学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §24 臨床実地問題 / QJ29P112

理由で解く 柔道整復師

QJ29P112 柔道整復理論

出典:第29回柔道整復師国家試験(2021)午後 問112
問題
21歳の男性。バスケットボールの試合中に相手選手と接触し転倒した。手関節部に疼痛を訴え最寄りの接骨院にて整復後、前腕回外位、手関節軽度尺屈・伸展位で固定を施された。整復前の所見で考えられるのはどれか。
選択肢
1 手関節部の鋤状変形
2 尺骨遠位のピアノキー症状
3 スナッフボックスの圧痛
4 母指の屈曲内転変形
解答
正解1(手関節部の鋤状変形)
解説

固定肢位が前腕回外位・手関節軽度尺屈・伸展位であることが決め手になる。これは掌側転位を起こすスミス骨折の固定であり、整復前には掌側に膨隆する鋤(すき)状変形がみられる。

橈骨遠位端骨折の固定肢位は、遠位骨片が転位した方向と逆向きに導き、再転位を防ぐように決められる。背側へ転位するコーレス骨折では前腕回内位(または中間位)で手関節を軽度掌屈・尺屈位に保つのに対し、掌側へ転位するスミス骨折では前腕回外位で手関節を軽度伸展(背屈)・尺屈位に保つ。設問の固定肢位は後者そのものであり、逆に整復前の状態を推定できる。ここで変形の見え方を整理しておくと、コーレス骨折は背側転位を側面から見た「フォーク状変形」と、橈側転位を正面(背面)から見た「銃剣状変形」という別々の観察方向・別々の転位に由来する2つの変形を示す。これに対しスミス骨折では遠位骨片が掌側へずれるため、側面から見ると手関節部が掌側に膨隆し、フォーク状変形とはちょうど反対向きの、いわゆる鋤状変形を呈する。固定中は手指の自動運動を促し、循環と正中神経・尺骨神経の症状を繰り返し確認する。

✓ 1. 正しい
手関節部の鋤状変形
掌側転位型(スミス骨折)に特有の変形で、遠位骨片が掌側へずれるため手関節部が掌側に膨隆する。前腕回外位・手関節軽度伸展位という固定肢位はこの転位を戻す向きであり、整復前の所見として矛盾しない。
✗ 2. 誤り
尺骨遠位のピアノキー症状
背側に突出した尺骨頭を押すと沈み、離すと戻る現象で、遠位橈尺関節の不安定性やTFCC損傷を示す所見である。橈骨遠位端の掌側転位に対する回外位固定という設問の状況とは結びつかない。
✗ 3. 誤り
スナッフボックスの圧痛
解剖学的嗅ぎたばこ入れの圧痛は舟状骨骨折を疑う所見である。舟状骨骨折では母指を含めた固定(母指対立位・手関節軽度背屈橈屈位など)が行われ、設問の固定肢位とは一致しない。
✗ 4. 誤り
母指の屈曲内転変形
第1中手骨基部の骨折脱臼(ベネット骨折)でみられる変形で、長母指外転筋の牽引により基部が転位し母指が内転位をとる。固定は母指の外転・対立位が原則であり、設問の手関節の固定肢位とは対応しない。
ポイント
  • 固定肢位から逆に転位方向を読み取る。固定は転位と逆向きに導くのが原則。
  • コーレス骨折=背側・橈側転位。側面ではフォーク状変形(背側凸)正面(背面)では銃剣状変形(橈側偏位)。前腕回内位・手関節軽度掌屈尺屈位で固定。
  • フォーク状変形と銃剣状変形は同義ではない。観察方向(側面/正面)も由来する転位(背側/橈側)も別物である。
  • スミス骨折=掌側転位。側面で鋤状変形(掌側凸)。前腕回外位・手関節軽度伸展尺屈位で固定。
  • スナッフボックス圧痛=舟状骨骨折、ピアノキー症状=遠位橈尺関節の不安定性、母指屈曲内転変形=ベネット骨折。
  • 固定後は手指の自動運動を励行し、循環障害と正中神経症状(母指〜環指橈側のしびれ)を継続的に確認する。
比較表
コーレス骨折スミス骨折
受傷機転手関節背屈位で手をつく手関節掌屈位で手をつく(手背をつく)
遠位骨片の転位背側・橈側・短縮掌側
側面から見た変形フォーク状変形(背側凸)鋤状変形(掌側凸)
正面(背面)から見た変形銃剣状変形(橈側転位を反映)著明でない
固定肢位前腕回内位、手関節軽度掌屈・尺屈位前腕回外位、手関節軽度伸展・尺屈位
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