学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §24 臨床実地問題 / QJ29P111

理由で解く 柔道整復師

QJ29P111 柔道整復理論

出典:第29回柔道整復師国家試験(2021)午後 問111
問題
12歳の男児。サッカーの試合中に相手と接触し肘外反強制で転倒した。腫脹と圧痛が肘の内側部にあり、肘屈伸運動も制限され軋轢音を認めた。後遺症で生じにくいのはどれか。
選択肢
1 外反肘
2 尺骨神経麻痺
3 肘関節伸展制限
4 前腕回旋運動制限
解答
正解1(外反肘)
解説

肘外反強制で内側部に圧痛・腫脹があり屈伸が制限されるのは、上腕骨内側上顆の裂離骨折の像である。外反肘は外顆骨折の後遺症として有名で、内側上顆の損傷からは生じにくい。

設問は「後遺症で生じにくいのはどれか」という否定形なので、選択肢のうち3つは実際に起こりうる後遺症であり、残る1つが答えになる。肘が外反を強制されると、内側側副靱帯と前腕屈筋・回内筋群の共同起始が内側上顆を強く牽引し、裂離骨折を起こす。本症例は骨端核が存在する成長期の小児であり、内側上顆は関節面をつくらない牽引骨端(骨端核の出現後・骨端線癒合前)であるため、外反強制で裂離しやすい。骨片が関節内へ嵌入すると屈伸が高度に制限され、軋轢音も触れる。この骨折で問題になる後遺症は、内側上顆のすぐ後方の尺骨神経溝を走る尺骨神経の麻痺(受傷から年余を経て現れる遅発性のこともある)、血腫や瘢痕・長期固定による肘関節の伸展制限(屈曲拘縮)、骨片の転位や関節内の癒着による前腕回旋制限である。一方、外反肘は上腕骨外顆骨折が偽関節・遷延癒合となり外側の支柱が失われたときに生じる変形であり、内反肘は顆上骨折後の代表的な変形である。成長期の肘外傷は骨端核が絡み評価が難しいので、必ず医療機関でエックス線を含めた評価を受けるよう手配する。

✓ 1. 生じにくい(これが答え)
外反肘
外反肘は、肘関節外側の支柱である上腕骨外顆が偽関節や成長障害を起こしたときに運搬角が外反方向へ狂って生じる変形である。内側上顆は関節面をつくらない牽引骨端であり、癒合不良となっても外側支柱は保たれるため、外反肘には結びつきにくい。
✗ 2. 生じうる(答えではない)
尺骨神経麻痺
尺骨神経は内側上顆後面の尺骨神経溝を走るため、骨折血腫・瘢痕・骨片の転位・変形治癒によって直接絞扼されうる。受傷直後だけでなく数年後に現れる遅発性尺骨神経麻痺もあり、後遺症として実際に問題となる。
✗ 3. 生じうる(答えではない)
肘関節伸展制限
骨片が関節内に嵌入した場合や、血腫・瘢痕形成、長期の固定による関節の癒着で屈曲拘縮を残しやすい。肘は本来拘縮を起こしやすい関節であり、伸展制限は代表的な後遺症である。
✗ 4. 生じうる(答えではない)
前腕回旋運動制限
骨片の転位や関節内の癒着、長期固定によって回内・回外が制限される。回旋制限は日常生活動作への影響が大きいため、固定期間中も可能な範囲で回旋運動を確保する配慮が要る。
ポイント
  • 肘外反強制+内側部の圧痛・腫脹=上腕骨内側上顆の裂離骨折を第一に考える。
  • 牽引するのは内側側副靱帯と前腕屈筋・回内筋群の共同起始。牽引力による裂離骨折の代表例。
  • 好発は骨端核が出現し骨端線が癒合する前の成長期(おおむね9〜14歳)。内側上顆は関節面をつくらない牽引骨端である。
  • 変形の対応:外反肘=外顆骨折の後遺症、内反肘=顆上骨折の後遺症。
  • 内側上顆骨折の後遺症は尺骨神経麻痺(遅発性を含む)、伸展制限、前腕回旋制限。
  • 骨片の関節内嵌入は屈伸不能・軋轢音が手がかり。成長期の肘外傷は必ず画像評価へ。
比較表
骨折部位典型的な受傷機転代表的な後遺変形神経障害
上腕骨内側上顆骨折肘外反強制(牽引力による裂離)伸展制限・回旋制限尺骨神経麻痺(遅発性もある)
上腕骨外顆骨折肘内反・手をついて外反肘(偽関節時)遅発性尺骨神経麻痺
上腕骨顆上骨折伸展位で手をついて内反肘正中神経・橈骨神経障害、フォルクマン拘縮
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