学習トップ理由で解く 柔道整復師リハビリテーション医学 ▸ §4 リハビリテーション医学の評価と診断 / QJ29P016

理由で解く 柔道整復師

QJ29P016 リハビリテーション医学

出典:第29回柔道整復師国家試験(2021)午後 問16
問題
頭部CT横断像(別冊No. 1)を別に示す。考えられる診断はどれか。
図
選択肢
1 脳腫瘍
2 脳梗塞
3 くも膜下出血
4 急性硬膜下血腫
解答
正解3(くも膜下出血)
解説

別冊No.1の頭部CT横断像では、本来は髄液で黒く見えるはずの脳槽・脳溝が、白く(高吸収に)描出されている。考えられる診断はくも膜下出血で、正答は3である。

くも膜下腔はくも膜と軟膜の間にある髄液で満たされた空間で、正常な単純CTでは低吸収(黒)に写る。ここに出血が広がると、血液は髄液より吸収値が高いため、鞍上槽・迂回槽・シルビウス裂・大脳縦裂といった髄液の通り道が白く埋まる。別冊No.1は鞍上槽(脳底槽)レベルの断面で、中脳を取り囲むように星形(ヒトデ型・五角形)の高吸収域が広がり、両側のシルビウス裂と前方の大脳縦裂へ連続している。ただし星形に見えるのはこの高さの断面に限られ、より頭側のスライスではシルビウス裂や大脳縦裂に沿った線状・帯状の高吸収として現れるなど、断面の高さで見え方は変わる点に注意する。本例では両側の側頭角がやや目立っており、急性期水頭症の合併も疑われる。原因は脳動脈瘤の破裂が最も多く、突然の激しい頭痛・嘔吐・項部硬直で発症するため、疑った時点でまず単純CTを撮り、CTで指摘できないときにMRI(FLAIR)や腰椎穿刺を追加する流れになる。経過中の危険は時間軸で整理すると分かりやすい。①最大の山は発症直後〜72時間(とくに24時間以内)に集中する再破裂(再出血)で、死亡・重篤化の最大要因である。動脈瘤の処置(クリッピングまたはコイル塞栓)が済むまでは絶対安静・鎮痛・刺激回避が原則であり、処置が完了しているかどうかが離床を考えてよいかの前提になる。②発症4〜14日ごろには脳血管攣縮による遅発性脳虚血が起こり、新たな麻痺や意識レベルの低下として現れる。③慢性期には正常圧水頭症(歩行障害・認知機能低下・尿失禁)が生じ、機能予後を大きく左右する。そのうえで柔道整復師が実際に取る行動は明確である。施術中や来院時に突然の激しい頭痛・嘔吐・項部硬直・意識障害をみたら、施術は行わず(始めていれば中止し)、安静を保って頭頸部を動かすなどの刺激を避けたうえで、直ちに救急要請して脳神経外科につなぐ。これが再出血を防ぐうえで最も重要な対応になる。治療を終えた患者の運動を扱う場面では、動脈瘤の処置が済んでいるか、攣縮期を越えているか、水頭症の兆候がないかを主治医に確認したうえで、離床・運動負荷の段階を決めていく。

✓ 3. 正しい
くも膜下出血
別冊No.1で高吸収域が広がっているのは脳実質の中ではなく、鞍上槽・シルビウス裂・大脳縦裂という「髄液があるべきすき間」である。くも膜下出血は脳実質内に塊をつくらず、髄液腔の形をなぞって線状・星形に分布する点が決定的な特徴で、突然発症の激しい頭痛という臨床像と合わせればまず本症を考える。
✗ 1. 誤り
脳腫瘍
脳腫瘍は脳実質内(髄膜由来なら脳表)に境界をもつ腫瘤として現れ、周囲に低吸収の浮腫を伴って脳室を圧排し正中構造を偏位させる。単純CTでは等吸収〜低吸収にとどまることも多く、別冊No.1のように髄液腔を白く縁取る形にはならない。腫瘤性病変を疑う場合は造影CTやMRIへ進めて質的診断を行う。
✗ 2. 誤り
脳梗塞
脳梗塞は血流の途絶えた領域が浮腫んで水分量が増えるため、時間経過とともに血管支配域に一致した低吸収域(黒)として写る。超急性期はCTがほぼ正常に見え、レンズ核の不明瞭化・島皮質の不明瞭化・皮髄境界の消失といった早期虚血サインを探す段階であり、いずれにせよ髄液腔が白くなる所見にはならない。急性期に出血か梗塞かを分けるには、まずこの「白か黒か」を確認する。
✗ 4. 誤り
急性硬膜下血腫
急性硬膜下血腫も高吸収を示すが、硬膜とくも膜の間にたまるため、頭蓋骨内板に沿った三日月形(半月状)となり、脳表を広く覆って正中を偏位させる。別冊No.1のように血液が脳槽やシルビウス裂に入り込んで星形に見える分布とは形が異なる。血腫が凸レンズ形(紡錘形)で縫合線を越えなければ急性硬膜外血腫を考えるというように、形と局在をセットで読み分ける。
ポイント
  • くも膜下出血のCT像:鞍上槽・シルビウス裂・大脳縦裂など、黒いはずの髄液腔が白く縁取られる。星形(ヒトデ型)に見えるのは鞍上槽(脳底槽)レベルの断面で、より頭側ではシルビウス裂・大脳縦裂に沿う線状・帯状の高吸収となり、断面の高さで見え方が変わる。
  • 急性期CTの大原則:出血は白(高吸収)、梗塞は黒(低吸収)。まず色で二分し、次に分布と形を見る。
  • 血腫の形で局在を読む:三日月形=硬膜下、凸レンズ形=硬膜外、脳のすき間をなぞる線状・星形=くも膜下。
  • 原因と症状:脳動脈瘤破裂が最多。突然の激しい頭痛・嘔吐・項部硬直(髄膜刺激症状)で発症する。
  • 柔整師が取る行動:施術中・来院時にこの症状を疑ったら施術を行わず(中止し)、安静を保ち頭頸部への刺激を避けたうえで、直ちに救急要請して脳神経外科につなぐ(再出血予防)。
  • 要注意期は時間軸で覚える:①発症直後〜72時間(とくに24時間以内)の再破裂=最大の危険で、動脈瘤の処置(クリッピング/コイル塞栓)が済んでいることが離床を考える前提。②発症4〜14日の脳血管攣縮による遅発性脳虚血。③慢性期の正常圧水頭症(歩行障害・認知機能低下・尿失禁)。離床時期は医師の指示と全身状態を確認して進める。
比較表
疾患単純CTでの吸収値分布・形典型的な発症様式
くも膜下出血高吸収(白)脳槽・シルビウス裂・大脳縦裂に沿う。鞍上槽レベルでは星形、頭側では線状・帯状突然の激しい頭痛、嘔吐、項部硬直
急性硬膜下血腫高吸収(白)頭蓋骨内板に沿う三日月形。脳表を広く覆う頭部外傷後。意識障害が進行
急性硬膜外血腫高吸収(白)凸レンズ形(紡錘形)。縫合線を越えない頭部外傷後。意識清明期を挟むことがある
脳梗塞低吸収(黒)※超急性期はほぼ正常血管支配域に一致した領域性の変化突然の片麻痺・失語など巣症状
脳腫瘍等〜低吸収が多い(造影で増強)脳実質内の腫瘤+周囲浮腫、圧排・正中偏位数週〜数か月で進行する頭痛・巣症状・けいれん
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