学習トップ理由で解く 柔道整復師リハビリテーション医学 ▸ §5 リハビリテーションの治療 / QJ31P020

理由で解く 柔道整復師

QJ31P020 リハビリテーション医学

出典:第31回柔道整復師国家試験(2023)午後 問20
問題
プラスチック製短下肢装具で誤っているのはどれか。
選択肢
1 軽量である。
2 通気性が乏しい。
3 関節角度を制御しやすい。
4 加熱によって形の調整が可能である。
解答
正解3(関節角度を制御しやすい。)
解説

これは「誤っているものを選ぶ」設問。プラスチック製短下肢装具は軽く、加熱して形を直せるが、足継手をもたないものが多く足関節角度の設定・変更は苦手である。したがって「関節角度を制御しやすい」が誤りの記述=本問の答えは3

短下肢装具(AFO)は、腓骨神経麻痺による下垂足や脳卒中片麻痺の内反尖足などに用い、遊脚期のつま先の引っかかりと立脚期の足関節の不安定を防ぐ装具である。大きく金属支柱付きとプラスチック製に分かれる。プラスチック製の代表であるシューホーン型(靴べら型)は、陽性モデルから熱可塑性プラスチック(ポリプロピレンなど)を1枚で成形したもので、継手がなく、板のたわみによって背屈を補助する。角度は成形の時点で固定されてしまうため、装着後に「背屈○度〜底屈○度まで」といった可動範囲を段階的に設定・変更するのは難しい。一方、金属支柱付きではダブルクレンザック継手のようにネジとピンで背屈・底屈の制動角度をその場で調節できる。継手付きのプラスチック装具も市販されてはいるが、調節の自由度という点では金属支柱付きに及ばない。したがって、角度を細かく管理したい症例、痙縮が強い症例、浮腫で下腿周径が変動する症例では、金属支柱付き+調節式足継手を選ぶ、と整理しておくとよい。

✗ 1. 記述は正しい(答えではない)
軽量である。
プラスチック板1枚で構成され、金属支柱・足部あぶみ・靴の補強が不要なため軽い。靴の中に収まるので靴を選びやすく、外観もよい。歩行時のエネルギー消費が増えにくいことは、体力の落ちた高齢者や心肺機能に余裕のない例で大きな利点になる。
✗ 2. 記述は正しい(答えではない)
通気性が乏しい。
下腿後面から足底までを面で密着させる構造のため、汗がこもり蒸れやすい。夏季や発汗の多い人では、かぶれ・湿疹・浮腫の悪化を招くことがある。装具の下に薄い綿の靴下を着ける、通気孔を設ける、装着時間を分けて皮膚を乾かす、毎日発赤やびらんの有無を観察するといった対応を、装着指導の段階で具体的に伝えておくとよい。
✓ 3. これが答え(記述が誤り)
関節角度を制御しやすい。
角度制御はプラスチック製が不得意とする点で、金属支柱付きの利点である。プラスチック製(とくにシューホーン型)は足継手をもたず、足関節の角度は成形時に決まってしまうため、後から可動範囲を段階的に設定し直すことができない。細かく調節したい場合は、ダブルクレンザック継手などの調節式足継手を備えた金属支柱付き短下肢装具を選択する。プラスチック製で対応するなら、トリムライン(足関節部の削り込み線)の位置を変えて硬さ(たわみやすさ)を調整する、成形し直すといった方法をとる。ただしこれはあくまで硬さの調整であって、「背屈○度・底屈○度」という角度そのものを設定し直す操作ではない。
✗ 4. 記述は正しい(答えではない)
加熱によって形の調整が可能である。
素材が熱可塑性プラスチックなので、ヒートガン等で局所を加熱すれば、当たって痛む部位を逃がしたり、フィットを微調整したりできる。またトリムラインを削る位置を変えれば硬さも調整でき、足関節中心より後方へ削り込むほど支柱部が細くなってたわみやすくなり、背屈補助力・固定性は弱くなる。逆にトリムラインを前方に残すほど断面が大きくなって硬くなり、固定性が高くなる。適合を後から追い込めることは大きな長所で、装着後に発赤や疼痛が出た際は自己判断で無理に使い続けず、製作した義肢装具士や担当医に修正を依頼するよう伝える。
ポイント
  • 短下肢装具(AFO)の主な適応は下垂足(腓骨神経麻痺)内反尖足(脳卒中片麻痺)。遊脚期のつま先の引っかかりと立脚期の足関節不安定を防ぐ。
  • プラスチック製の長所=軽量・靴に収まる・外観がよい・加熱で修正できる・比較的安価
  • プラスチック製の短所=通気性が乏しい・下腿の太さの変化(浮腫)に対応しにくい・足関節角度の設定変更がしにくい・強い痙縮ではたわんで負けやすい
  • 角度を段階的に調節したいなら金属支柱付き+ダブルクレンザック継手。ネジとピンで背屈・底屈の制動角度をその場で変えられる。
  • シューホーン型(後方板ばね型)のトリムライン(足関節部の削り込み線)は、基準を足関節中心(内果と外果を結ぶ線)より前方か後方かで考える。前方にあるほど断面が大きく硬く、固定性が高い後方へ削り込むほど支柱部が細くなり、柔らかくたわみやすい
比較表
項目プラスチック製短下肢装具金属支柱付き短下肢装具
重量軽い重い
通気性乏しい(密着し蒸れやすい)よい(開放的)
足関節角度の調節成形時に決まり、後からの変更は困難ダブルクレンザック継手等でネジにより調節可能
形の修正加熱して修正、トリムライン変更で硬さ調整支柱の曲げ、継手の交換で対応
靴の中に入れて使用でき、靴を選べるあぶみを靴に取り付けるため専用靴が必要
下腿周径の変動(浮腫)対応しにくい対応しやすい
主な適応軽〜中等度の麻痺、浮腫が少ない例、外観を重視する例強い痙縮、浮腫・周径変動のある例、体重が重い例
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