内転筋腱膜の表層に翻転して引っかかり、自然治癒が望めなくなった状態です。完全断裂の一部に生じるもので「必発」ではありません(必発なら全例が手術適応になってしまいます)。動揺性が著明な例で疑い、医師に紹介するという扱いが実際です。
✗ 3. 誤り
IP 関節に弾発現象が現れる。
弾発現象は、肥厚した屈筋腱と腱鞘(A1滑車)が引っかかることで生じる弾発指の所見です。側副靱帯損傷では腱と腱鞘の通過障害は起こらないので、弾発現象は現れません。
✗ 4. 誤り
IP 関節伸展位で副靱帯は弛緩する。
副靱帯(副側副靱帯)は掌側板に付着しており、伸展位で緊張し屈曲位で弛緩します。屈曲位で緊張する固有側副靱帯とはちょうど逆の振る舞いをするので、2つをセットで整理して覚えると混乱しません。この選択肢は緊張と弛緩が逆になっています。
ポイント
  • 母指の外転強制+MP関節の側方動揺性=母指MP関節(尺側)側副靱帯損傷。
  • 固有側副靱帯は屈曲位で緊張・伸展位で弛緩。だから固定はMP関節伸展位。
  • 副靱帯は掌側板に付き、伸展位で緊張・屈曲位で弛緩。固有側副靱帯と逆に動く。
  • ステナー損傷は完全断裂の一部に生じる病態で必発ではない。動揺性が著明なら医師へ。
  • 固定は必要最小限の範囲にとどめ、手関節や他指は動かせるようにして機能低下を防ぐ。
比較表
靱帯付着緊張する肢位弛緩する肢位
固有側副靱帯中手骨頭背側寄り→基節骨基部掌側寄り屈曲位伸展位
副靱帯(副側副靱帯)掌側板伸展位屈曲位
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