学習トップ理由で解く 柔道整復師外科学概論 ▸ §8 手術 / QJ30P051

理由で解く 柔道整復師

QJ30P051 外科学概論

出典:第30回柔道整復師国家試験(2022)午後 問51
問題
基本的外科手技で誤っているのはどれか。
選択肢
1 外科結びは女結びより緩みにくい。
2 人工血管吻合に吸収性縫合糸を用いる。
3 抜糸の時期は顔面の方が体幹部より早い。
4 消化管吻合に自動吻合器が使用されることが多い。
解答
正解2(人工血管吻合に吸収性縫合糸を用いる。)
解説

人工血管の吻合には、時間が経っても強度が落ちない非吸収性のモノフィラメント糸(ポリプロピレンなど)を用いる。吸収性縫合糸を用いるという記述が誤りにあたる。

吸収性縫合糸は体内で加水分解などにより分解され、数週から数か月で強度を失う。自己組織どうしを縫う消化管や皮下では、治癒した組織が強度を引き受けるため異物が残らない利点になる。しかし人工血管は生体組織のように癒合しないので、糸が吸収されると吻合部を保持するものがなくなり、出血や仮性動脈瘤といった破綻につながるおそれがある。そのため血管吻合には非吸収性のモノフィラメント糸を連続縫合で用いるのが標準とされる。結紮では、最初の結節を二重に巻く外科結び(surgeon's knot)が摩擦で緩みにくく、いわゆる縦結び(女結び)はほどけやすいと一般に説明される。抜糸は、血流が豊富で治癒が早くかつ整容が重視される顔面が早め、緊張のかかる体幹・四肢は遅めに設定する。目安は顔面3〜5日、頸部4〜6日、体幹・上肢7日前後、下肢や関節をまたぐ部位10〜14日である。

✓ 2. これが誤り(正解)
人工血管吻合に吸収性縫合糸を用いる。
人工血管は自己組織のように癒合せず、吻合部の強度は縫合糸そのものが担い続ける。したがって糸が吸収されると吻合部の強度を保つものがなくなり、出血や仮性動脈瘤の危険が生じる。血管吻合には非吸収性のモノフィラメント糸(ポリプロピレンなど)を用いるのが原則で、この記述が設問の「誤っているもの」にあたる。
✗ 1. 正しい記述(答えではない)
外科結びは女結びより緩みにくい。
外科結びは第1結節で糸を二重に巻きつけるため糸どうしの摩擦が大きく、第2結節を掛けるまでの間に緩みにくい。縦結び(女結び)は結び目がずれてほどけやすいとされる。
✗ 3. 正しい記述(答えではない)
抜糸の時期は顔面の方が体幹部より早い。
顔面は血流が豊富で治癒が早く、また縫合糸痕(列車軌道様の瘢痕)を残さないよう早期に抜糸する。顔面はおおむね3〜5日、体幹・四肢は7〜14日と、より長く置く。
✗ 4. 正しい記述(答えではない)
消化管吻合に自動吻合器が使用されることが多い。
自動吻合器(ステープラー)は多数のステープルを同時に打ち込むため、吻合が速く均一で、鏡視下手術でも扱いやすい。消化管の切離・吻合で広く用いられている。
ポイント
  • 血管吻合(とくに人工血管)は非吸収性モノフィラメント糸。吸収されると吻合部が破綻するため。
  • 吸収性糸が向くのは、自己組織が治癒して強度を担う消化管・皮下など。異物を残さない利点がある。
  • 外科結びは第1結節を二重に巻いて摩擦を増やす結び方。縦結び(女結び)より緩みにくい。
  • 抜糸は血流と皮膚緊張で決まる。顔面は早め、体幹・四肢は遅め、というのが原則。
  • 自動吻合器(ステープラー)は消化管の切離・吻合で標準的に使われる。
比較表
吸収性縫合糸非吸収性縫合糸
体内での変化加水分解などで分解、数週〜数か月で強度が消失強度が長期に保たれる
主な用途消化管、皮下、粘膜など自己組織が治癒する部位血管吻合、人工物の固定、皮膚(抜糸前提)
利点抜糸不要、異物が残らない強度が落ちず吻合部を長期に保持
人工血管に使うと吸収後に吻合部が破綻しうる(出血・仮性動脈瘤)標準的な選択
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