学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §24 臨床実地問題 / QJ29P119

理由で解く 柔道整復師

QJ29P119 柔道整復理論

出典:第29回柔道整復師国家試験(2021)午後 問119
問題
21歳の男性。大学野球部のピッチャーである。フォロースルー期に、肩後方に激痛があり来所した。肩周囲に筋萎縮はみられないが肩関節後方に圧痛があり、肩の内旋可動域の減少がみられた。また、外転・外旋を強制すると肩の後方に疼痛が出現した。考えられるのはどれか。
選択肢
1 肩峰下インピンジメント症候群
2 肩甲上神経絞扼障害
3 SLAP 損傷
4 ベネット (Bennett) 損傷
解答
正解4(ベネット (Bennett) 損傷)
解説

投球のフォロースルー期に生じる肩後方の痛み、後方の圧痛、そして内旋可動域の減少という3点がそろっています。関節窩後下縁に骨性変化を生じるベネット損傷が考えられます。

投球動作を局面で分けると、コッキング期は肩が外転・最大外旋となり前方の関節包に負担がかかりますが、フォロースルー期は逆で、振り出された上肢を止めるために肩関節後方に強い牽引力(離開ストレス)が働きます。この牽引が繰り返されると、後下方の関節包・後下関節上腕靱帯・後方関節唇の付着部が引かれ続け、関節窩の後下縁に骨棘が形成されます。これが投球骨棘とも呼ばれるベネット損傷です。同時に後方の関節包と腱板後方が拘縮するため、内旋可動域が投球側で明らかに減少します(いわゆるGIRD)。本症例で筋萎縮がないという記載は、棘下筋の萎縮を特徴とする神経絞扼を除外する手がかりになります。対応としては、まず投球を中止して炎症を鎮め、後方関節包のストレッチ(スリーパーストレッチ、クロスボディストレッチなど)で内旋制限を改善し、肩甲帯・体幹・下肢を含めた投球フォームの見直しで肩後方への負担そのものを減らします。骨棘が大きく神経症状を伴う場合は整形外科での評価が必要です。

✓ 4. 正しい
ベネット (Bennett) 損傷
フォロースルー期に肩後方へかかる牽引ストレスの反復で、関節窩後下縁に骨棘が形成される投球障害です。肩後方の限局した圧痛、後方関節包拘縮による内旋可動域の減少、外転・外旋の強制で誘発される後方痛という本症例の所見がそのまま典型像に当てはまります。
✗ 1. 誤り
肩峰下インピンジメント症候群
烏口肩峰アーチと大結節のあいだで腱板や肩峰下滑液包が挟まれる病態で、痛みは肩の前上方に出ます。挙上60〜120度で痛むペインフルアークサイン、ニアテスト、ホーキンステストが陽性となるのが典型で、後方に限局した圧痛と内旋制限を主体とする本症例の像とは合いません。
✗ 2. 誤り
肩甲上神経絞扼障害
肩甲切痕または棘窩切痕で肩甲上神経が絞扼される障害で、支配筋である棘下筋(絞扼部位によっては棘上筋も)の萎縮と外旋筋力の低下が診断の決め手になります。本症例には筋萎縮がみられないと明記されており、この点で該当しません。
✗ 3. 誤り
SLAP 損傷
上腕二頭筋長頭腱の付着部を含む上方関節唇が前後方向に剥離する損傷で、肩深部の痛み、引っかかり感やクリックを訴えます。オブライエンテストやクランクテストで誘発され、圧痛が肩後方に限局し内旋可動域だけが落ちるという本症例のまとまり方とは異なります。
ポイント
  • 投球障害肩はどの局面で痛むかで切り分ける。コッキング期=前方・上方、フォロースルー期=後方。
  • ベネット損傷=フォロースルー期の牽引反復による関節窩後下縁の骨棘。別名、投球骨棘。
  • 後方関節包拘縮 → 投球側の内旋可動域が落ちる(GIRD)。左右差で確認する。
  • 棘下筋の萎縮+外旋筋力低下があれば肩甲上神経絞扼障害を考える。本症例はこれがない。
  • 対応は投球中止と後方関節包ストレッチ、加えて全身を使ったフォームの再教育で肩後方の負担を減らす。
比較表
疾患痛みの部位関与する投球局面決め手になる所見
ベネット損傷肩後方フォロースルー期後方圧痛+内旋可動域減少、関節窩後下縁の骨棘
肩峰下インピンジメント症候群肩前上方コッキング〜加速期ペインフルアーク、ニア・ホーキンステスト陽性
肩甲上神経絞扼障害肩後方〜深部特定しにくい棘下筋の萎縮、外旋筋力低下
SLAP損傷肩深部後期コッキング〜加速期引っかかり感・クリック、オブライエンテスト陽性
この問題の解説の修正を依頼する

解説に誤り・改善点があればお知らせください。件名と本文は自動入力済みです(編集できます)。お名前・メールアドレスは任意です。送信内容は玄康株式会社(黒澤一弘)に届きます。