学習トップ理由で解く 柔道整復師リハビリテーション医学 ▸ §5 リハビリテーションの治療 / QJ29P015

理由で解く 柔道整復師

QJ29P015 リハビリテーション医学

出典:第29回柔道整復師国家試験(2021)午後 問15
問題
筋持久力の向上に適した方法はどれか。
選択肢
1 高強度長時間運動
2 高強度短時間運動
3 低強度長時間運動
4 低強度短時間運動
解答
正解3(低強度長時間運動)
解説

筋持久力とは「小さな力を長く出し続ける能力」であり、低い負荷を長時間・多数回反復する 3 の低強度長時間運動が適する。

筋のトレーニング効果は「強度」と「量(時間・反復回数)」の組合せで決まる。最大筋力の約2/3以上(おおむね60〜70%1RM以上)の高強度・低反復では速筋線維(II型)が動員され、筋の横断面積が増えて最大筋力が伸びる。これに対し最大筋力の30〜50%程度の低強度で反復回数や時間を多くすると、遅筋線維(I型)が主に働き、毛細血管密度・ミトコンドリア・酸化系酵素活性が高まって疲労しにくい筋になる。これが筋持久力の向上であり、臨床では廃用や術後で易疲労性のある患者、高齢者、心肺への負担を抑えたい例で低負荷・高反復の運動が選ばれる。なお、筋ジストロフィーやポリオ後症候群などの神経筋疾患、脱神経筋では、過負荷によって回復しにくい筋力低下(過用性筋力低下, overwork weakness)をきたすことが知られており、これらの疾患ではとくに強度設定を慎重に行う。

✓ 3. 正しい
低強度長時間運動
低い負荷で長く反復すると遅筋線維が中心に動員され、筋の酸化能力と毛細血管が増えて疲労耐性が高まる。負荷が軽いぶん安全性も高く、高齢者や術後早期にも導入しやすい。
✗ 1. 誤り
高強度長時間運動
高強度では短時間で疲労が生じるため長時間の継続がそもそも成立しない。無理に続ければ筋損傷・遅発性筋痛や、血圧上昇をはじめとする循環器系への負担といった不利益が大きく、持久力向上の手段としては選ばない。
✗ 2. 誤り
高強度短時間運動
速筋線維を動員して最大筋力や筋パワーを高めるのに適した組合せである。目的が筋力増強ならこれでよいが、持久力の向上を狙う本問の条件には合わない。
✗ 4. 誤り
低強度短時間運動
負荷も運動量も不足し、筋に加わる刺激が適応を起こす閾値に届かない。ウォーミングアップや廃用の予防的導入としては意味があるが、持久力そのものを伸ばす効果は乏しい。
ポイント
  • 筋力増強=高強度・低反復(最大筋力の約2/3以上)/筋持久力=低強度・高反復(30〜50%程度)。
  • 低強度長時間運動では遅筋線維(I型)が主役となり、ミトコンドリア・毛細血管・酸化系酵素が増える。
  • 高強度長時間は生理学的に成立しにくく、筋損傷・遅発性筋痛や血圧上昇など循環器系への負担につながる。
  • 過用性筋力低下(overwork weakness)は筋ジストロフィー・ポリオ後症候群などの神経筋疾患や脱神経筋に過負荷をかけたときに生じる用語。健常筋への高強度運動の帰結を指す語ではない。
  • 目的(筋力・持久力・可動域・協調性)に応じて強度と量を設定するのが運動処方の基本。
  • 低負荷高反復は高齢者・術後早期・心疾患合併例でも安全に導入しやすい。
比較表
目的強度反復・時間主に働く筋線維主な適応
筋力・筋パワーの増強高強度(最大筋力の約2/3以上)少ない反復・短時間速筋線維(II型)筋力低下の回復、スポーツ復帰
筋持久力の向上低強度(最大筋力の30〜50%程度)多い反復・長時間遅筋線維(I型)易疲労性、高齢者、術後、心肺負担を避けたい例
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