学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §24 臨床実地問題 / QJ32P113

理由で解く 柔道整復師

QJ32P113 柔道整復理論

出典:第32回柔道整復師国家試験(2024)午後 問113
問題
35歳の男性。板前をしている。約1か月前、調理中に右前腕近位橈側に違和感を自覚し、その後に指が動きにくくなったとのことで来所した。第 2~5MP 関節の伸展が不能であった。感覚障害はみられない。他に考えられる症状はどれか。
選択肢
1 母指橈側外転不能
2 フローマン徴候陽性
3 つまみ動作不能
4 ティアドロップサイン陽性
解答
正解1(母指橈側外転不能)
解説

前腕近位橈側の違和感に続いて第2〜5MP関節の伸展が不能になり、感覚障害はない――後骨間神経(橈骨神経深枝)の麻痺です。同じ神経に支配される長母指外転筋も働かなくなるため、母指の橈側外転ができなくなります。

橈骨神経は肘の前外側で浅枝(感覚)と深枝(運動)に分かれ、深枝は回外筋の中(フローゼのアーケード)を通って後骨間神経となります。この高さで絞扼されると運動枝だけが障害されるので、感覚障害を伴わずに指の伸展障害が出るのが特徴です。長・短橈側手根伸筋は分岐より近位で支配を受けるため手関節の背屈は保たれ、下垂手ではなく下垂指(drop finger)になります。後骨間神経が支配するのは総指伸筋・示指伸筋・小指伸筋・尺側手根伸筋に加え、長母指外転筋・短母指伸筋・長母指伸筋です。したがって「指が伸ばせない」の裏返しとして、母指を橈側へ開く動きも失われます。前腕近位橈側の違和感という発症部位も、回外筋部での絞扼に一致します。

✓ 1. 正しい
母指橈側外転不能
母指の橈側外転(手掌と同じ平面で母指を橈側に開く動き)を主に担うのは長母指外転筋で、これは後骨間神経支配です。第2〜5指の伸展を担う総指伸筋と同じ神経なので、同時に障害されます。手掌に対して母指を垂直に立てる掌側外転は短母指外転筋(正中神経)の働きで、別物として区別してください。
✗ 2. 誤り
フローマン徴候陽性
フローマン徴候は母指内転筋(尺骨神経支配)の麻痺で現れます。紙を母指と示指ではさませると、内転筋が使えないぶん長母指屈筋で代償するため母指IP関節が屈曲してしまう、という所見です。尺骨神経麻痺では小指側の感覚障害も伴うのが普通で、感覚障害のない本例とは合いません。
✗ 3. 誤り
つまみ動作不能
母指と示指の指尖でつまむ動作(きれいな丸をつくる動作)ができなくなるのは、長母指屈筋と示指の深指屈筋を支配する前骨間神経の麻痺です。障害されるのは屈筋側で、伸展が不能になっている本例とは責任神経が異なります。
✗ 4. 誤り
ティアドロップサイン陽性
選択肢3と同じく前骨間神経麻痺の所見で、つまもうとすると母指IPと示指DIPが伸びたままになり、指の間の空間が涙のしずく型になる現象です。伸筋群の麻痺である本例では現れません。
ポイント
  • 後骨間神経麻痺=運動枝のみの障害。感覚障害を伴わない指の伸展不能が決め手。
  • 手関節背屈は残る(長・短橈側手根伸筋は温存)。だから下垂手ではなく下垂指。
  • 後骨間神経は長母指外転筋・短母指伸筋・長母指伸筋も支配。母指の橈側外転不能が同時に出る。
  • 橈側外転=長母指外転筋(後骨間神経)/掌側外転=短母指外転筋(正中神経)。この対比を必ずセットで覚える。
  • フローマン=尺骨神経、つまみ動作不能・ティアドロップ=前骨間神経。神経ごとに徴候を紐づけて整理する。
比較表
神経代表的な麻痺の形特徴的な徴候感覚障害
後骨間神経(橈骨神経深枝)下垂指(MP関節伸展不能)母指橈側外転不能、手関節背屈は可能なし
橈骨神経本幹(上腕部)下垂手手関節背屈も不能手背橈側にあり
前骨間神経母指IP・示指DIPの屈曲不能つまみ動作不能、ティアドロップサインなし
尺骨神経鷲手フローマン徴候小指側にあり
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