学習トップ理由で解く 柔道整復師一般臨床医学 ▸ §21 臨床実地問題 / QJ31P045

理由で解く 柔道整復師

QJ31P045 一般臨床医学

出典:第31回柔道整復師国家試験(2023)午後 問45
問題
76歳の男性。1年前から、直前の食事の内容が思い出せないことや物をよく失くしてしまうこと、慣れていない道で迷ってしまうようになったことを家族から指摘されている。物取られ妄想もみられた。この患者でみられるのはどれか。
選択肢
1 動作が緩慢で転倒しやすい。
2 他人に対して遠慮ができず暴力をふるう。
3 自分の部屋に黒い服を着た人が立って、じっと自分を見ていると訴える。
4 質問に答えるときに、一緒にいる家族のほうをその都度振り返って確認する。
解答
正解4(質問に答えるときに、一緒にいる家族のほうをその都度振り返って確認する。)
解説

近時記憶障害・地誌的見当識障害・物盗られ妄想からアルツハイマー型認知症が想定され、同型で高頻度にみられる振り向き徴候(head turning sign)が該当する。正答は4。

アルツハイマー型認知症は海馬から側頭頭頂葉にかけての変性で始まるため、まず「新しいことを覚えておく」近時記憶が障害される。直前の食事内容を思い出せない、物を置いた場所が分からず失くす、慣れない道で迷う(地誌的見当識障害)、そして失くした物を誰かに盗られたと訴える物盗られ妄想は、いずれも本症の典型経過である。答えられない質問をされたときに同伴の家族の方を振り返って助けを求める仕草を振り向き徴候といい、自分の記憶の頼りなさを他者で補おうとする行動として本症で高頻度に観察される。認知症は「記憶障害などの中核症状」に「その疾患らしい特徴的所見」を重ねて鑑別する。

✓ 4. 正しい
質問に答えるときに、一緒にいる家族のほうをその都度振り返って確認する。
振り向き徴候(head turning sign)である。記憶の欠落を家族に補ってもらおうとする行動で、アルツハイマー型認知症の診察場面で高頻度にみられる。取り繕い反応とともに、本症を示唆する所見として知られる。
✗ 1. 誤り
動作が緩慢で転倒しやすい。
パーキンソニズムを示す記載であり、レビー小体型認知症やパーキンソン病に伴う認知症で早期から目立つ特徴である。本例は記憶障害と物盗られ妄想が前景であり、この所見を特徴とする病型とは異なる。
✗ 2. 誤り
他人に対して遠慮ができず暴力をふるう。
脱抑制であり、前頭葉が優位に障害される前頭側頭型認知症で特徴的である。人格変化、常同行動(同じ道順を繰り返す等)、食行動の変化を伴い、初期には記憶障害が目立ちにくい点で本例と異なる。
✗ 3. 誤り
自分の部屋に黒い服を着た人が立って、じっと自分を見ていると訴える。
具体的で生々しい人物の幻視であり、レビー小体型認知症の中核的特徴である。認知機能の変動、パーキンソニズム、レム睡眠行動障害を伴うことが多い。本例の物盗られ妄想(被害的な妄想)とは症状の質が異なる。
ポイント
  • アルツハイマー型認知症=近時記憶障害から始まり、地誌的見当識障害、物盗られ妄想、取り繕い反応を伴う。
  • 振り向き徴候(head turning sign)は、質問時に同伴者を振り返る行動で、アルツハイマー型を示唆する。
  • 具体的な人物の幻視・認知の変動・パーキンソニズム・レム睡眠行動障害=レビー小体型認知症。
  • 脱抑制・人格変化・常同行動=前頭側頭型認知症。
  • 階段状の悪化とまだら認知、片麻痺などの局所神経症状=血管性認知症。
比較表
認知症のタイプ初期に目立つ症状特徴的所見
アルツハイマー型近時記憶障害物盗られ妄想、地誌的見当識障害、振り向き徴候、取り繕い
レビー小体型具体的な幻視、認知の変動パーキンソニズム、レム睡眠行動障害、転倒しやすい
前頭側頭型人格変化・脱抑制常同行動、食行動の変化、初期は記憶が比較的保たれる
血管性まだら認知、意欲低下階段状の増悪、片麻痺・構音障害などの局所症状
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