学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §24 臨床実地問題 / QJ31P121

理由で解く 柔道整復師

QJ31P121 柔道整復理論

出典:第31回柔道整復師国家試験(2023)午後 問121
問題
17歳の女性。バスケットボール試合中に右膝前十字靱帯を負傷し、3 週後に再建術を受けた。図は術後8週での2本のゴムバンドを用いた大腿四頭筋の等張運動である。下腿近位に当てたゴムバンドの役割はどれか。
図
選択肢
1 側方動揺性の制御
2 膝蓋骨の安定化
3 脛骨の前方移動抑制
4 膝蓋靱帯の固定
解答
正解3(脛骨の前方移動抑制)
解説

大腿四頭筋が収縮すると、膝蓋腱を介して脛骨が前方へ引き出される剪断力が生じ、再建した前十字靱帯(ACL)に伸張ストレスがかかる。下腿近位に当てたゴムバンドは、この脛骨の前方移動を抑える役割を担う。正しいのは3である。

ACLは脛骨が大腿骨に対して前方へずれるのを止める靱帯である。膝を伸ばす運動(オープンキネティックチェーンでの膝伸展)では、とくに伸展終末域に近づくほど大腿四頭筋の張力が脛骨を前方へ引く成分として働き、再建靱帯(グラフト)に負担が集中する。術後8週はグラフトが母床に生着していく途中の時期で、筋力回復は進めたいが靱帯への過度な伸張は避けたい。そこで下腿近位に外部から後方向きの力を加えておくと、大腿四頭筋が生む前方剪断力が打ち消され、グラフトを保護しながら等張性の筋力トレーニングを行える。同じ理屈で、ハムストリングスの共同収縮や、荷重下で行う運動(クローズドキネティックチェーン)も脛骨の前方移動を抑える方向に働く。運動の負荷や範囲は術者の指示とプロトコルに従い、疼痛・腫脹・不安定感が出た場合は運動を中断して主治医に報告するよう指導する。

✓ 3. 正しい
脛骨の前方移動抑制
下腿近位という位置は、脛骨を後方へ押す力を最も効率よく加えられる場所である。大腿四頭筋収縮に伴う脛骨の前方引き出し力を相殺することで、再建靱帯への伸張ストレスを減らしながら筋力トレーニングを進められる。設問文の「下腿近位に当てた」という条件が、そのまま答えの根拠になっている。
✗ 1. 誤り
側方動揺性の制御
内反・外反方向の動揺は内側・外側側副靱帯が制動するもので、この運動で問題になっている前方剪断力とは方向が異なる。1本のゴムバンドで下腿近位に前後方向の張力を与えても、側方動揺性を制御することはできない。
✗ 2. 誤り
膝蓋骨の安定化
膝蓋骨の安定化を目的とするなら、テーピングや装具で膝蓋骨そのものを支持する必要がある。バンドが当てられているのは膝蓋骨ではなく下腿近位であり、目的とする対象が異なる。
✗ 4. 誤り
膝蓋靱帯の固定
膝蓋靱帯は膝蓋骨下端から脛骨粗面へ至る短い靱帯で、これを「固定」しても大腿四頭筋が脛骨を前方へ引く力は打ち消せない。狙いは腱そのものの制動ではなく、脛骨という骨の前方移動を抑えることにある。
ポイント
  • ACLは脛骨の前方移動を制動する靱帯。再建後はこの方向のストレスを避けることが最優先。
  • 大腿四頭筋の収縮は膝蓋腱を介して脛骨を前方へ引く剪断力を生む(とくに伸展終末域)。
  • 下腿近位に後方向きの力を加えると、この前方剪断力を相殺できる。
  • ハムストリングスの共同収縮や荷重下の運動(CKC)も脛骨前方移動を抑える方向に働く。
  • 負荷や可動範囲は術後プロトコルに従い、疼痛・腫脹・不安定感が出れば中断して主治医に報告する。
比較表
条件脛骨に働く力の向き再建靱帯への影響
大腿四頭筋の収縮(膝伸展)前方へ引き出すACL再建例では負担が増える
ハムストリングスの収縮後方へ引くACL再建例では保護的に働く
下腿近位への後方向きの外力(ゴムバンド)前方移動を打ち消すACL再建例で保護的に働く
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