学習トップ理由で解く 柔道整復師外科学概論 ▸ §7 滅菌法と消毒法 / QJ29P050

理由で解く 柔道整復師

QJ29P050 外科学概論

出典:第29回柔道整復師国家試験(2021)午後 問50
問題
消毒あるいは滅菌の説明で誤っているのはどれか。
選択肢
1 消毒薬自体が汚染されることがある。
2 アルコールは皮膚の消毒に使用できる。
3 高圧蒸気は光学機器の滅菌に有用である。
4 滅菌はすべての微生物を死滅させることである。
解答
正解3(高圧蒸気は光学機器の滅菌に有用である。)
解説

高圧蒸気滅菌(オートクレーブ)は高温・高圧・高湿にさらす方法なので、熱や水分に弱い光学機器には使えません。器材の性質に合わせて滅菌法を選ぶ、というのが本問の主題です。

まず用語の整理から。滅菌はすべての微生物を死滅・除去すること、消毒は病原微生物を害のない程度まで減らすこと、洗浄は汚れと有機物を物理的に取り除くことです。この三つは目的も到達点も違います。滅菌法のうち高圧蒸気滅菌は、およそ 121℃・約 2 気圧で 20 分といった条件で飽和水蒸気にさらす方法で、確実・安価・残留毒性がないため金属器具やリネン、ガラス器具に広く使われます。しかし内視鏡やレンズを含む光学機器、プラスチック製品のように熱や湿度に耐えられない器材には適しません。こうした器材には、酸化エチレンガス(EOG)滅菌や過酸化水素低温プラズマ滅菌といった低温滅菌法、あるいはグルタラールや過酢酸などによる高水準消毒を用います。どの方法でも大前提は「まず洗浄」で、血液や体液などの有機物が残っていると滅菌・消毒の効果は大きく落ちます。

✓ 3. これが答え
高圧蒸気は光学機器の滅菌に有用である。
高圧蒸気滅菌は高温・高湿にさらす方法のため、レンズの接着部やコーティング、光ファイバー、電子部品を傷めてしまい、光学機器には適しません。内視鏡などの熱に弱い器材は、酸化エチレンガス滅菌や過酸化水素低温プラズマ滅菌などの低温滅菌法、またはグルタラール・過酢酸による高水準消毒で処理します。高圧蒸気滅菌が向くのは、耐熱性のある金属器具・ガラス器具・リネン類です。
✗ 1. 答えではない
消毒薬自体が汚染されることがある。
これは正しい記述です。消毒薬にも効きにくい菌は存在し、希釈された消毒薬や、繰り返し開閉される容器の中で緑膿菌やセラチアなどが増殖した事例が知られています。予防には、原液の希釈を適正に行う、継ぎ足し使用をしない、小分けにして使用期限を守る、容器は洗浄・乾燥させてから使う、可能なら単回使用製品を選ぶ、といった管理が有効です。
✗ 2. 答えではない
アルコールは皮膚の消毒に使用できる。
これも正しい記述です。消毒用エタノール(およそ 70〜80%)は速効性が高く、細菌・多くのウイルス・真菌に有効で、注射前や手指の消毒に日常的に用いられます。ただし芽胞には無効で、粘膜や創面には刺激が強く適しません。また引火性があるため、使用後は十分に乾燥させてから電気メスなどを扱います。
✗ 4. 答えではない
滅菌はすべての微生物を死滅させることである。
これも正しい記述で、滅菌の定義そのものです。芽胞を含むすべての微生物を対象とする点が、病原微生物を害のない水準まで減らす消毒との決定的な違いです。手術器械のように無菌組織に触れる器材は滅菌が必須で、滅菌後はインジケータで滅菌工程が成立したことを確認し、包装の破損や有効期限にも注意して無菌性を保ちます。
ポイント
  • 滅菌=芽胞を含むすべての微生物を死滅・除去。消毒=病原微生物を害のない水準まで減らす。定義の差を最初に押さえる。
  • 高圧蒸気滅菌(約 121℃・約 2 気圧・20 分)は確実・安価・残留毒性なし。金属器具・ガラス・リネン向き。
  • 熱や湿度に弱い光学機器・プラスチック製品には、酸化エチレンガスや過酸化水素低温プラズマなどの低温滅菌、またはグルタラール等の高水準消毒を用いる。
  • 消毒薬も汚染される。継ぎ足しを避け、小分け・期限管理・容器の乾燥を徹底する。
  • どの方法でも「まず洗浄」。有機物が残っていると滅菌・消毒の効果は大きく落ちる。
比較表
方法条件・特徴主な対象注意点
高圧蒸気滅菌(オートクレーブ)約 121℃・約 2 気圧・20 分金属器具、ガラス、リネン熱・湿度に弱い器材には使えない
酸化エチレンガス(EOG)滅菌低温で作用内視鏡、プラスチック製品残留ガスの除去(エアレーション)が必要
過酸化水素低温プラズマ滅菌低温・短時間、残留毒性が少ない熱に弱い精密機器紙・繊維など吸収性素材は不可
高水準消毒(グルタラール等)浸漬による化学的処理内視鏡など刺激性が強く、換気と十分なすすぎが必要
消毒用エタノール約 70〜80%、速効性皮膚・手指芽胞に無効、粘膜・創面には不適、引火性
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