学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §18 各論(脱臼) 頭部・体幹 / QJ31P092

理由で解く 柔道整復師

QJ31P092 柔道整復理論

出典:第31回柔道整復師国家試験(2023)午後 問92
問題
顎関節脱臼の整復で正しいのはどれか。
選択肢
1 ヒポクラテス法では術者は患者の後方に位置する。
2 口外法では術者の母指球部をオトガイ部にあてる。
3 整復中は患者に発声しないよう指示する。
4 整復後はオトガイ部を把持する。
解答
正解4(整復後はオトガイ部を把持する。)
解説

顎関節脱臼の整復では、整復が完了した瞬間に患者が反射的に閉口するため、術者は口腔内の母指を素早く逃がし、そのままオトガイ部を把持して下顎を保持する。正しいのは4である。

顎関節前方脱臼は、大あくびや長時間の開口処置などで下顎頭が関節結節を越えて前方に移動し、咀嚼筋(咬筋・側頭筋)の緊張で戻れなくなった状態である。整復の要点は、筋の緊張をできるだけ取り除いたうえで、下顎頭を「下方へ下げてから後方へ導き、最後に上方へ収める」という順で誘導することにある。口内法のヒポクラテス法では、術者は患者の前方に立ち、ガーゼを巻いた両母指を下顎の臼歯部咬合面に置き、他の指で下顎体・オトガイ部を把持して操作する。整復されると咀嚼筋が一気に働いて閉口するため、母指を臼歯の外側へ滑らせて咬まれないようにし、続けてオトガイ部を支える。整復後は再脱臼しやすいので、包帯やバンドで下顎を保持し、大きな開口や硬い食物を避けるよう具体的に指導する。

✓ 4. 正しい
整復後はオトガイ部を把持する。
下顎頭が関節窩へ戻ると強い閉口が起こる。術者は母指を臼歯の外側へ滑らせて退避させ、間を置かずオトガイ部を把持して下顎を閉口位に保持する。この保持があることで、整復直後の再脱臼を防ぎつつ、開口量の確認や固定へ安全に移行できる。
✗ 1. 誤り
ヒポクラテス法では術者は患者の後方に位置する。
ヒポクラテス法は口内法で、患者を椅子に座らせ、術者は患者の前方に位置して行う。前方に立つからこそ、両母指を口腔内の臼歯部に置き、他の指で下顎を把持して下方・後方・上方の三段階の誘導を一連の動作で行える。
✗ 2. 誤り
口外法では術者の母指球部をオトガイ部にあてる。
口外法は口腔内に指を入れずに行う方法で、母指は頬の外側から下顎の臼歯部の高さに当てて下方へ圧を加え、他の指でオトガイ部を支えて下顎を後上方へ導く。母指球でオトガイ部を押す操作ではなく、当てる部位と力の向きが記載と一致しない。
✗ 3. 誤り
整復中は患者に発声しないよう指示する。
整復の障害になるのは咀嚼筋の緊張である。声を出させると顎の力が抜けやすく、術者の誘導に合わせて筋が弛緩する。発声を禁じるのではなく、「肩の力を抜いて声を出してください」と声かけしながら、緊張が緩む瞬間に合わせて操作するのが実際的である。
ポイント
  • 顎関節前方脱臼は下顎頭が関節結節を越えて前方へ移動し、咀嚼筋の緊張で復位できなくなった状態。
  • 整復の誘導順は「下方→後方→上方」。まず下顎頭を関節結節より低く下げるのが要点。
  • ヒポクラテス法(口内法)は術者が患者の前方に位置し、両母指を臼歯部咬合面に、他指で下顎体・オトガイ部を把持する。
  • 整復完了時は反射的に閉口するため、母指を臼歯の外側へ退避させ、オトガイ部を把持して保持する。
  • 整復後は再脱臼しやすい。固定とともに、大あくび・硬い食物を避けるよう具体的に指導する。
比較表
口内法(ヒポクラテス法)口外法
術者の位置患者の前方患者の前方
母指を当てる部位口腔内、下顎臼歯部の咬合面(ガーゼを巻く)口腔外、頬側から下顎臼歯部の高さ
他の指下顎体・オトガイ部を把持オトガイ部を支えて後上方へ導く
注意点整復時に母指を咬まれないよう外側へ退避口腔内に指を入れないため咬傷の危険が少ない
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