学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §24 臨床実地問題 / QJ32P103

理由で解く 柔道整復師

QJ32P103 柔道整復理論

出典:第32回柔道整復師国家試験(2024)午後 問103
問題
60歳の女性。自宅の庭で転倒し受傷した。医科にて橈骨遠位端骨折と診断され固定を行った。固定除去後、手部に疼痛、腫脹、熱感が生じてきた。考えられるのはどれか。
選択肢
1 骨化性筋炎
2 阻血性壊死
3 脂肪塞栓症候群
4 複合性局所疼痛症候群
解答
正解4(複合性局所疼痛症候群)
解説

橈骨遠位端骨折の固定を外したあと、手部に疼痛・腫脹・熱感が出てきた経過である。骨折の程度では説明のつかない症状が続いており、複合性局所疼痛症候群(CRPS)を第一に考える。

CRPSは、外傷や長期固定をきっかけに局所の炎症反応と交感神経系の反応が過剰・遷延して起こる病態である。橈骨遠位端骨折は高齢女性に多く、手関節を数週間固定するため手指・肘・肩を動かさない期間が生じやすく、CRPSの代表的な発生母地となる。特徴は「損傷の程度に見合わない持続痛」「腫脹」「皮膚温・皮膚色の変化」「発汗異常」「関節可動域制限」で、進行するとX線で斑状の骨萎縮(ズデック骨萎縮)がみられる。予防の要点は、固定をMP関節が自由に動く範囲にとどめること、患肢を心臓より高く保って浮腫を減らすこと、固定中から手指・肘・肩の自動運動を続けることである。本例のように固定除去後に症状が出た場合は、疼痛の少ない範囲での自動運動と浮腫管理を継続しながら、早めに医師へ情報提供し評価を受ける。

✓ 4. 正しい
複合性局所疼痛症候群
固定除去後という時期、手部という骨折部より遠位に広がる症状、そして疼痛・腫脹・熱感という三つが揃う点が決め手になる。骨癒合が進む時期に痛みが軽くなるどころか強まり、皮膚温上昇(熱感)や腫脹を伴うのはCRPSの典型的な立ち上がり方である。橈骨遠位端骨折はCRPSの発生頻度が高い骨折として知られており、本例の年齢・性別も合致する。
✗ 1. 誤り
骨化性筋炎
骨化性筋炎は、筋・軟部組織内の血腫が器質化して異所性に骨化するもので、上腕骨顆上骨折や肘関節脱臼のあとの肘関節周囲が代表的な好発部位である。強引な他動運動や反復するマッサージが誘因となり、硬い腫瘤の触知と可動域制限が主な所見になる。橈骨遠位端骨折後に手部全体が腫れて熱をもつという経過とは、部位も所見も一致しない。
✗ 2. 誤り
阻血性壊死
阻血性壊死は骨への血行が乏しい部位で起こる合併症で、手根舟状骨(近位骨片)、大腿骨頭、距骨体部などが代表である。橈骨遠位端は海綿骨が主体で血行に富み、壊死は問題になりにくい。また壊死は経過とともに徐々に疼痛や可動域制限を来すもので、熱感を伴う急な腫脹という炎症様の所見にはならない。
✗ 3. 誤り
脂肪塞栓症候群
脂肪塞栓症候群は、大腿骨など長管骨の骨折や骨盤骨折の受傷後おおむね24〜72時間以内に、骨髄脂肪が血流に入って肺や脳の毛細血管を閉塞する全身性の病態である。呼吸困難、意識障害、前胸部・腋窩・眼瞼結膜の点状出血が三徴で、生命に関わる。局所の合併症ではなく、発症時期も固定除去後という本例の経過と全く合わない。
ポイント
  • CRPSは「損傷の程度に見合わない持続痛+腫脹+皮膚温・色調の変化+発汗異常+可動域制限」で疑う。進行例ではX線で斑状骨萎縮(ズデック骨萎縮)。
  • 好発は橈骨遠位端骨折後の手部と、足関節周囲外傷後の足部。長期固定と不動が最大の背景因子。
  • 予防と対応は、固定をMP関節が動く範囲にとどめる・患肢挙上・固定中からの手指と肩の自動運動。症状が出たら早期に医師へ紹介する。
  • 骨化性筋炎は肘周囲の異所性骨化、阻血性壊死は血行の乏しい骨(舟状骨・大腿骨頭・距骨)、脂肪塞栓は長管骨骨折直後の全身症状と、部位・時期で区別する。
比較表
病態発生の時期起こりやすい部位・状況主な所見
複合性局所疼痛症候群固定中〜固定除去後橈骨遠位端骨折後の手部、足関節外傷後の足部不釣り合いな持続痛、腫脹、熱感・皮膚色変化、発汗異常、可動域制限
骨化性筋炎受傷数週以降肘関節周囲(顆上骨折・肘関節脱臼後)硬い腫瘤の触知、可動域制限
阻血性壊死数か月後に顕在化手根舟状骨、大腿骨頭、距骨体部徐々に増す疼痛、可動域制限、X線の骨硬化像
脂肪塞栓症候群受傷後24〜72時間大腿骨骨幹部骨折、骨盤骨折呼吸困難、意識障害、点状出血(全身症状)
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