学習トップ理由で解く 柔道整復師整形外科学 ▸ §25 臨床実地問題 / QJ28P067

理由で解く 柔道整復師

QJ28P067 整形外科学

出典:第28回柔道整復師国家試験(2020)午後 問67
問題
42歳の男性。ピロン骨折後、半日経過して創部疼痛に加え足に感覚障害が生じてきた。この感覚障害の部位で正しいのはどれか。
選択肢
1 足底の内側
2 前足部の内側
3 母趾・第2趾間の背側
4 後足部の外側
解答
正解3(母趾・第2趾間の背側)
解説

ピロン骨折後、半日という短時間で創部痛の増強に加えて足の感覚障害が出てきた経過は、下腿前方コンパートメント症候群を強く示唆します。ここを走る深腓骨神経の固有支配領域は母趾と第2趾の間の背側で、この部位に感覚障害が出ます。

ピロン骨折は脛骨遠位の関節内骨折で、高エネルギー外力により軟部組織の損傷と腫脹が強く出るため、コンパートメント症候群の合併に注意が必要です。閉鎖された筋区画の内圧が上がると、まず細い神経線維と毛細血管の循環が障害されるので、脈拍が触れるうちから疼痛の増強と感覚障害が現れます。下腿前方コンパートメントには前脛骨筋・長母趾伸筋・長趾伸筋と深腓骨神経が入っており、深腓骨神経は運動枝で足関節と足趾の背屈を担い、感覚枝は第1・第2趾間の背側という狭い範囲だけを固有に支配します。したがって、この部位のしびれ・感覚鈍麻は前方コンパートメントの警告サインとして最も早く現れる所見のひとつです。骨折の程度に不釣り合いな痛み、足趾を他動的に底屈させたときの下腿前面の強い痛み(passive stretch pain)を認めたら、ただちに包帯・シーネを緩め、患肢を心臓と同じ高さに保ち(挙上しすぎると灌流圧が下がります)、内圧測定と緊急筋膜切開ができる医療機関へ速やかにつなぎます。

✓ 3. 正しい
母趾・第2趾間の背側
第1・第2趾間の背側は深腓骨神経の固有支配領域です。深腓骨神経は下腿前方コンパートメント内を走行するため、腫脹による内圧上昇の影響を最初に受け、この狭い範囲の感覚障害として現れます。前方コンパートメント症候群を疑う所見であり、正しい記述です。
✗ 1. 誤り
足底の内側
足底内側は脛骨神経から分かれる内側足底神経の支配で、下腿後方の深層コンパートメントを通ります。後方深層区画の障害では起こり得ますが、本症例で最初に現れる典型的な部位ではありません。
✗ 2. 誤り
前足部の内側
足背の広い範囲と前足部内側の皮膚感覚は主に浅腓骨神経(外側コンパートメントを走行)が担い、内果周囲は伏在神経の領域です。深腓骨神経の固有支配領域とは異なります。
✗ 4. 誤り
後足部の外側
後足部外側は腓腹神経(および脛骨神経の踵骨枝)の支配領域で、下腿後方の浅層を走行します。前方コンパートメントの内圧上昇では侵されにくい部位です。
ポイント
  • ピロン骨折=脛骨遠位の関節内骨折。高エネルギー外傷で腫脹・軟部組織損傷が強く、コンパートメント症候群に注意。
  • 下腿前方コンパートメント=前脛骨筋・長母趾伸筋・長趾伸筋+深腓骨神経
  • 深腓骨神経の固有知覚領域は第1・第2趾間の背側。ここのしびれは早期サイン。
  • 最も鋭敏な所見は骨折に不釣り合いな疼痛他動伸張時痛。脈拍触知は最後まで残るため、脈があっても否定できない。
  • 疑ったら固定を緩め、患肢を心臓の高さに保ち、内圧測定・筋膜切開ができる施設へ直ちにつなぐ。
比較表
感覚障害の部位支配神経コンパートメント
母趾・第2趾間の背側深腓骨神経前方
足背の大部分・前足部内側浅腓骨神経外側
足底(内側・外側)脛骨神経(内側/外側足底神経)後方深層
後足部・足外側縁腓腹神経後方浅層
下腿内側・内果周囲伏在神経(大腿神経枝)
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