学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §24 臨床実地問題 / QJ32P112

理由で解く 柔道整復師

QJ32P112 柔道整復理論

出典:第32回柔道整復師国家試験(2024)午後 問112
問題
28歳の男性。機械の組み立て工。仕事中に特定の動作で肘関節がカ・クッとずれるような感じがあり、力が入らないという。小学生の低学年時に肘の骨折の既往があり、運搬角は一10度である。前腕回外位で手掌から軸圧をかけて肘関節を外反すると、橈骨頭の後外方への亜脱臼がみられた。亜脱臼の原因はどれか。
選択肢
1 輪状靱帯の亜脱臼
2 外側側副靱帯の緊張
3 内側側副靱帯の弛緩
4 外側尺側側副靱帯の弛緩
解答
正解4(外側尺側側副靱帯の弛緩)
解説

小児期の肘骨折後の内反肘(運搬角-10度)を背景に、前腕回外位+軸圧+外反で橈骨頭が後外方へ亜脱臼する――肘の後外側回旋不安定症です。責任病巣は外側尺側側副靱帯の弛緩です。

肘の外側側副靱帯複合体のうち、上腕骨外側上顆から尺骨の回外筋稜に付着する外側尺側側副靱帯は、尺骨(とそれに連結して動く橈骨頭)が上腕骨に対して後外方へ回旋してずれるのを止めています。ここが緩むと、前腕回外位で軸圧と外反を加えたときに尺骨と橈骨頭が一体となって後外方へ回旋亜脱臼し、「カクッとずれる」感覚と脱力が生じます。本例で行われた検査は、まさにこの不安定性を誘発する外側ピボットシフトテストに相当します。小児期の肘の骨折後に内反肘変形が残ると、荷重の力線が肘関節の中心より内側を通るようになり、肘に内反方向のモーメントが持続的にかかります。その結果、外側の支持機構(外側尺側側副靱帯)が年余にわたり引き伸ばされ、この不安定性が遅発性に顕在化することがあります。作業中の特定動作で症状が出る点も、回旋方向の不安定性に一致します。

✓ 4. 正しい
外側尺側側副靱帯の弛緩
外側尺側側副靱帯は、上腕骨外側上顆から輪状靱帯の外側を回り込んで尺骨の回外筋稜に着き、前腕全体が後外方へ回旋するのを制動しています。ここが緩むと、回外+軸圧+外反という組み合わせで橈骨頭が後外方に亜脱臼します。日常作業で不安定感と脱力が出る例では、動作指導と外側支持機構の筋力強化を行い、症状が続く場合は医師に評価を依頼します。
✗ 1. 誤り
輪状靱帯の亜脱臼
輪状靱帯が橈骨頭から逸脱して腕橈関節に介在するのは幼小児の肘内障の機序で、手を引っぱられるといった牽引力で起こります。好発年齢は5歳前後、症状は前腕回内位・肘軽度屈曲位のまま動かさないというもので、成人の反復性の後外方亜脱臼を説明する病態ではありません。
✗ 2. 誤り
外側側副靱帯の緊張
靱帯が緊張していれば関節は安定します。亜脱臼を起こす原因になるのは「緊張」ではなく破綻・弛緩です。この選択肢は言葉の向きが逆になっており、機序として成立しません。
✗ 3. 誤り
内側側副靱帯の弛緩
内側側副靱帯(とくに前斜走線維)が緩むと、外反ストレスに対する動揺性、すなわち外反不安定性が生じます。投球障害肘で問題になるのがこれです。しかし動揺の向きは「外反」であって、橈骨頭が後外方へ回旋しながらずれるという現象は説明できません。
ポイント
  • 橈骨頭の後外方への亜脱臼=後外側回旋不安定症。責任靱帯は外側尺側側副靱帯。
  • 誘発法は「前腕回外+軸圧+外反」(外側ピボットシフト)。設問文の検査手順そのものが答えのヒント。
  • 小児期の肘骨折後の内反肘変形は、外側支持機構への負担を通じて遅発性の不安定性の背景になる。
  • 内側側副靱帯の弛緩は「外反不安定性」。方向が違うので混同しない。
  • 輪状靱帯の逸脱は幼小児の肘内障。年齢と受傷機転(牽引)で切り分ける。
比較表
靱帯・構造破綻したときの不安定性代表的な病態
外側尺側側副靱帯後外側回旋不安定性(橈骨頭が後外方へ)肘の後外側回旋不安定症
内側側副靱帯(前斜走線維)外反不安定性投球障害肘、外反ストレス障害
輪状靱帯橈骨頭からの逸脱・介在幼小児の肘内障
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