学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §24 臨床実地問題 / QJ31P122

理由で解く 柔道整復師

QJ31P122 柔道整復理論

出典:第31回柔道整復師国家試験(2023)午後 問122
問題
42歳の男性。マラソン愛好家。ランニング後に右足底踵部のしびれを自覚し、1か月間症状が変わらないため来所した。足趾を他動的に背屈しても症状に変化はなかったが、その際に内果部に当てた検者の母指の圧迫によって症状が増悪した。超音波観察を行ったところ、同部に境界明瞭な低エコーの腫瘤がみられた。考えられるのはどれか。
選択肢
1 足底腱膜炎
2 踵骨疲労骨折
3 ガングリオン
4 モートン(Morton)病
解答
正解3(ガングリオン)
解説

内果部の圧迫で足底踵部のしびれが増悪し、同部に境界明瞭な低エコーの腫瘤がみられることから、足根管内のガングリオンによる脛骨神経の圧迫(足根管症候群)が考えられる。正しいのは3である。

足根管は内果の後下方にあり、屈筋支帯(足根管支帯)に覆われて後脛骨筋腱・長趾屈筋腱・後脛骨動静脈・脛骨神経・長母趾屈筋腱が通る。ここで脛骨神経が圧迫されると、支配領域である足底のしびれ・灼熱感が生じる。本例で決め手になる所見は3つある。第1に、足趾を他動的に背屈しても症状が変わらない点。足底腱膜の緊張で誘発される足底腱膜炎とは病態が異なることを示す。第2に、内果部を圧迫すると症状が増悪する点。これは神経の絞扼部を叩打・圧迫すると放散する症状が出るティネル徴候と同じ意味を持ち、絞扼部位が足根管であることを示す。第3に、境界明瞭な腫瘤が超音波で確認できる点。占拠性病変が神経を圧迫していることを示唆する。したがって、症状の再現部位と画像所見が一致するガングリオンが最も妥当である。腫瘤による神経圧迫が疑われる場合は自己流のマッサージや強い圧迫を続けず、医療機関での画像評価と治療方針の決定につなぐ。

✓ 3. 正しい
ガングリオン
関節包や腱鞘に由来する嚢腫性の腫瘤で、超音波では境界明瞭な低〜無エコーの腫瘤として描出される。足根管内に生じると脛骨神経を圧迫し、足底のしびれをきたす。内果部の圧迫で症状が増悪したことと、同部位に腫瘤が確認されたことが一致しており、本例に最も合致する。
✗ 1. 誤り
足底腱膜炎
足底腱膜炎の典型は踵骨内側結節付近の圧痛と、起床時第一歩や運動開始時の踵部痛である。足趾を他動的に背屈して足底腱膜を緊張させると症状が誘発されるが、本例では変化がなかった。しびれが主症状である点、腫瘤がみられる点も合わない。
✗ 2. 誤り
踵骨疲労骨折
踵骨疲労骨折では荷重時痛が主体で、踵骨を内外側から挟み込むように圧迫すると痛みが誘発される。症状の中心は痛みであってしびれではなく、内果部の圧迫で増悪することも、境界明瞭な腫瘤が描出されることも説明できない。
✗ 4. 誤り
モートン(Morton)病
モートン病は主に第3・4中足骨頭間で足底趾神経が絞扼される病態で、症状は前足部から足趾にかけての疼痛・しびれである。中足骨頭部を横方向から圧迫して誘発する。本例の症状部位は足底の踵部であり、絞扼部位も症状部位も異なる。
ポイント
  • 足根管は内果後下方にあり、屈筋支帯の下を脛骨神経・後脛骨動静脈・屈筋腱群が通る。
  • 脛骨神経が圧迫されると足底のしびれ・灼熱感が生じる(足根管症候群)。
  • 内果部の圧迫・叩打で症状が放散・増悪すればティネル徴候陽性として絞扼部位を特定できる。
  • 足趾の他動背屈で症状が変わらないことは、足底腱膜の緊張による病態の否定に働く。
  • 足根管症候群の原因にはガングリオンなどの占拠性病変があり、超音波で境界明瞭な腫瘤として確認できる。腫瘤が疑われれば医療機関の画像評価へつなぐ。
比較表
疾患症状の部位主症状誘発・確認方法
足根管症候群(ガングリオンによる)足底(踵部を含む)しびれ・灼熱感内果後下方の圧迫・叩打で放散、超音波で境界明瞭な腫瘤
足底腱膜炎踵骨内側結節〜足底起床時第一歩・運動開始時の痛み足趾他動背屈で足底腱膜を緊張させて誘発
踵骨疲労骨折踵部荷重時痛踵骨を内外側から挟み込む圧迫で誘発
モートン病前足部(第3・4趾間が多い)疼痛・しびれ中足骨頭部の横方向圧迫で誘発
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