学習トップ理由で解く 柔道整復師整形外科学 ▸ §15 部位別各論 体幹 / QJ31P063

理由で解く 柔道整復師

QJ31P063 整形外科学

出典:第31回柔道整復師国家試験(2023)午後 問63
問題
腰部脊柱管狭窄症で陽性となるテストはどれか。
選択肢
1 ケンプ
2 アドソン
3 ジャクソン
4 スパーリング
解答
正解1(ケンプ)
解説

腰部脊柱管狭窄症は「腰を反らせると症状が出て、前かがみになると楽になる」のが最大の特徴です。ケンプテストはその反らせる動きを診察室で再現する手技なので、陽性となります。

脊柱管狭窄症の本態は、椎間関節の肥厚・黄色靱帯の肥厚・椎間板の膨隆という三つの静的因子によって、馬尾や神経根の通り道が狭くなることです。ここに動的因子が加わります。腰椎を伸展させると、肥厚した黄色靱帯が脊柱管内へたわみ出て(buckling)狭窄がさらに強まり、同時に椎間孔も上下に狭くなるため、神経が圧迫されて下肢の痛みやしびれが誘発されます。逆に前屈すると黄色靱帯が引き伸ばされてたわみが解消し、椎間孔も広がるので症状が和らぎます。つまり「肥厚は静的な狭窄の土台、たわみは伸展で上乗せされる動的な悪化要因」と押さえておくと混乱しません。歩くと下肢がしびれて歩けなくなるが前かがみで休むと回復する(間欠跛行)、自転車なら前傾姿勢のため長く乗れる、という所見もすべてこの理屈から説明できます。残る3つは頚部・上肢を対象としたテストで、腰部の評価には用いません。まず「どの部位のテストか」で仕分けると迷いません。

✓ 1. 正しい
ケンプ
立位または座位で体幹を後方へ反らせながら、患側へ側屈・回旋させる手技です。この肢位は椎間孔が最も狭くなる姿勢で、下肢への放散痛やしびれが出れば陽性とします。腰部脊柱管狭窄症のほか、腰椎椎間板ヘルニアによる神経根症状の誘発にも用いられます。
✗ 2. 誤り
アドソン
胸郭出口症候群、なかでも前斜角筋と中斜角筋の間(斜角筋隙)での鎖骨下動脈・腕神経叢の絞扼をみるテストです。頭部を患側へ回旋・伸展させて深呼吸させ、橈骨動脈の拍動が減弱するかを確認します。評価しているのは上肢へ向かう血管と神経束であり、腰部の神経の通り道とは関係がありません。
✗ 3. 誤り
ジャクソン
頚椎を後屈させた状態で頭部を上から圧迫し、上肢への放散痛をみる椎間孔圧迫テストです。「伸展させて椎間孔を狭める」という発想はケンプと同じですが、狭くしているのは頚椎の椎間孔なので、判定できるのは頚部神経根症です。腰部脊柱管狭窄症の陽性所見にはなりません。
✗ 4. 誤り
スパーリング
頚椎を後屈させ、さらに患側へ側屈・回旋させて頭部を圧迫し、上肢への放散痛をみるテストです。手技の組み立ては「ケンプの頚椎版」と考えると覚えやすいのですが、対象は頚部神経根症であり、腰部の評価には使いません。
ポイント
  • 腰部脊柱管狭窄症の静的な狭窄因子は、椎間関節の肥厚・黄色靱帯の肥厚・椎間板の膨隆の三つ。黄色靱帯は「肥厚」であって「たるみ」ではない。
  • 動的因子は伸展時のたわみ(buckling)。肥厚した黄色靱帯が脊柱管内へたわみ出て狭窄が増強するため、伸展で悪化・前屈で軽快する。ケンプテストはこの伸展位を再現するので陽性になる。
  • 部位で仕分ける。ケンプ=腰椎、ジャクソン・スパーリング=頚椎、アドソン=胸郭出口(斜角筋隙)。
  • ケンプとスパーリングは「伸展+側屈+回旋で椎間孔を狭める」まったく同じ原理。違いは腰か頚かだけ。
  • アドソンだけは神経根ではなく鎖骨下動脈・腕神経叢の絞扼をみるテストで、橈骨動脈拍動の減弱を指標にする。
  • 会陰部のしびれ・排尿排便障害・両下肢の進行する筋力低下があれば馬尾型を疑い、施術を継続せず速やかに医師へ紹介する。
  • 上記のレッドフラッグがないことを確認したうえで、腰を反らせない姿勢指導、歩行時に前かがみで休憩を挟む工夫、体幹屈曲位での運動から始める、といった対応につなげる。
比較表
テスト対象部位手技陽性が示すもの
ケンプ腰椎体幹を伸展+側屈・回旋腰部脊柱管狭窄症、腰椎椎間板ヘルニアなどの神経根症状
ジャクソン頚椎頚椎を後屈し頭部を圧迫頚部神経根症(椎間孔の狭小化)
スパーリング頚椎頚椎を後屈+患側へ側屈・回旋し圧迫頚部神経根症(椎間孔の狭小化)
アドソン胸郭出口(斜角筋隙)頭部を患側へ回旋・伸展し深呼吸胸郭出口症候群(橈骨動脈拍動の減弱)
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