学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §24 臨床実地問題 / QJ29P116

理由で解く 柔道整復師

QJ29P116 柔道整復理論

出典:第29回柔道整復師国家試験(2021)午後 問116
問題
16歳の女子。自転車で転倒し、右母指が外転・伸展強制となり、同MP関節に強い疼痛が出現したため来所した。右母指にZ字型の変形と弾発性固定を認める。整復する際、最初に行う手技はどれか。
選択肢
1 末梢に牽引する。
2 過屈曲にする。
3 過伸展にする。
4 長軸圧をかける。
解答
正解3(過伸展にする。)
解説

母指MP関節背側脱臼の整復は、まず脱臼肢位である過伸展をさらに強めることから始める。先に牽引を加えると掌側板や種子骨が関節内に嵌まり込み、整復が難しくなる。

母指が外転・伸展を強制されると掌側板が中手骨頭から剝がれ、基節骨基部が中手骨頭の背側へ移動する。MP関節は過伸展、IP関節は屈曲となり、Z字型変形と弾発性固定を示す。整復の要点は、基節骨基部と中手骨頭の接触を最後まで離さないことである。まず過伸展を強めて基節骨基部を中手骨頭の背側面に押し当て、その接触を保ったまま基節骨基部を遠位・掌側へ滑らせるように屈曲させると、掌側板を巻き込まずに関節面が戻る。ここで長軸方向に強く牽引すると、中手骨頭と基節骨の間に掌側板・種子骨・長母指屈筋腱が入り込んで嵌頓し、徒手整復が困難な状態になる。整復後は掌側板の修復のためMP関節軽度屈曲位で固定し、過伸展を避けながら経過をみる。

✓ 3. 該当する(設問の答え)
過伸展にする。
最初に脱臼肢位である過伸展をさらに強め、基節骨基部を中手骨頭の背側面に確実に接触させる。この接触を保つことで、続く屈曲操作の際に掌側板や種子骨を関節内へ巻き込まずに整復できる。これが最初に行う手技である。
✗ 1. 該当しない
末梢に牽引する。
牽引を先に行うと関節面が離開し、その隙間に掌側板・種子骨・長母指屈筋腱が入り込んで嵌頓する恐れがある。牽引は行うとしても過伸展位で接触を保った後に軽く用いるにとどめ、順序を守る。
✗ 2. 該当しない
過屈曲にする。
屈曲は整復操作の最終段階で行うものである。最初から屈曲させると基節骨基部が中手骨頭を乗り越えられず整復されないため、過伸展を強めてから屈曲へ導く順序が必要となる。
✗ 4. 該当しない
長軸圧をかける。
過伸展位で基節骨を中手骨頭へ押し付ける操作は整復手技の一部だが、まず脱臼肢位を強める過伸展があって初めて意味をもつ。単独で最初に行う手技としては当てはまらない。
ポイント
  • 母指MP関節背側脱臼の変形はZ字型(MP過伸展・IP屈曲)と弾発性固定。
  • 整復の順序=①過伸展を強める → ②基節骨基部を中手骨頭に押し当て接触を保つ → ③遠位・掌側へ滑らせながら屈曲。
  • 先行する強い牽引は掌側板・種子骨・長母指屈筋腱の嵌頓を招くため避ける。
  • 整復の要点は「基節骨基部と中手骨頭の接触を離さない」こと。
  • 整復後はMP関節軽度屈曲位で固定し、過伸展を避けて掌側板の修復を待つ。
比較表
順序操作ねらい
1過伸展を強める基節骨基部を中手骨頭の背側面に接触させる
2接触を保ったまま長軸方向に軽く圧を加える関節面を離開させず、軟部組織の嵌入を防ぐ
3基節骨基部を遠位・掌側へ滑らせながら屈曲中手骨頭を乗り越えさせて整復する
避けたい操作最初に強い末梢牽引をかける掌側板・種子骨・屈筋腱が嵌頓し整復困難となる
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