学習トップ / 理由で解く 柔道整復師 / 柔道整復理論 ▸ §24 臨床実地問題 / QJ29P117
理由で解く 柔道整復師
投球を繰り返す高校生で、上肢を挙上位に保つとしびれが強まるのが主症状です。腱板ではなく神経・血管束の圧迫、すなわち胸郭出口症候群を示す所見であり、陽性になるのはモーリーテストです。
胸郭出口には狭い通路が3か所あります。前斜角筋・中斜角筋・第1肋骨で囲まれる斜角筋三角、鎖骨と第1肋骨のあいだの肋鎖間隙、烏口突起の下で小胸筋腱に覆われる小胸筋下間隙です。ここを腕神経叢と鎖骨下動静脈が通ります。大切なのは、どの間隙が狭くなるかは肢位で決まるという点です。上肢を挙上(過外転)位に保つと、神経血管束は烏口突起の下で小胸筋腱に押し当てられ、同時に引き伸ばされて圧迫が強まります。これが過外転症候群で、再現するのがライトテストです。洗髪・つり革・投球のトップ肢位といった「腕を上げ続ける動作」でしびれが出るのは、この小胸筋下間隙での絞扼によります。一方、肋鎖間隙が狭くなるのは肩甲帯を下制し後方へ引いた肢位で、胸を張らせて肩を後下方に引くエデンテストがこれにあたります(肋鎖症候群)。斜角筋三角での絞扼は、頸部を伸展・患側へ回旋させるアドソンテストで評価します。投球選手では斜角筋の緊張・肥厚や、なで肩・肩甲帯下制の姿勢が誘因になります。本症例で肩の屈曲・外転制限がなく大結節部の圧痛もないことは、腱板疾患や肩峰下滑液包炎を打ち消す重要な陰性所見です。対応としては、まず挙上位を長く保つ動作と投球量を減らし、斜角筋・小胸筋のストレッチと僧帽筋上部・肩甲挙筋など肩甲帯を引き上げる筋の強化、なで肩姿勢の修正を指導します。しびれが持続する、握力低下や手内在筋の萎縮が出る、上肢の色調変化があるといった場合は医療機関での精査につなぎます。
| 検査法 | 対象部位・疾患 | 方法と陽性所見 |
|---|---|---|
| モーリーテスト | 胸郭出口症候群(斜角筋間隙の腕神経叢) | 鎖骨上窩を母指で圧迫 → 上肢への放散痛・しびれ |
| ドロップアームテスト | 腱板断裂(主に棘上筋) | 他動外転位から下ろさせる → 保持できず落下 |
| スピードテスト | 上腕二頭筋長頭腱炎 | 肘伸展・前腕回外位で肩屈曲に抵抗 → 結節間溝部痛 |
| トムゼンテスト | 上腕骨外側上顆炎 | 手関節背屈に抵抗 → 上腕骨外側上顆部痛 |
| 絞扼部位(間隙) | 狭くなる肢位 | 対応する誘発テスト |
|---|---|---|
| 斜角筋三角(前斜角筋・中斜角筋・第1肋骨) | 頸部を伸展し患側へ回旋、深呼吸 | アドソンテスト(モーリーテストで圧痛・放散痛を確認) |
| 肋鎖間隙(鎖骨と第1肋骨のあいだ) | 肩甲帯を下制・後方へ引く(胸を張る、重量物の保持) | エデンテスト(肋鎖症候群) |
| 小胸筋下間隙(烏口突起下) | 上肢を挙上(過外転)する | ライトテスト(過外転症候群) |
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