学習トップ理由で解く 柔道整復師外科学概論 ▸ §8 手術 / QJ28P052

理由で解く 柔道整復師

QJ28P052 外科学概論

出典:第28回柔道整復師国家試験(2020)午後 問52
問題
手術法で正しいのはどれか。
選択肢
1 感染創では一次縫合を行う。
2 血管吻合は内翻縫合で行う。
3 皮膚切開はランゲル皮膚割線と平行に行う。
4 神経縫合はアルベル・ランベール縫合で行う。
解答
正解3(皮膚切開はランゲル皮膚割線と平行に行う。)
解説

皮膚切開は、ランゲル皮膚割線(皮膚割線)に平行に置くのが原則です。正解は3。

ランゲル皮膚割線は、真皮の膠原線維(コラーゲン線維)が優位に走る方向を体表に写したもので、その方向には皮膚の張力がもっとも小さくなります。割線に平行に切開すると創縁を引き離す力が働かないため、創の哆開(しかい)が少なく、治った後の瘢痕も細く目立ちません。逆に割線と直交して切ると常に開こうとする張力がかかり続け、瘢痕が幅広くなったり肥厚性瘢痕・ケロイドになりやすくなります。本問の残り3肢は「どの組織をどの縫合法で合わせるか」を問うもので、血管は外翻・消化管は内翻・神経は神経上膜/神経周膜縫合という対応を押さえれば一気に整理できます。

✓ 3. 正しい
皮膚切開はランゲル皮膚割線と平行に行う。
割線に平行な切開は皮膚の張力が最小の方向に沿うため、創縁が寄りやすく、哆開・瘢痕の幅ともに最小になります。関節近傍など割線と機能上の要求が食い違う部位では、拘縮を避ける切開線(屈曲線をまたがない、Z形成術の併用など)を選びます。
✗ 1. 誤り
感染創では一次縫合を行う。
感染創をそのまま閉じると、細菌と滲出液が閉鎖腔に閉じ込められて膿瘍を形成し、創傷治癒が破綻します。感染創・高度汚染創では十分な洗浄と壊死組織のデブリードマンを行い、開放創のまま(またはドレーンを留置して)管理し、感染が鎮静してから遅延一次縫合や二次縫合で閉じる、あるいは二次治癒を待つのが正しい手順です。一次縫合の対象は、清潔で組織損傷が少なく受傷から時間の経っていない創です。
✗ 2. 誤り
血管吻合は内翻縫合で行う。
血管吻合は外翻縫合です。切離端を外へめくり返して内膜どうしを向かい合わせると、血流に接する面が内膜だけの滑らかな一枚になり、血栓形成を防げます。内翻させると内腔に外膜・中膜が突出し、そこが血栓や狭窄の起点になります。内翻縫合が原則なのは消化管(漿膜どうしを合わせて早期に癒合させ、内容の漏れを防ぐ)です。
✗ 4. 誤り
神経縫合はアルベル・ランベール縫合で行う。
アルベル・ランベール縫合は消化管吻合の二層内翻縫合で、内層の全層縫合(アルベル縫合)と外層の漿膜筋層縫合(ランベール縫合)を組み合わせたものです。末梢神経の縫合は手術用顕微鏡下に細い糸(8-0〜10-0程度)を用い、神経上膜どうしを合わせる神経上膜縫合、あるいは神経束単位で合わせる神経周膜(束間)縫合で行います。表面の血管走行を目印に回旋のずれを補正し、無張力で合わせることが再生の条件で、欠損が大きければ神経移植を選択します。
ポイント
  • ランゲル皮膚割線=真皮の膠原線維の走行方向。平行切開=張力最小=哆開が少なく瘢痕が目立たない。
  • 縫合法の合言葉は「血管は外翻・消化管は内翻」。合わせたい面(血管=内膜、消化管=漿膜)を思い出せば向きが決まる。
  • アルベル(全層)+ランベール(漿膜筋層)=消化管の二層縫合。神経とは無関係。
  • 神経縫合は神経上膜縫合・神経周膜(束間)縫合。顕微鏡下・無張力・回旋のずれを合わせるのが要点。
  • 感染創は「閉じない」。洗浄+デブリードマン+開放管理 → 鎮静後に遅延一次縫合/二次縫合。
比較表
組織基本の縫合法合わせる面/ねらい
血管外翻縫合内膜どうしを密着させ、血流面を滑らかにして血栓を防ぐ
消化管内翻縫合(アルベル・ランベール縫合など)漿膜どうしを密着させ、早期癒合と内容の漏れ防止
末梢神経神経上膜縫合/神経周膜(束間)縫合顕微鏡下に束の向きを合わせ、無張力で軸索再生を促す
皮膚単純結節縫合・垂直/水平マットレス縫合、皮内縫合など割線に沿った切開線で、外反気味に創縁を合わせて瘢痕を細くする
この問題の解説の修正を依頼する

解説に誤り・改善点があればお知らせください。件名と本文は自動入力済みです(編集できます)。お名前・メールアドレスは任意です。送信内容は玄康株式会社(黒澤一弘)に届きます。