学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §24 臨床実地問題 / QJ29P120

理由で解く 柔道整復師

QJ29P120 柔道整復理論

出典:第29回柔道整復師国家試験(2021)午後 問120
問題
18歳の女子。ソフトボール部に所属しており、練習中に右膝痛が生じたため来所した。しゃがみ動作や階段昇降で疼痛が増強する。外反膝があり、膝蓋骨を外方に圧迫すると不安感を訴えた。この患者にみられる所見で正しいのはどれか。
選択肢
1 Q角の減少
2 膝蓋腱の圧痛
3 内側広筋の筋力低下
4 グラスピングテスト陽性
解答
正解3(内側広筋の筋力低下)
解説

外反膝があり、膝蓋骨を外方へ圧迫すると不安感を訴えるのは膝蓋骨の外側不安定性を示す。これを内側へ引き戻す内側広筋の筋力低下がみられる。

膝蓋骨には、大腿四頭筋の牽引方向と膝蓋腱の走行がつくる角度(Q角)に応じて、膝伸展のたびに外側へ引かれる力が働く。外反膝(X脚)ではQ角が大きくなるため、この外側への力がさらに強まる。これに対抗して膝蓋骨を内側に保っているのが内側広筋、とくに膝蓋骨内側縁へ斜めに付着する内側広筋斜頭であり、疼痛や不使用でここが弱ると外側偏位が助長される悪循環に入る。膝蓋骨を外方へ押したときに患者が不安感を訴えるアプリヘンションサインは、膝蓋骨の外側への亜脱臼・脱臼傾向を示す所見である。しゃがみ動作や階段昇降で痛むのは、膝屈曲位で膝蓋大腿関節の圧が高まるためである。対応は内側広筋の選択的な強化、大腿外側や腸脛靱帯・ハムストリングスの柔軟性改善、テーピングや装具による膝蓋骨の走行の補正で、疼痛の強い動作は一時的に量を減らして段階的に戻す。

✓ 3. 正しい
内側広筋の筋力低下
内側広筋(とくに斜走線維)は膝蓋骨を内側へ引いて外側偏位を抑える役割をもつ。外反膝で外方への力が増している状態でこの筋が弱ると、膝蓋骨の外側不安定性が強まり、アプリヘンションサインや膝蓋大腿関節部の疼痛につながる。
✗ 1. 誤り
Q角の減少
外反膝ではQ角はむしろ増大する。Q角の増大こそが膝蓋骨を外方へ引く力を強め、本症例の背景となっている。減少という記載は所見として逆である。
✗ 2. 誤り
膝蓋腱の圧痛
膝蓋骨下極から膝蓋腱にかけての圧痛は膝蓋腱炎(ジャンパー膝)の所見である。ジャンプの繰り返しで生じる腱付着部の障害であり、膝蓋骨の外側不安定性を示す所見ではない。
✗ 4. 誤り
グラスピングテスト陽性
大腿骨外側上顆部を圧迫したまま膝を屈曲位から伸展させ、疼痛が誘発されるかをみる腸脛靱帯炎(ランナー膝)の検査である。膝外側部の障害を診るもので、膝蓋大腿関節の不安定性とは病態が異なる。
ポイント
  • 外反膝=Q角増大=膝蓋骨が外方へ引かれる。Q角は減少ではなく増大と覚える。
  • 内側広筋(斜頭)は膝蓋骨を内方に保つブレーキ役。弱化すると外側不安定性が進む。
  • アプリヘンションサイン=膝蓋骨を外方へ押したときの不安感。脱臼・亜脱臼傾向を示す。
  • しゃがみ動作・階段昇降での増悪は、膝屈曲で膝蓋大腿関節の圧が高まるため。
  • 治療は内側広筋の強化+外側支持組織の柔軟性改善+テーピング・装具による走行の補正。
比較表
病態疼痛部位特徴的な所見・検査増悪動作
膝蓋大腿関節障害・膝蓋骨不安定症膝蓋骨周囲(前面)アプリヘンションサイン、Q角増大、内側広筋の弱化しゃがみ込み、階段昇降
膝蓋腱炎(ジャンパー膝)膝蓋骨下極〜膝蓋腱同部の限局性圧痛ジャンプ、ダッシュ
腸脛靱帯炎(ランナー膝)大腿骨外側上顆部グラスピングテスト陽性長距離走、下り坂
鵞足炎脛骨内側近位(鵞足部)鵞足部の圧痛ランニング、方向転換
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