学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §19 各論(脱臼) 上肢 / QJ30P089

理由で解く 柔道整復師

QJ30P089 柔道整復理論

出典:第30回柔道整復師国家試験(2022)午後 問89
問題
写真(別冊 No. 2)を別に示す。肩鎖関節上方脱臼の発生で外力が加わる部位はどれか。
図
選択肢
1 a
2 b
3 c
4 d
解答
正解4
解説

肩鎖関節上方脱臼は、肩峰部に上方から加わる直達外力で肩甲骨が下方へ押し下げられて起こる。別冊No.2の写真では、肩の最も外側上方(肩峰部)を上から下へ押す向きに描かれた d が正解である。

転倒して肩を下にして地面に打ちつけたり、肩の上外側を直接打たれたりすると、肩峰に上方から力が入り、肩甲骨全体が下方へ押し下げられる。鎖骨は胸鎖関節で体幹につながれてその場に留まるため、結果として鎖骨遠位端が相対的に上方へ突出する。つまり「鎖骨が上がる」のではなく「肩甲骨が下がる」現象である。損傷はまず肩鎖靱帯から始まり、外力が大きいと烏口鎖骨靱帯(円錐靱帯・菱形靱帯)まで断裂して完全脱臼(第3度)となる。所見は階段状変形と、突出部を押すと下がり離すと戻るピアノキーサインで、上肢を下垂させると変形が目立つ。なお本症の発生機序は肩峰部への直達外力が大部分を占め、手や肘をついた介達外力によるものはまれである。写真には外力の作用点と向きを示す4本の矢印が並んでいるので、「作用点が肩峰部か」「向きが上から下か」の2点で絞り込めばよい。

✓ 4. 正しい
d
d は、肩の輪郭が外側で下方へ折れ返る点、すなわち肩の最も外側上方=肩峰部を、上方から下方へ押す向きに描かれている。ここに直達外力が加わると肩甲骨が押し下げられ、肩鎖靱帯・烏口鎖骨靱帯が順に破綻して鎖骨遠位端が上方に取り残される。肩鎖関節上方脱臼の典型的な作用点と力の向きである。
✗ 1. 誤り
a
a は4本のうち唯一、下から上へ向かう矢印である。上方脱臼は肩峰を上から押し下げる力で生じるので、突き上げる向きの力では肩甲骨が下がらず、機序が成り立たない。下方から突き上げる外力で考えるのは、肩関節脱臼や、鎖骨遠位端が肩峰の下に入り込む肩鎖関節下方脱臼など別の型である。
✗ 2. 誤り
b
b は4本のうち最も内側、肩と頸部の移行部を指す矢印である。向きは下方だが、作用点が肩峰から内側へ離れるほど肩甲骨を下方へ押し下げる力にはならず、肩鎖関節を離開させる働きを持たない。
✗ 3. 誤り
c
c は肩の上面を、d より内側の位置で下方に押す矢印である。作用点が鎖骨の上にあり、ここへの上方からの直達外力で生じるのは鎖骨骨折(好発は中外1/3境界部)であって、肩鎖関節の上方脱臼ではない。
ポイント
  • 肩鎖関節上方脱臼は肩峰部への直達外力。肩甲骨が下がり、鎖骨が相対的に上方へ残る。
  • 損傷順序は肩鎖靱帯→烏口鎖骨靱帯(円錐靱帯・菱形靱帯)。
  • 所見は階段状変形とピアノキーサイン。上肢下垂位で変形が目立つ。
  • 発生機序は直達外力が大部分で、介達外力によるものはまれである。
  • 図で問われたら「作用点が肩峰部か」「向きが上から下か」の2点で絞る。
  • 烏口鎖骨靱帯まで断裂した完全脱臼は再転位しやすく、固定法の選択と医師との連携が要る。
比較表
分類(トッシー)損傷靱帯変形
第1度(捻挫)肩鎖靱帯の部分損傷変形なし、圧痛のみ
第2度(亜脱臼)肩鎖靱帯断裂+烏口鎖骨靱帯は部分損傷(不全断裂)軽度の階段状変形
第3度(完全脱臼)肩鎖靱帯+烏口鎖骨靱帯とも断裂明らかな階段状変形、ピアノキーサイン陽性
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