学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §24 臨床実地問題 / QJ28P121

理由で解く 柔道整復師

QJ28P121 柔道整復理論

出典:第28回柔道整復師国家試験(2020)午後 問121
問題
. 17歳の男子。ハードル走の選手である。最近、練習中に右股関節の引っかかりを感じるようになった。関節に腫脹や疼痛はなく明らかな可動域制限もみられないが、股関節内転位で屈伸すると股関節部外側で轢音が聴取された。外傷の既往はない。最も考えられるのはどれか。
選択肢
1 股関節唇の断裂
2 大転子滑液包炎
3 中殿筋の筋力低下
4 大腿筋膜張筋の緊張増加
解答
正解4(大腿筋膜張筋の緊張増加)
解説

股関節内転位で屈伸すると股関節外側で轢音が出て、痛みも腫脹も可動域制限もない。外側型の弾発股であり、その主因は4の大腿筋膜張筋の緊張増加。

大腿筋膜張筋は腸骨稜前部から起こり、その線維は下方で腸脛靱帯へ移行して大転子の外側を通り、脛骨外側のガーディ結節に付着する。この腸脛靱帯(および大殿筋の一部線維)が張ると、股関節の屈伸に伴って大転子の外側を前後に乗り越える動きが強調され、その瞬間に「ゴリッ」という轢音や引っかかり感が生じる。股関節を内転させると腸脛靱帯がさらに大転子に押し付けられて緊張が増すため、内転位での屈伸で症状が誘発されるという本例の所見は、外側型弾発股を非常によく説明する。ハードル走はリード脚・抜き脚とも股関節の外転・内転と回旋を大きく反復するため、この緊張が高まりやすい。対応は大腿筋膜張筋・腸脛靱帯のストレッチングと股関節外転筋・体幹の機能改善、走動作やハードリング動作の見直しが中心で、疼痛や可動域制限が出てきた場合や滑液包の炎症が疑われる場合は医師の評価につなぐ。

✗ 1. 誤り
股関節唇の断裂
関節内の病変であり、症状は鼠径部の深い痛みやクリック感として現れ、屈曲・内転・内旋を組み合わせた誘発肢位で疼痛が出るのが典型。股関節外側で轢音が聴取されるという本例の局在と一致しない。
✗ 2. 誤り
大転子滑液包炎
部位は近いが、滑液包の炎症であれば大転子部の圧痛と疼痛が主症状となり、患側を下にして寝られないといった訴えも出る。本例は「腫脹や疼痛はなく」と明記されており、炎症所見が前面に出ていない。弾発股が長期化した結果として二次的に生じることはある。
✗ 3. 誤り
中殿筋の筋力低下
中殿筋が弱れば片脚立位で骨盤が健側へ傾くトレンデレンブルグ徴候や跛行が現れるが、それ自体が腸脛靱帯を大転子に引っかけて轢音を鳴らす直接の原因にはならない。本例には歩行異常の記載もない。
✓ 4. 正しい
大腿筋膜張筋の緊張増加
大腿筋膜張筋から続く腸脛靱帯が緊張すると、股関節の屈伸のたびに大転子外側を乗り越えて轢音・引っかかりを生じる。股関節内転位でさらに緊張が増すため、内転位での屈伸で誘発されるという所見に合致する。ストレッチングと動作の見直しで改善を図る。
ポイント
  • 外側型の弾発股=腸脛靱帯(大腿筋膜張筋の遠位)が大転子を乗り越えるときの轢音・引っかかり。
  • 股関節内転位にすると腸脛靱帯が大転子に押し付けられ、症状が誘発されやすい。
  • 「疼痛・腫脹・可動域制限がない」=炎症性・関節内の病変ではないというサイン。
  • 内側(腸恥)型は腸腰筋腱が腸恥隆起を乗り越えるもので、症状は鼠径部に出る。
  • 関節内型(関節唇損傷など)は鼠径部の深部痛とクリック感。症状の局在で型を切り分ける
  • 対応は大腿筋膜張筋・腸脛靱帯のストレッチングと股関節・体幹の機能改善、動作フォームの見直し。
比較表
引っかかる構造乗り越える骨症状の部位
外側型腸脛靱帯・大殿筋腱の一部大転子股関節外側
内側(腸恥)型腸腰筋腱腸恥隆起・大腿骨頭前方鼠径部
関節内型関節唇・遊離体など鼠径部の深部(クリック感)
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