学習トップ理由で解く 柔道整復師外科学概論 ▸ §8 手術 / QJ29P051

理由で解く 柔道整復師

QJ29P051 外科学概論

出典:第29回柔道整復師国家試験(2021)午後 問51
問題
根治的手術はどれか。
選択肢
1 幽門狭窄に対する胃腸吻合術
2 鼠径ヘルニアに対する修復術
3 脳圧亢進に対するシャント術
4 直腸癌に対する人工肛門造設術
解答
正解2(鼠径ヘルニアに対する修復術)
解説

根治手術は「病気の原因そのものを取り除いて治癒を目指す手術」、姑息(対症)手術は「原因は残したまま、症状や機能障害を和らげる手術」です。鼠径ヘルニア修復術だけが、原因である腹壁の弱い部分そのものを直しています。

手術は目的によって呼び分けられます。根治手術は病巣を完全に切除する、あるいは病態を生んでいる構造的な異常を修復するもので、成功すればその病気は治ります。姑息手術は、病巣を取りきれない、あるいは全身状態から根治術に耐えられないといった事情のもとで、通過障害や疼痛、圧の上昇といった困りごとを解消して生活の質を保つために行われます。両者の優劣ではなく役割の違いであり、姑息手術は「その時点で患者にとって最善の選択」であることも多い、という点は誤解しないでください。見分け方はシンプルで、「手術が終わったあと、病気の原因はまだそこに残っているか?」と自問することです。残っていれば姑息、なくなっていれば根治です。

✓ 2. これが答え
鼠径ヘルニアに対する修復術
鼠径ヘルニアの原因は、鼠径部の腹壁が弱くなってヘルニア門ができ、そこから腹腔内臓器が脱出することです。修復術ではヘルニア嚢を処理し、ヘルニア門を閉鎖してメッシュなどで腹壁を補強します。つまり脱出の原因である構造的な弱点そのものを直しており、術後は原因が残りません。これが根治手術です。
✗ 1. 答えではない
幽門狭窄に対する胃腸吻合術
胃と空腸をつないで食物の通り道を作るバイパス手術です。狭くなった幽門を迂回して食事が摂れるようにしますが、狭窄を起こしている潰瘍瘢痕や腫瘍そのものは残ったままです。通過障害という症状を解消する姑息手術にあたります。原因を取り除くなら、狭窄部を含めた胃切除が必要になります。
✗ 3. 答えではない
脳圧亢進に対するシャント術
シャント術は過剰な脳脊髄液を腹腔などへ導いて頭蓋内圧を下げる手術です。頭痛・嘔吐・意識障害といった頭蓋内圧亢進症状は改善しますが、その原因(腫瘍や出血、髄液の循環・吸収障害そのもの)は残ります。したがって姑息手術に分類されます。原因が切除可能な腫瘍であれば、腫瘍摘出が根治手術になります。
✗ 4. 答えではない
直腸癌に対する人工肛門造設術
人工肛門造設術は便の通り道を腹壁に作り替える手術で、それ自体では癌を切除していません。腸閉塞の回避や排便経路の確保が目的の姑息手術です。直腸癌の根治手術は、腫瘍を含む直腸の切除とリンパ節郭清(低位前方切除術や腹会陰式直腸切断術など)であり、その結果として人工肛門が必要になる場合と、閉塞解除のみを目的に造設する場合とを区別して理解しておきましょう。
ポイント
  • 根治手術=病因そのものを除去・修復して治癒を目指す。姑息(対症)手術=原因は残し、症状や機能障害を和らげる。
  • 見分け方は「手術後に病気の原因が残っているか」。残れば姑息、なくなれば根治。
  • バイパス術(胃腸吻合)、シャント術、単独の人工肛門造設術はいずれも典型的な姑息手術。
  • 鼠径ヘルニア修復術はヘルニア門を閉鎖・補強し、脱出の原因である腹壁の脆弱部を直すので根治手術。
  • 姑息手術は劣った手術ではなく、根治が難しい状況で生活の質を守るための積極的な選択肢である。
比較表
手術ねらい術後に原因は残るか分類
幽門狭窄に対する胃腸吻合術通過障害の迂回残る(狭窄の原因)姑息
鼠径ヘルニアに対する修復術ヘルニア門の閉鎖・腹壁補強残らない根治
脳圧亢進に対するシャント術頭蓋内圧の低下残る(腫瘍・髄液循環障害など)姑息
直腸癌に対する人工肛門造設術排便経路の確保・閉塞回避残る(腫瘍)姑息
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