学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §24 臨床実地問題 / QJ28P122

理由で解く 柔道整復師

QJ28P122 柔道整復理論

出典:第28回柔道整復師国家試験(2020)午後 問122
問題
30歳の男性。3か月前からランニングを始めた。左膝の運動痛が出現したため来所した。膝関節の外側に軽度腫脹がみられた。膝蓋跳動は陰性であった。膝関節屈曲位で大腿骨外顆よりやや近位を圧迫しながら膝関節を伸展させると疼痛が再現された。考えられるのはどれか。
選択肢
1 鵞足炎
2 膝蓋下脂肪体炎
3 大腿四頭筋腱炎
4 腸脛靱帯炎
解答
正解4(腸脛靱帯炎)
解説

ランニング開始後に生じた膝外側の痛み。膝屈曲位で大腿骨外顆のやや近位を圧迫しながら伸展させると疼痛が再現される(グラスピングテスト陽性)——腸脛靱帯炎である。

腸脛靱帯は大腿筋膜張筋と大殿筋の一部を受けて大腿の外側を縦走し、脛骨外側のガーディ結節に付着する。膝を屈伸すると、およそ屈曲30度を境に腸脛靱帯が大腿骨外側上顆の前後を行き来するため、走行距離が増えるとこの部で摩擦が繰り返され、靱帯と滑液包に炎症を生じる。ランニングを始めたばかり、距離や頻度を急に増やした、下り坂や硬い路面を走る、О脚や回内足、股関節外転筋の筋力不足といった条件が重なると発症しやすい。ここで膝蓋跳動が陰性という所見が効いてくる。関節内に水腫がないということは、半月板損傷や靱帯損傷、関節内の炎症といった関節内病変が考えにくく、痛みの本体が関節の外——ここでは大腿骨外側上顆の上を通る腸脛靱帯——にあることを支持する。対応は、まず走行量を落として外側上顆部の炎症を鎮め(アイシング、局所の安静)、次に大腿筋膜張筋・大殿筋・腸脛靱帯のストレッチと股関節外転筋の強化を行い、シューズの摩耗や路面・走行フォームの見直しへ進める。痛みが引いてから距離を段階的に戻すところまでを指導に含める。

✓ 4. 最も考えられる
腸脛靱帯炎
大腿骨外顆よりやや近位=大腿骨外側上顆部を圧迫しながら膝を伸展させると、腸脛靱帯がその上を滑って摩擦部に痛みが再現される。ランニング開始という背景、膝外側の軽度腫脹、膝蓋跳動陰性(関節外病変)とも一致する。
✗ 1. 考えにくい
鵞足炎
鵞足は縫工筋・薄筋・半腱様筋の腱が合流して脛骨近位の内側に付着する部位で、圧痛は関節裂隙より遠位の膝内側に出る。本例の痛みは外側であり、部位が反対側になる。
✗ 2. 考えにくい
膝蓋下脂肪体炎
膝蓋腱の両脇、膝蓋骨下方に圧痛が出る疾患で、膝の過伸展や長時間の立位で痛みが増す。圧痛部位が膝の前下方であり、大腿骨外側上顆の圧迫で再現されるものではない。
✗ 3. 考えにくい
大腿四頭筋腱炎
大腿四頭筋腱が膝蓋骨上縁に付着する部位の炎症で、圧痛は膝蓋骨のすぐ上、痛みは膝伸展の抵抗運動やしゃがみ込みで増強する。本例の外側かつ大腿骨外側上顆部という部位とは合わない。
ポイント
  • 腸脛靱帯炎(ランナー膝)=大腿骨外側上顆部での腸脛靱帯の摩擦による炎症。屈曲30度付近で靱帯が外側上顆を乗り越える。
  • 誘発テスト:膝屈曲位で大腿骨外側上顆部を圧迫しながら伸展させると疼痛が再現される(グラスピングテスト/ノーブルテスト)。
  • 膝蓋跳動陰性=関節内に水腫がない。痛みが関節外にあることを支持し、半月板・靱帯損傷から遠ざける手がかりになる。
  • 背景因子:走行距離の急増、下り坂・硬い路面、摩耗したシューズ、О脚・回内足、股関節外転筋の筋力不足。
  • 対応は、走行量の調整とアイシングで炎症を鎮め、大腿筋膜張筋・大殿筋のストレッチと股関節外転筋の強化、シューズ・路面・フォームの見直し、段階的な復帰まで一続きに指導する。
比較表
疾患圧痛部位誘発される動作・テスト
腸脛靱帯炎大腿骨外側上顆部(膝外側)外側上顆を圧迫しながらの膝伸展、下り坂の走行
鵞足炎脛骨近位内側(関節裂隙より遠位)膝屈曲の抵抗運動、階段昇降
膝蓋下脂肪体炎膝蓋腱の両脇・膝蓋骨下方膝の過伸展、長時間の立位
大腿四頭筋腱炎膝蓋骨上縁膝伸展の抵抗運動、しゃがみ込み
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