学習トップ理由で解く 柔道整復師整形外科学 ▸ §25 臨床実地問題 / QJ29P067

理由で解く 柔道整復師

QJ29P067 整形外科学

出典:第29回柔道整復師国家試験(2021)午後 問67
問題
25歳の男性。オートバイ事故で頸椎を損傷した。三角筋、上腕二頭筋は徒手筋力検査で両側5、手関節伸展は右 1、左2である。下肢運動機能は全廃している。この患者の残存機能の髄節はどれか。
選択肢
1 第4頸髄節
2 第5頸髄節
3 第6頸髄節
4 第7頸髄節
解答
正解2(第5頸髄節)
解説

脊髄損傷の残存髄節は、各髄節を代表する筋(key muscle)が徒手筋力検査(MMT)で3以上あるかで判定する。本例は上腕二頭筋(C5)が両側5である一方、手関節伸展(C6)は右1・左2で3に届かないため、機能が残っている最下位の髄節は第5頸髄節である。

頸髄損傷では、どの高位まで機能が残っているかを上肢のkey muscleの筋力から読み取る。上肢のkey muscleは、C5=肘屈曲(上腕二頭筋)、C6=手関節伸展(長・短橈側手根伸筋)、C7=肘伸展(上腕三頭筋)、C8=手指屈曲(深指屈筋)、T1=小指外転筋、という並びである。なおISNCSCI(ASIA)ではC1〜C4にkey muscleが設定されておらず、この範囲の運動レベルは感覚レベルで代用して判定する。したがって横隔膜や僧帽筋はMMTで採点するkey muscleではなく、あくまで機能上の目安として押さえる。判定の基準はMMT3、すなわち抗重力位で全可動域を動かせるかどうかで、これを満たす最も下位の髄節を残存髄節とし、そのすぐ上位の髄節の筋が5であることを条件とする。本例では三角筋(腋窩神経、C5・C6)と上腕二頭筋がともに両側5で、C5までは完全に機能している。しかしC6のkey muscleである手関節伸展は、右が1(収縮を触知できるだけで関節は動かない)、左が2(重力を除けば動くが抗重力では動かない)で、いずれも3に達していない。したがって残存髄節はC5と判定される。下肢運動機能が全廃していることは、損傷高位より下の伝導路が絶たれていることと矛盾しない。

✗ 1. 誤り
第4頸髄節
C4は横隔膜(横隔神経C3〜C5)や僧帽筋の高位で、残存がC4までであれば肘屈曲は行えない。ただし横隔膜・僧帽筋はISNCSCIのkey muscleではなく機能上の目安であり、判定はあくまでkey muscleのMMTで行う。本例は上腕二頭筋(C5)が両側MMT5で保たれている時点でC4より下位まで機能が残っていることになるため、当てはまらない。
✓ 2. 正しい
第5頸髄節
C5のkey muscleである上腕二頭筋(肘屈曲)が両側5、C5・C6支配の三角筋も両側5で、C5の機能は完全に保たれている。その一つ下のC6のkey muscleである手関節伸展は3未満にとどまるため、機能が残っている最下位の髄節はC5と判定する。C5残存では肩関節の運動と肘屈曲は使えるが、手関節・手指は働かない。
✗ 3. 誤り
第6頸髄節
C6残存と判定するには手関節伸展がMMT3以上必要だが、本例は右1・左2でいずれも抗重力位で動かせない。左は重力を除けば全可動域動く段階なので、リハビリテーションの経過で手関節伸展が3以上に伸びるかを継続して評価し、変化があれば残存レベルの再判定につなげる。
✗ 4. 誤り
第7頸髄節
C7のkey muscleは上腕三頭筋(肘伸展)で、ここまで残存していれば肘を伸ばす動作やプッシュアップによる移乗が可能になる。本例はその手前のC6の時点で基準を満たしていないため、C7まで機能が残っているとは判定できない。
ポイント
  • 残存髄節はkey muscleのMMTで決める。基準はMMT3(抗重力位で全可動域)で、これを満たす最下位の髄節が残存髄節。すぐ上位の髄節は5であることを確認する。
  • 上肢のkey muscle:C5=肘屈曲、C6=手関節伸展、C7=肘伸展、C8=手指屈曲、T1=小指外転。肘から末梢へ順に下がると覚える。
  • C1〜C4にはkey muscleが設定されておらず、運動レベルは感覚レベルで代用して判定する。横隔膜・僧帽筋はkey muscleではなく機能上の目安にすぎない。
  • MMT2は「重力を除けば動く」段階で、残存とは扱わない。1と2は3未満としてまとめて判断してよい。
  • 本例のようにC5残存なら、肩の運動と肘屈曲を活かして電動車椅子の操作や自助具を用いた食事などを目標に据える。
  • C6まで残ると、手関節背屈に伴う腱固定作用(テノデーシス)で物をつまむ動作が可能になり、日常生活動作の自立度が大きく変わる。C5とC6の差は臨床的に大きい。
比較表
髄節key muscle(代表する動き)本例のMMT判定
C4key muscleなし(機能的には横隔膜・僧帽筋の高位=呼吸・肩甲挙上)該当筋の記載なしkey muscleがないためMMTでは最下位判定に使わない。上腕二頭筋が5である時点でC4より下位まで機能している
C5肘屈曲(上腕二頭筋)/三角筋も関与両側5完全に残存 → 残存髄節
C6手関節伸展(長・短橈側手根伸筋)右1・左23未満のため残存とはしない
C7肘伸展(上腕三頭筋)記載なし(C6で脱落)該当しない
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