学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §24 臨床実地問題 / QJ29P108

理由で解く 柔道整復師

QJ29P108 柔道整復理論

出典:第29回柔道整復師国家試験(2021)午後 問108
問題
20歳の男性。4週前に大学サッカーで相手と接触し、左下肢を痛めた。最近、膝が曲げにくいと来所した。膝関節の他動屈曲を行った際、図に示す動作所見がみられた。原因となる筋はどれか。
図
選択肢
1 腸腰筋
2 腓腹筋
3 半膜様筋
4 大腿直筋
解答
正解4(大腿直筋)
解説

膝を他動的に曲げたときにその動きを妨げるのは、膝を伸ばす向きに働く筋である。大腿前面の受傷が疑われる状況で、大腿直筋が伸びにくくなった状態を考える。

受傷から4週が経ち、痛みが落ち着くはずの時期に「膝が曲げにくい」と訴えている点が手がかりになる。大腿前面の打撲では、血腫が器質化して瘢痕拘縮を残したり、骨化性筋炎に進んだりして、大腿四頭筋の伸張性が失われる。膝屈曲は大腿四頭筋を引き伸ばす動きなので、伸張性が落ちるとそのまま他動屈曲の制限として現れる。なかでも大腿直筋は股関節と膝関節の両方をまたぐ二関節筋(股関節屈曲+膝伸展)であり、一般に大腿直筋が拘縮すると、腹臥位で膝を他動屈曲したときに大腿直筋が突っ張って骨盤・殿部が持ち上がる、いわゆる尻上がり現象がみられる。広筋群のような単関節筋の拘縮では、股関節を巻き込むこの動きは出にくい。対応は温熱と、痛みの出ない範囲での段階的な可動域訓練が基本である。骨化性筋炎が疑われる時期は強いマッサージや無理な他動伸張を避け、画像評価のために医療機関へつなぐ。

✓ 4. 正しい
大腿直筋
下前腸骨棘から起こり膝蓋骨・脛骨粗面に至る二関節筋で、股関節屈曲と膝伸展に働く。膝を他動屈曲すると大腿直筋が最も強く伸ばされるため屈曲が制限される。拘縮がある場合は、同時に股関節を屈曲させる方向へ骨盤が引かれるため、腹臥位では殿部が持ち上がる所見(尻上がり現象)を伴うことが多い。大腿前面は接触プレーで打撲を受けやすく、受傷機転とも一致する。
✗ 1. 誤り
腸腰筋
股関節屈筋であり膝関節をまたがないため、膝の他動屈曲では伸ばされない。拘縮すれば股関節の伸展制限(トーマステスト陽性)として現れる筋であり、膝が曲げにくい原因にはならない。
✗ 2. 誤り
腓腹筋
大腿骨顆部後面から起こり、膝屈曲と足関節底屈に働く。膝を屈曲させると逆に緩む側の筋なので、屈曲を妨げない。拘縮した場合は膝伸展位での足関節背屈制限として現れる。
✗ 3. 誤り
半膜様筋
ハムストリングスの一つで膝屈曲・股関節伸展に働く。膝屈曲の動力筋であるから他動屈曲を制限しない。拘縮では下肢伸展挙上(SLR)の制限や膝の伸展制限として出る。
ポイント
  • 膝の他動屈曲を妨げるのは「膝を伸ばす筋」。屈曲筋(ハムストリングス・腓腹筋)は屈曲時に緩むので原因にならない。
  • 大腿直筋は股関節屈曲+膝伸展の二関節筋。膝屈曲で伸張される。
  • 大腿直筋が拘縮すると、腹臥位での膝他動屈曲で骨盤・殿部が持ち上がる尻上がり現象がみられる。
  • 大腿部打撲後3〜4週で可動域が悪化したら、瘢痕拘縮と骨化性筋炎を念頭に置く。
  • 骨化性筋炎が疑われる時期は強揉みや強い他動伸張を避け、温熱と愛護的な自動運動から進める。
  • 拘縮した筋の見分け方は「どの関節をまたぐか」。腸腰筋は股関節、腓腹筋は足関節に所見が出る。
比較表
またぐ関節主な作用膝を他動屈曲したとき拘縮したときの所見(一般論)
大腿直筋股関節・膝関節股関節屈曲+膝伸展強く伸張され屈曲を制限尻上がり現象(腹臥位で殿部挙上)
腸腰筋股関節股関節屈曲変化しない股関節伸展制限(トーマステスト)
腓腹筋膝関節・足関節膝屈曲+足関節底屈緩む足関節背屈制限
半膜様筋股関節・膝関節膝屈曲+股関節伸展緩む(屈曲の動力)SLR制限・膝伸展制限
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