学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §24 臨床実地問題 / QJ32P104

理由で解く 柔道整復師

QJ32P104 柔道整復理論

出典:第32回柔道整復師国家試験(2024)午後 問104
問題
67歳の男性。転倒して縁石に前胸部を強打し、強い痛みを自覚した。来所時、背中を丸めるような姿勢をとり、ゆっくりとした腹式呼吸で、前胸部中央に著明な皮下出血と腫脹がみられた。合併症で考えられないのはどれか。
選択肢
1 血胸
2 肋骨骨折
3 第10 胸椎神経根障害
4 縦隔臓器の損傷
解答
正解3(第10 胸椎神経根障害)
解説

前胸部中央の著明な皮下出血・腫脹と、背中を丸めてゆっくりとした腹式呼吸をする防御姿勢から、胸骨骨折(および肋骨骨折)が疑われる。合併症は胸郭の中身、すなわち胸腔・縦隔に及ぶが、第10胸椎神経根は臍の高さを支配しており、前胸部中央への外力では障害されにくい。

胸骨骨折は前胸部への直達外力のほか、脊柱の急激な過屈曲による介達外力でも生じる。胸郭を動かすと骨折部がずれて痛むため、患者は胸式呼吸を避けてゆっくりとした(浅くなりがちな)腹式呼吸となり、体幹を丸めて胸郭の動きを抑える姿勢をとる。この所見自体が胸骨・肋骨損傷を示唆するサインである。柔道整復師が最も注意すべきなのは、胸骨のすぐ後方に心臓・大血管・気管・食道が並んでいる点で、心挫傷や大血管損傷、血胸・気胸を伴えば生命に関わる。デルマトームの目安は、胸骨角の高さがおよそ第2胸神経、乳頭線が第4胸神経、剣状突起が第6胸神経、臍が第10胸神経である。本例では呼吸状態・脈拍・血圧・チアノーゼの有無を確認し、必要な安静を保ったまま速やかに医療機関へつなぐ。

✓ 3. これが正答(合併症として考えられない)
第10 胸椎神経根障害
第10胸神経の皮膚分節は臍の高さで、前胸部中央からは大きく離れている。前胸部を打った外力が第10胸椎レベルの神経根を直接傷めることは考えにくく、本例の受傷機転から予測される合併症ではない。神経根障害を考えるなら、外力の加わった高さに対応する肋間神経(おおむね第2〜第6胸神経領域)の症状を確認する。
✗ 1. 合併症として起こりうる(答えではない)
血胸
折れた肋骨や胸骨の骨折端が肋間動静脈・内胸動脈・肺実質を損傷すると、胸腔内に出血が貯留して血胸となる。呼吸困難、患側呼吸音の減弱、頻脈・血圧低下が現れ、量が多ければ緊急処置を要する。前胸部強打で十分に起こりうるため、答えにはならない。
✗ 2. 合併症として起こりうる(答えではない)
肋骨骨折
前胸部への直達外力は胸骨だけでなく、これに連なる肋軟骨や肋骨にも及ぶ。連続する3本以上の肋骨がそれぞれ2か所以上で折れるとフレイルチェスト(動揺胸郭)となり、吸気時に損傷部が陥凹する奇異呼吸を示す。胸骨骨折と肋骨骨折は併存しやすい組み合わせで、答えにはならない。
✗ 4. 合併症として起こりうる(答えではない)
縦隔臓器の損傷
胸骨の直後は縦隔で、心臓・大血管・気管・食道が位置する。強い前胸部打撲では心挫傷、心タンポナーデ、大動脈損傷、気管・食道損傷が起こりうる。これらは受傷直後に症状がはっきりしないこともあるため、バイタルサインの推移を確認しながら医療機関での精査につなぐことが重要で、答えにはならない。
ポイント
  • 「背中を丸める姿勢」「ゆっくりとした腹式呼吸」は胸郭の動きを抑える防御姿勢で、胸骨・肋骨損傷を示唆する。
  • 胸骨骨折は前胸部への直達外力に加え、脊柱の過屈曲による介達外力でも発生する。
  • 胸骨の直後は縦隔(心臓・大血管・気管・食道)。心挫傷・大血管損傷・血胸・気胸・フレイルチェストが要注意の合併症。
  • フレイルチェスト(動揺胸郭)=連続する3本以上の肋骨がそれぞれ2か所以上で骨折+奇異呼吸。本数と骨折箇所の条件をセットで覚える。
  • デルマトームの目安:胸骨角=第2胸神経、乳頭線=第4胸神経、剣状突起=第6胸神経、臍=第10胸神経。前胸部中央の外傷で第10胸神経根症状は説明できない。
  • 呼吸状態・脈拍・血圧・皮膚色を確認し、安静を保って速やかに医療機関へ搬送・紹介する。
比較表
神経根の高さ体表の目安(デルマトーム)
第2胸神経(Th2)胸骨角の高さ
第4胸神経(Th4)乳頭線
第6胸神経(Th6)剣状突起
第10胸神経(Th10)
第12胸神経(Th12)鼠径部
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