学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §24 臨床実地問題 / QJ29P118

理由で解く 柔道整復師

QJ29P118 柔道整復理論

出典:第29回柔道整復師国家試験(2021)午後 問118
問題
35歳の男性。草野球の試合でレフトからホームに送球した際に、右肩に強い鋭い痛みを感じ来所した。写真Aに示した徒手検査法が陽性であった。超音波画像所見を写真Bに示す。写真(別冊 No. 3A、B)を別に示す。考えられる損傷部位はどれか。
図
選択肢
1 上腕二頭筋長頭腱
2 棘上筋
3 棘下筋
4 肩甲下筋
解答
正解2(棘上筋)
解説

送球という強い遠心性収縮の瞬間に鋭い肩の痛みが走り、徒手検査と超音波の双方で異常が示された症例です。腱板のなかで最も損傷しやすい棘上筋(腱)が損傷部位と考えられます。

腱板は棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋の4筋の腱が上腕骨頭を包むように付く構造で、骨頭を関節窩に引きつけて支点を安定させる役割を担います。このうち棘上筋腱は大結節の最上部に停止し、上方を肩峰と烏口肩峰靱帯(烏口肩峰アーチ)に覆われているため、腕を挙げるたびに機械的なこすれを受けます。加えて停止部からおよそ1cm近位は血行に乏しい領域とされ、変性が進みやすい部位です。中年期以降はこの変性を基盤とするため、若年者なら耐えられる程度の外力、たとえば全力送球の減速局面に働く急激な遠心性収縮でも断裂が起こります。棘上筋腱は肩を伸展・内旋させると肩峰の前方に引き出されるため超音波で描出しやすく、腱板の連続性の評価に適した部位でもあります。柔道整復師としての対応は、まず投球と挙上動作を中止させて安静と冷却を行い、三角巾などで上肢の重さを支えて疼痛を軽減させることです。そのうえで肩甲胸郭関節の可動性と肩甲帯の筋機能は落とさないように管理し、断裂が疑われる所見が続く場合は整形外科での画像評価につなぎます。

✓ 2. 正しい
棘上筋
写真Aの徒手検査法が陽性であり、写真Bの超音波画像でも異常が示された、という設問の流れから読み取ります。腱板損傷の大多数は棘上筋腱に起こり、力強い送球の減速局面という受傷機転、そして急激な鋭い痛みという発症様式もこれに合致します。徒手検査ではジョブテスト(棘上筋テスト)、ドロップアームテスト、ペインフルアークサインが代表的です。
✗ 1. 誤り
上腕二頭筋長頭腱
関節上結節から起こり、結節間溝を通って関節内へ入る腱です(筋としての停止は橈骨粗面・上腕二頭筋腱膜)。損傷や炎症では結節間溝に限局した圧痛が出て、ヤーガソンテストやスピードテストで痛みが誘発されます。腱板とは走行も検査法も異なり、超音波でも結節間溝という別の断面で評価する構造です。
✗ 3. 誤り
棘下筋
肩関節の外旋筋で、損傷すると外旋抵抗運動での筋力低下や疼痛が前面に出ます。棘上筋の断裂が後方へ広がって二次的に巻き込まれることはあっても、単独で損傷する頻度は低く、本症例の第一候補にはなりません。
✗ 4. 誤り
肩甲下筋
腱板のうち唯一の内旋筋で、小結節に停止して骨頭の前方を覆います。損傷ではリフトオフテストやベリープレステストが陽性となり、肩関節前方脱臼などに合併する形をとることが多く、単独損傷はまれです。
ポイント
  • 腱板損傷は棘上筋腱がいちばん多い。大結節上部に停止し、肩峰下でこすれ、停止部近くは血行に乏しいという3条件が重なるため。
  • 腱板の停止部:棘上筋・棘下筋・小円筋は大結節(上→中→下)、肩甲下筋のみ小結節。
  • 上腕二頭筋長頭は腱板ではない。起始=関節上結節(結節間溝を走行して関節内へ入る)、停止=橈骨粗面・上腕二頭筋腱膜。関節上結節を「停止」と覚えないこと。
  • 筋ごとの検査:棘上筋=ジョブ/ドロップアーム、棘下筋=外旋抵抗、肩甲下筋=リフトオフ/ベリープレス、上腕二頭筋長頭腱=ヤーガソン/スピード。
  • 投球や送球の減速(フォロースルー)局面は遠心性収縮が最大となり、腱の断裂が起こりやすい。
  • 初期対応は安静・冷却と上肢の免荷。肩甲胸郭の可動性は保ち、断裂が疑われれば医療機関へつなぐ。
比較表
構造付着部(起始・停止)主な作用代表的な徒手検査
棘上筋起始=棘上窩/停止=大結節(上部)外転(挙上の起こし)・骨頭の求心位保持ジョブテスト、ドロップアームテスト
棘下筋起始=棘下窩/停止=大結節(中部)外旋外旋抵抗テスト
肩甲下筋起始=肩甲下窩/停止=小結節内旋リフトオフテスト、ベリープレステスト
上腕二頭筋長頭(腱)起始=関節上結節(結節間溝を走行して関節内へ入る)/停止=橈骨粗面・上腕二頭筋腱膜肘屈曲・前腕回外(肩の屈曲・外転を補助)ヤーガソンテスト、スピードテスト
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