学習トップ理由で解く 柔道整復師整形外科学 ▸ §22 部位別各論 大腿・膝関節 / QJ28P066

理由で解く 柔道整復師

QJ28P066 整形外科学

出典:第28回柔道整復師国家試験(2020)午後 問66
問題
前十字靱帯損傷の保存的治療後、歩行時に向きを変えたら膝くずれを起こし、膝関節が伸展できなくなった。病態で正しいのはどれか。
選択肢
1 膝蓋骨脱臼
2 半月板嵌頓
3 膝蓋腱断裂
4 膝関節内骨折
解答
正解2(半月板嵌頓)
解説

前十字靱帯(ACL)が不全のまま残った膝では、膝くずれを繰り返すうちに半月板が二次的に断裂する。その断裂片が関節の間に挟まって伸展できなくなった状態がロッキング(半月板嵌頓)である。

ACLは脛骨の前方移動と回旋を止める靱帯で、機能が失われたままだと、方向転換や切り返しのたびに脛骨が前方へずれてgiving way(膝くずれ)が起こる。これを繰り返すうちに、内側半月板の後節を中心に縦の亀裂が広がっていく。亀裂が長くなったバケツ柄状断裂では、内側寄りの断裂片が顆間部へ落ち込み、大腿骨顆と脛骨の間に挟まり込む。すると伸展の最終域で止まってしまい、自動でも他動でも最後まで伸びず、押すとゴムのような弾性のある抵抗(springy block)を感じる。屈曲はある程度できるため、患者の訴えは「曲がるのに伸びない」となる。本問の「保存的治療後」「歩行時の方向転換」「膝くずれ」「伸展不能」という並びは、この二次的半月板損傷とロッキングの典型的な経過をそのままなぞっている。

✓ 2. 正しい
半月板嵌頓
ACL不全膝に膝くずれが起これば、その瞬間に脛骨が前方へずれて半月板が挟み込まれ、断裂片が顆間部に嵌頓して伸展が止まる。ロッキングでは他動でも伸展できず、最終域で弾性のある抵抗を触れるのが手がかりである。無理に伸ばそうとすると断裂を広げるため、疼痛と腫脹を抑えつつ安静と固定を図り、整復操作や関節鏡下の縫合・部分切除の判断は専門医と進める。なおMcMurrayテストは最大屈曲位から回旋を加えつつ伸展していく手技であり、伸展がブロックされているロッキング中は手技そのものが成立しないうえ断裂を広げる危険があるため施行しない。半月板断裂の確認は嵌頓が解除された後に行う。ACL不全が続く限り再発しやすいので、靱帯再建を含めた方針を検討する場面でもある。
✗ 1. 誤り
膝蓋骨脱臼
膝蓋骨脱臼は多くが外側への脱臼で、膝蓋骨を外側に触れ、膝は軽度屈曲位に固定されて見た目にも変形が明らかである。10代の女性、外反膝や全身関節弛緩などの素因を背景に、膝を軽く曲げたひねり動作で生じる。伸展できないという一点は似るものの、本問には脱臼を示す変形や膝蓋骨の位置異常の記載がなく、ACL不全膝の経過としては半月板の嵌頓を第一に考える。
✗ 3. 誤り
膝蓋腱断裂
膝蓋腱が断たれると、大腿四頭筋から膝蓋骨を経て脛骨へ伝わる伸展機構が途切れるため、自動伸展や下肢伸展挙上ができなくなり、膝蓋骨は高位へ移動して腱の部位に陥凹を触れる。ただし他動では膝を伸ばせるので、本問の「伸展できなくなった」という状態像とは質が違う。発生も、着地やジャンプでの急激な大腿四頭筋収縮によるものが典型で、歩行中の方向転換とは結びつきにくい。
✗ 4. 誤り
膝関節内骨折
大腿骨顆部や脛骨顆部の関節内骨折では、強い外力の関与に加えて著明な関節血腫、荷重不能、骨性の硬い可動域制限、変形や異常可動性を伴うことが多い。歩行中に向きを変えた程度の外力で生じるのは、骨脆弱性など特別な背景がある場合に限られる。所見の重さと外力の大きさが本問の経過に釣り合わない。ただし膝くずれの際に骨軟骨骨折や骨挫傷を伴うことがあるため、著明な関節血腫や荷重不能があればX線(必要に応じてMRI)で確認する。
ポイント
  • ACL不全膝 → 方向転換のたびに脛骨が前方へずれる → 膝くずれ(giving way)の反復 → 内側半月板後節の二次的断裂、という流れで理解する。
  • ロッキングは、バケツ柄状断裂などの断裂片が顆間部に嵌頓して起こる。伸展の最終域で止まり、押すと弾性のある抵抗(springy block)を触れる。
  • 「伸びない」の鑑別軸は他動伸展。他動でも伸びない=関節内の機械的ブロック(半月板嵌頓・遊離体)、他動では伸びるが自動で伸びない=伸展機構の破綻(膝蓋腱/大腿四頭筋腱断裂)。
  • 屈曲はできるのに伸展だけができない、という訴え方がロッキングらしさ。急に起こり、体位を変えると自然に外れることもある。
  • McMurrayテストは最大屈曲位から伸展させていく誘発手技のため、伸展がブロックされているロッキング中は施行しない(手技が成立せず、断裂を広げる)。半月板断裂の確認は嵌頓が解除された後に行う。
  • 対応は、無理な伸展を避けて安静・固定・アイシングで疼痛と腫脹を抑え、速やかに整形外科へつなぐ。反復例では関節鏡下の縫合や部分切除に加え、原因であるACLの再建を検討する。
比較表
病態典型的な発生状況自動伸展他動伸展手がかりとなる所見
半月板嵌頓(ロッキング)ACL不全膝の膝くずれ、ひねり動作不能不能(弾性抵抗)屈曲は可能、関節裂隙の圧痛、伸展最終域の弾性抵抗(springy block)/McMurrayテストは嵌頓が解除された後に確認する検査で、ロッキング中は施行しない
膝蓋骨脱臼膝軽度屈曲位でのひねり、素因のある10代女性不能整復されるまで不能膝蓋骨が外側に触れる、明らかな変形、膝蓋骨不安感テスト陽性
膝蓋腱断裂ジャンプ着地など急激な大腿四頭筋収縮不能可能膝蓋骨高位、腱部の陥凹、下肢伸展挙上不能
膝関節内骨折転落・交通外傷など強い外力不能ないし著明制限骨性の硬い制限著明な関節血腫、荷重不能、変形・異常可動性
この問題の解説の修正を依頼する

解説に誤り・改善点があればお知らせください。件名と本文は自動入力済みです(編集できます)。お名前・メールアドレスは任意です。送信内容は玄康株式会社(黒澤一弘)に届きます。